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スタートアップ企業の大型無人打上げ用UASに米宇宙軍が即契約。これがアメリカのイノベーションの底力だ。低地球周回軌道打ち上げのゲームチャンジャーに、対中戦での衛星喪失の穴を埋める期待。

 こうした新興企業が次々と現れ技術革新が進むのが米国のすごいところで根っこには失敗を恐れない、失敗しても自分の財産が差し押さえられないメンタリティとシステムの違いがあるのでしょう。民間航空部門などは出来上がったシステムを汲々と守り利益を最大化することしか眼中にない観があります。航空不況で大打撃を受けてもシステムそのものを打破する発想は民間航空部門に出てくる気配がありません。だから制約がないわけではありませんが、どんどん新発想が出てくる軍事航空部門に魅力を感じるのですが、皆さんはどうでしょうか。

*ターミナル1-2共通記事

AEVUM/YOUTUBE SCREENCAP


国の新興企業エイヴァムAevumがオンラインでロールアウト式典を開きレイヴンXRavn X自律発進無人機をお披露目した。式典には実寸大のモックアップも登場した。同社は2016年設立で本社をアラバマ州ハンツヴィルに置き、再利用可能な無人機にロケットを搭載し、小型衛星等を低地球周回軌道に乗せる。

 

レイヴンX無人機は双発で同社によれば第一段に相当し、機体重量55千ポンド、全長80フィート、翼幅60フィートと往年のA-5ヴィジランテに相当するサイズだ。二段目ロケットの母機として1,000ポンド程度のペイロード運搬を狙う。エイヴァムはレイヴンXを三段式打ち上げシステムとして構想している。

 

同社によれば打ち上げシステムの第一段目に無人機を使えば、ロケットモーター作動を切り離し0.5秒から1秒後に開始できるメリットが生まれるという。ここまで短時間で機体下部から切り離しできれば、ロケットモーターのエナジーブリードを最小限にできる、つまり切り離し直後の慣性損失を最小限にできるという。同社はこの切り離し方法を有人機で行うのは危険が伴うとする。これまでの空中発射では有人機からロケットを落下させ時間をおいてからロケット点火して乗員の安全を確保していたが、ロケットの運動エナジーがその分犠牲になっていた。

 

報道によればロケット切り離し高度は33千から66千フィートの間で可能という。二段目の推力は5千ポンドと同社CEOジェイ・スカイラスはArs Technica ブログで搭載エンジンは「高温運転テストを長時間行い」「認証テストを完了」したという。

 

第一段に再利用可能宇宙機を活用する構想は前にもあったが、再利用可能無人自律型の母機が通常の航空機同様に離着陸するのは新規構想で少なくとも民生分野では初めてだ。レイヴンXは従来型ロケット打ち上げより経済的、簡素かつ柔軟性にとんだ手段になると見ている。また同社は自社方式をその他の空中発射方式のノースロップ・グラマンのスターゲイザーやヴァージンのオービットロンチャーワンと異なると主張しており、レイヴンX第一段は大気圏内で加速させてからロケットを急速切り離し点火させるのが違いとする。ただし実際の効果でどこまで違いがあるか不明だ。

 

レイヴンXの大日程はかなり野心的でまず「機体レベルのテスト」で耐空証明を取得し、打ち上げ許可を得るとある。後者は通常18ヶ月かかる工程とスカイラスは説明。その後、同社は第一段で耐空証明を連邦航空局から取得する。

 

そして軌道打ち上げテストをセシル宇宙港(フロリダ州ジャクソンビル)で2021年末に開始する。ここまで極めて野心的な内容に聞こえ、システムの工程表もまだ完成していない。ロールアウト式典で公開されたモックアップ機はタクシーテストに投入可能に見えるが、鋭い観察眼を持つ外部専門家は必要な機能がついていないことに気づいている。スカイラスはレイヴンXを18ヶ月で稼働開始にするというが、疑問が残るのは事業の実施可能性であり、資金の確保先だ。

 

AEVUM/YOUTUBE SCREENCAP

Aevum CEO Jay Skylus explains the launch profile during the rollout event.

