スキップしてメイン コンテンツに移動

2024年の展望② トランプ大統領再選となった場合、ウクライナにはどんな展開が待っているのか。

2024年の展望(2)

大統領選挙でトランプ再選となったらウクライナ支援はどうなるのでしょうか。National Interestが識者の見解を伝えています。つくづくバイデンの失策が大きなつけになっていることがわかります。現時点で占拠の予想をするのは無謀ですが、このままだとバイデン-トランプの再度の対決となり、バイデンは姑息な手段でトランプを抑え、再選される可能性がないとは言えません。

第2期トランプ政権はウクライナを見捨てるどころか、和平解決を迫るためにウクライナの軍事援助の制限を解除するだろう

ナルド・トランプは、2期目の大統領に再選されればウクライナの戦争を「24時間以内に終わらせる」と宣言した。主流派のアナリストは大統領の発言を誇張と一蹴しているが、トランプが1年後に大統領執務室に戻ってくる可能性は高い。したがって、外交政策の専門家たちは、前大統領の発言を真摯に受け止め、トランプ政権が第二次世界大戦後のヨーロッパで最大の紛争にどう対処するかを評価すべきである。

まず、バイデンのウクライナ戦略には改善の余地が多く残されていることを認識することから始めよう。そもそも彼の弱点がプーチンに侵攻を促したのだ。欧州連合軍最高司令官は、バイデンのアフガニスタン撤退の失敗がプーチンのウクライナ再攻撃の決断につながったと評価している。バイデンの「統合的抑止力」の弱々しい試みは、制裁とウクライナへの援助を脅かしたが、プーチンの侵略を抑止する本来の目的に失敗した。

プーチンはオバマとバイデンの両政権の下でウクライナに侵攻したが、トランプが大統領の間は攻撃しなかった。トランプは、ロシアとウクライナの戦争は自分の監視下では「決して起こらなかっただろう」と述べている。

プーチンの侵攻後、バイデンは過度に慎重な戦時戦略を追求した。バイデンは勝利というゴールを明確に定める代わりに、ウクライナを「必要なだけ」助けると宣言した。しかし、バイデンは、ウクライナが迅速に勝利するために必要な武器を提供すべきだったが、代わりに、潜在的なロシアの「エスカレーション」を恐れ、慎重な点滴を行った。バイデンは、戦車、航空機、長距離砲など多くの主要兵器システムの供与に反対したが、その後考えを改めた。その結果、ウクライナは戦うには十分な武器を手に入れたが、勝つには十分ではなかった。

バイデンが明らかにした戦時戦略は、何十億ドルも費やして、血なまぐさい決定的な膠着状態を生み出すだけだった。

これとは対照的に、発言にのみ基づくと、ウクライナに対するトランプのドクトリンはまったく異なる。彼は、ゼレンスキーやプーチンとの個人的な関係を利用して「1日で」紛争を解決する交渉をすると主張している。プーチンもゼレンスキーも交渉による解決に関心を示していないため、1日という時間枠は野心的すぎるかもしれない。双方とも、戦場ではまだ勝利できると信じているようだ。

しかし、トランプ大統領の提案にあるアプローチは、その計算を変える可能性がある。トランプは、「プーチンにこう言う、もし取引をしないなら、我々は彼に多くを与えるつもりだ。必要であれば、ウクライナがこれまでに得た以上のものを与える」。

トランプの過去の行動を見れば、その脅しは信用できる。大統領在任中、トランプはISISとの戦いにおける交戦規則に関するオバマ政権時代の制限を解除し、イランのカセム・ソレイマニ将軍を殺害するなど、境界線を押し広げる意思があることを示した。もしプーチンが交渉を拒否すれば、トランプはバイデン政権時代の武器移転に関する制約を撤廃し、クリミアやロシア国内を攻撃する長距離兵器を含め、勝利に必要な武器をウクライナに与えるかもしれない。高価な軍事的敗北の見通しに直面すれば、プーチンは交渉を好むかもしれない。

キーウを交渉テーブルに着かせるために、トランプは「私ならゼレンスキーに『もうたくさんだ』と言うだろう。あなたは取引をしなければならない」と。ウクライナが戦力を維持できているのは西側の大規模な支援によるものであり、援助を失う見通しは交渉への強い誘因となるだろう。

現行路線に沿った停戦とその後の交渉によって、西側に軸足を置き、自国を防衛できる主権と民主主義のウクライナは維持される。キーウは、ウクライナ全土に対する主権主張を国際的に承認された形で維持するだろう。敵対行為の停止はまた、ロシアが紛争を再開しないよう抑止するための、NATOやEU加盟の可能性を含む信頼できる安全保障の提供を促進する。 完全な軍事的勝利(ますます達成不可能になりつつあるようだが)に比べれば満足度は低いものの、結果はロシアにとって戦略的敗北であり、アメリカの国家安全保障と西側同盟の強化につながる。

共和党員の中には、ウクライナ紛争は欧州の問題であり、米国には関係ないと主張する者さえいる。トランプはこれに同意していない。公的な発言がその裏付けだ。彼はこの戦争を終結させることが外交政策の重要課題であり、初日に達成すると考えているのだ。■


About the Authors 

Lt. General (ret.) Keith Kellogg was a National Security Adviser in the Trump Administration. He is currently Co-Chair of the Center for American Security at the America First Policy Institute.

Dan Negrea served at the Department of State during the Trump Administration. He was a member of the Secretary’s Policy Planning Office and the Special Representative for Commercial and Business Affairs. He is currently the Senior Director of the Atlantic Council’s Freedom and Prosperity Center.

Image Credit: Creative Commons/U.S. Government. 

https://nationalinterest.org/feature/what-donald-trumps-ukraine-strategy-could-look-208066



 

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...