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AI副パイロットのU-2がISRミッション実証飛行に成功した。マン−マシン複合ミッションの新しい時代の幕が開いた。(2020年12月15日)

 今年は目立たないものの着実に未来の航空像に着実に近づいた年だったようです。飛行中ソフトウェア更新については先にお知らせしましたが、今回はAIを副パイロットとした偵察ミッションの実証に成功したというニュースです。2020年は大きな分岐点になったのではないでしょうか。



 

空軍のロッキード・マーティンU-2ドラゴンレイディが人工知能(AI)とのフライトを12月15日に行った。

 

パイロットの少佐はカリフォーニア州ビールAFBの第9偵察航空団所属機を操縦し、アルゴリズム“ARTUµ”がセンサー運用、戦術航法を担当し、パイロットと連携しミサイル攻撃の想定で偵察ミッションを実施した。離陸するとARTUµがセンサーを担当し、敵ミサイル発射装備の探査を開始し、パイロットは脅威となる敵機接近を警戒した。機内のレイセオンの高性能合成開口レーダーシステムは両者が共有した。敵は別のコンピュータアルゴリズムだった。

 

「これはすごい。AIの相棒が後席にすわりミッションの負担を肩代わりするのは一歩前進だ」とミッチェル研究所理事マーク・ガンジンガーがコメントしている。航空戦闘軍団を2014年から2017年にかけ指揮した『ホーク』カーライル全国国防産業協会理事長は第4世代機から第5世代機への進化が一歩進み、能力・効率化を向上させるループに入ったとの意見だ。

 

ARTUµがプログラムµZeroを使い、空軍次官(調達・技術・兵站)ウィル・ローパーは「世界的に著名なプログラムでチェス、碁、コンピューターゲームなどで使われており、今回は事前情報なしでU-2を制御する」とポピュラーメカニクス誌に事前解説し、当日の予定をツイッターで予告していた。

 

「レーダー操作はARTUµに全面的に任せたが、その他サブシステムは『切』にした。ブレイカーのようなもので、AIにまかせたくないものを任意に選択できる」(ローパー)

 

構想はローパーがDoDの戦略戦力整備室長時代から提唱されている。空軍はAIで操縦するスカイボーグ自律無人機と有人機のチーム運用を目指している。ローパー自身もサイファイファンで、スカイボーグの未来型『頭脳』を「R2D2」と呼んでいる。

 

ローパーはフライトでARTUµがミッション指揮官であり最終決定者になったと述べている。ここに至るまでAIシステムは過酷な訓練を受けており、コンピュータシミュレーション訓練は50万回に至ったという。

 

「パイロットなしでARTUµがレーダーをミサイル陣地探知と機体防御に使った」「今回のフライトはコンピュータの副パイロットの実用化にむけたささやかな一歩だったが、将来の軍事作戦の『コンピュータカインド』“computerkind”には大きな一歩だ。(ローパー)

 

ARTUµを開発したのはビール基地内にある航空戦闘軍団フェデラルラボラトリー。ローパーはラボで「µZeroのゲームアルゴリズムでレーダー操作の訓練をし、偵察の良い結果(敵の位置を捕捉)、悪い結果(U-2喪失)を学習させシステムを再構築したが、すべてパイロットとの相互連絡を通じてであった」と述べている。

 

空軍はソフトウェアをコンテナ化するオープンソースツールKubernetesを利用した。同ソフトは新型機の開発期間短縮化にも投入されている。

 

11月中旬に空軍は飛行中U-2SでKubernetesコンテナ化ソフトウェアのアップデートを空中ネットワーク経由で行い、基地に戻る戦闘機材で電子戦術などソフトウェアのアップデートが可能だとを実証した。これもフェデラルラボラトリーが実施した。


「今回のフライトは綿密に準備したシナリオの一部でAIで動的アルゴリズムを使う新技術を試した」と空軍は発表しているが、詳細は明かしていない。


ガンジンガーは「公表内容が不明」のためAIがどこまでの機能を果たしたのかわからないとする。発表にある「対抗アルゴリズム」に興味を惹かれるという。実証済みアルゴリズムをベイスラインとしてARTUµの性能を比較して同じ標的に向かわせたのではないか、という。


つまり真の課題は「これからのループでのヒトの役割を真剣に考えることで、マシンのほうがヒトの知能より迅速に実行できることもある」が、「適切に交通整理して決定過程にヒトを関与させること」というのだ。


カーライルも「まだ課題は残っている」とし、「技術的には可能だし、AIにしかできないこともある。計器アプローチの場合にAIを副パイロットにするのが合理的だろう」という。


Teal Groupのリチャード・アブラフィアも「AIは全面戦争で標的捕捉、攻撃の効果を引き上げる可能性を秘めている。ただし、全面戦争の可能性は低い」とする。この二十年は地上戦が主で戦闘員掃討作戦、飛行禁止空域の執行、水上パトロール等が米国の戦争形態の中心だった。こうした分野ではAIの役割は極めて限られる」とアブラフィアは指摘する。■


この記事は以下を再構成したものです。

 

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