 

この種の打ち上げ機で型式証明は前例がないが、エイヴァムでは無人機を使うのが今後の顧客ニーズに合うと見ており、既存の有人機のインフラや支援装備をそのまま使える利点があるとする。同機は通常のジェットエンジン用の燃料を使う。今は数年を要する打ち上げ準備を大幅に短縮するためと同社は述べる。

 

AEVUM/YOUTUBE SCREENCAP

 

レイヴンXの顧客候補に米宇宙軍があり、第一回目ミッションとして490万ドル契約を昨年受けている。迅速小型打ち上げ運用ノーマライザーASLON-45の打ち上げが2021年末に予定されている。

 

デジタルのロールアウト式典にはライアン・ローズ中佐(宇宙ミサイルシステムズセンターの小型打ち上げ部門長)がニューメキシコ州カートランド空軍基地から参加し、軍がレイヴンXへ関心を示していると挨拶した。

 

同社は年間8回ないし10回の打ち上げを予定しており、ミッション費用は5-7百万ドルの範囲だという。

 

この以外に米空軍の小規模ビジネスイノベーション研究事業から5万ドル、さらに名称非公開のペンタゴン契約も取得している。同社はオービタル・サービシズ事業-4で9.86億ドルで同契約を獲得しており、打ち上げ20回を行うとの報道が一箇所から出ている。

 

米政府資金を確保しているがエイヴァムは民間資金の確保にも向かっている。ただし、規模は非公表だ。同社ウェブサイトでは民間顧客が一社あるとなっているが社名は「非公開」でミッション実施時でも公開しないという。最終的に同社は資金の85%を民間顧客から確保し、残りを国防関連機関に期待する。

 

同社公表のコストではライバル他社と大きな差がないが、エイヴァムはレイヴンXの利点は迅速かつ簡易な方法でペイロードを軌道に載せられるのは従来のロケット打ち上げ施設の利用が不要となったためと説明している。「低地球周回軌道にペイロードを届けたあと地上に戻り自律的に安全に滑走路に着陸し、格納庫まで戻ってきます」

 

ASLON-45ミッションはセシル宇宙港から打ち上げるが、同社は適切な長さの飛行施設ならどこでも使えるとし、ペイロード打ち上げは「最短180分、24時間毎日」可能になるという。

 

この打ち上げ方法ではペイロード重量の制約がついてまわるが、宇宙軍、ミサイル防衛庁が小型衛星の打ち上げを意図する限り問題ではない。極超音速ミサイルなど空中発射式装備にも応用できそうだ。実用化に成功すれば、低地球周回軌道に簡単にペイロードを送る魅力的な選択になる。大型衛星は大国間戦では脆弱な目標とペンタゴンは危惧している。このため小型で簡易な衛星を大量に打ち上げ大型衛星喪失の穴を埋めることが高優先順位になっている。いいかえれば短時間で軌道打ち上げする必要がある。

 

この事業には未回答の疑問点も数々あるとはいえ、エイヴァムは興味深い打ち上げコンセプトを提示した。時間が経てば、同社の大胆な構想が言葉どおり成果をあげるかわかるはずだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Aevum's Space Launch Plane Is A-5 Vigilante Sized, Its Claims Are Even Bigger

BYTHOMAS NEWDICKDECEMBER 4, 2020


コメント

  1. >民間航空部門などは~
    >軍事航空部門に魅力~
    仰ること、なんとなくわかります。民航の世界は、とにかくカネですものね。
    まあ、カネのために飛行機を飛ばしているので、当たり前と言えば当たり前ですが。
    民航にも新発明の採用はあるでしょう、新素材の採用、各部の電動化、細かいところではいろいろあるのでしょうが、それとて、消費燃料を減らし利益を最大化するという一点に収束する。ロマンがない(笑)
    もちろん、軍事の航空機だって、コスト課題はつきまとうでしょう。
    でも、コスト課題を押して最大の機能性能を発揮すべく、ビックリドッキリな新発想が出てくるところがロマンなのかもしれません。まあ、機能性能を発揮した結果は死と破壊ですが・・・それはおいといて。

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