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ドイツ軍がここまで弱体化したのは政治の責任だ。安全保障における軍の役割を軽視すればこうなる。日本も他山の石とすべき。

 

 

 

ルリンのドイツ政府は自国の安全確保も放棄したのだろうか。ドイツ軍の予算不足の状態には驚くしかない。ドイツ軍には戦車、航空機はまともに機能しない装備で一杯だ。

 

今日のドイツ軍は連邦軍と呼ばれ第二次大戦終結10年後に創設された。冷戦の緊張が高まり、東ドイツ、チェコスロバキア、ポーランドに駐屯するソ連軍のプレゼンスが西ドイツ国防軍の創設につながった。

 

連邦軍は世界有数の規模、装備に恵まれた軍に成長し、陸軍師団12個、戦闘機材数百機、水上艦艇、潜水艦を備えた。

 

冷戦が終結し、赤軍が東欧から撤退し欧州の安全保障環境に追い風が吹いた。東ドイツ国防軍と連邦軍が統合され国軍となった。艦艇、機材、装甲車両は75%削減され、国防予算はどんどん低下した。現在のドイツはGDP比1.2%を国防に費やし、NATOが求める2%と差が開いている。

 

 

連邦軍の即応体制の劣化を伝える記事多数が出ている。固定翼機、ヘリコプター、車両で運用中止多数が発生しているのは交換部品不足が原因で稼働率は50%を割る状況だった。

 

ドイツ軍の装備品には世界有数の威力を有するものがあるが、同時に直面する課題にも相当のものがある。以下、正常に作動すれば相当の威力を発揮するものの予算を十分受けていない、あるいは別の問題を抱える5例である。

 

ユーロファイター・タイフーン

英仏独伊西の5カ国が1980年代に共同開発したのが将来型ヨーロッパ戦闘機材FEFAで、これが1994年にユーロファイター・タイフーンになり、ドイツは2003年より導入した。

 

第4世代機ではユーロファイターはおそらく最強の存在だろう。機敏な操縦性、強力なエンジン、AESAレーダー、赤外線探索追尾センサー、AMRAAM、サイドワインダー両ミサイルを搭載する同機は手強い相手だ。対空対地攻撃能力はさらに進化し、非誘導爆弾、レーザー誘導爆弾、トーラス巡航ミサイルを搭載する。

 

ドイツは当初180機導入の計画だったが、2014年に一部キャンセルし、143機にした。2014年10月時点で飛行可能な機材は42機で残りは部品不足で地上に置かれていた。同時に搭乗員の年間飛行時間を半減する扱いにしたのは機体が不安定になる現象への対応だった。

 

ユーロファイター・トーネード

これも英伊独の共同開発で生まれた戦闘機で、低空高速で敵地侵入する構想のトーネードは世界最後の可変翼軍用機だ。ここでも冷戦終結で予算不足状況が続いている。

 

ルフトバフェはIDS(制圧深部侵入型),ECR(電子戦偵察型)を導入し、冷戦時はワルシャワ同盟側の標的特に航空施設の攻撃を任務とした。ドイツ再統一後のトーネードはコソボやアフガニスタン上空で偵察任務についた。

 

ドイツ空海軍で357機を導入したが、冷戦終結で削減され、2025年以降も供用の方針だが、予算不足のため2014年8月時点で89機中稼働可能機材は38機しかなかった。

 

レパードII主力戦車

1970年代にレパードIの後継としてクラウスマッフェイ重機械が開発したレパードIIはドイツ軍の主力戦車だ。戦後ドイツの戦術方針で速力と火力を最優先し、高機動戦車としてヨーロッパ戦場の状況変化に対応する装備品となった。初導入は1979年で、現在も稼働中だが、配備数があまりにも少ない。

 

最新のレパードIIA7は2030年代も視野に入れ、120mm滑腔砲の長砲身型、熱探知装置第3世代型、複合材防御の強化、補助動力だけで電子装置の運用が可能といった特徴を有する。

 

レパードII生産数は2,125両で戦車師団、機械化歩兵師団の12個には十分といえる。冷戦終結と国防予算削減でドイツは戦車部隊のほぼ9割を削減し、現在の連邦軍には225両しかない。

 

G36強襲小銃 

1990年代に連邦軍はヘッケラー&コッホG3小銃を廃止し、G36強襲小銃を導入した。NATO標準5.56ミリ銃弾、30発弾倉、統合光学照準を採用したG36でドイツ歩兵部隊の戦力は増強され軽量化が実現したはずだった。176千丁を調達した。

 

ところが連邦軍はアフガニスタンでG36の命中精度の劣化に気づく。G36は連続射撃で精度が下がる問題があるとわかったが、平時には現れない現象だった。それでもこの問題がなぜ早期に見つからなかったのか理解に苦しむ。

 

国防相ウルスラ・フォン・デア・ライエンは連邦軍は同小銃を用途廃止すると発表した。国防省はHK417強襲小銃600丁の調達を発表した。これもヘッケラー&コッホ製である。

 

371装甲擲弾大隊

装甲擲弾部隊とは連邦軍の機械化歩兵部隊のことでは900名編成の9個大隊に歩兵戦闘車両とMILAN・パンツァーファウスト3対戦車兵器を配備している。

 

この内マリエンブルグ駐屯の371装甲擲弾大隊が2014年にノルウェーでNATO演習に加わった。NATOの迅速展開部隊に指定の同大隊でピストル、暗視装置の不足が露呈した。MG3機関銃が不足し、箒を黒く塗り代用品にした。さらにもっと悪い事実がわかった。同大隊は他部隊から合計14,371点もの装備品を借用していたが、それでも一部装備品に不足があったという。

 

優先度が高いNATO部隊でも装備品14千点が不足というのは連邦軍の内部にある問題が深刻な証拠であり、同盟各国へのドイツの貢献度も疑問視される。■

 

この記事は2015年初掲載された以下を再構成したものです。NATOサミット開催にあわせ発表します。

 

Why Is Germany's Military Weak?

December 27, 2020  Topic: Security  Region: Europe  Blog Brand: The Reboot  Tags: GermanyMilitaryNATOGerman MilitaryRussia

by Kyle Mizokami

 

Kyle Mizokami is a defense and national security writer based in San Francisco who has appeared in The Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and The Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami. This first appeared earlier and is being reposted due to reader interest.


コメント

  1. しかし、ドイツの国防費って日本とほぼ変わらない水準ですよね
    人員も昔と比べて、めちゃくちゃ削減している(約18万人)
    装備も増やすどころか、どんどん減らしている
    これで何でそんな体たらくになってるのか、主な理由が分からない・・・
    現実の脅威がほぼ無くなってる事で、緩みまくってるのでしょうかね?

    返信削除

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