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英海軍にF-35Bで飛行隊が復活、ただし同型機の導入に関し疑問が残ったまま大きな決断を迫られそうだ

 


英海軍は空母2隻を建造ずみで、F-35Bを運用する想定で31機をすでに受領しており、74機までの調達を想定しています。ただし、ここに来て費用対効果を考え疑問が生じてきたようです。空母運用部隊は空軍との混成部隊あるいは米海兵隊の運用まで構想があるようですが、どうなるのでしょう。Warrior Maven記事からのご紹介です。


An F-35B from No. 617 Squadron conducting carrier qualifications on HMS <em>Queen Elizabeth</em>. <em>Crown Copyright</em>

An F-35B from No. 617 Squadron conducting carrier qualifications on HMS Queen Elizabeth. Crown Copyright





海軍のF-35B部隊は2番目の最前線部隊となったが、どの型式を追加購入すべきかという今後の計画は宙に浮いたままだ。


英国のF-35B統合打撃戦闘機が、英海軍の飛行隊によって初めて運用され、最終的には英国空軍の飛行隊と一緒に空母に搭載されることになる。イギリスが実際にF-35Bを何機購入するのかという疑問が続く中、このマイルストーンは長い間待ち望まれていたものであり、完全な運用能力(両飛行中隊が同時展開できるようになること)は2025年まで待たなければならない。

 イギリス海軍の809海軍航空隊(NAS)は本日、イギリス東部ノーフォークのマーハム空軍基地でF-35Bとともに再就役した。「不滅」をモットーに活動するこの部隊は、ライトニング部隊で2番目の最前線F-35B飛行隊である。イギリス空軍の「ダムバスターズ」こと第617飛行隊と同様、イギリス海軍とイギリス空軍によって共同運用され、最終的にはクイーン・エリザベス級空母2隻に短距離離陸・垂直着陸(STOVL)ジェット機を搭載する。

 F-35Bを飛行させる他の2つの英国部隊は、運用訓練のためにマーハム空軍基地にある第207飛行隊と、F-35Bの運用試験と評価を行うカリフォーニア州エドワーズ空軍基地に駐留する第17飛行隊が任務を担っている。米国を拠点とするF-35のテスト活動は、最近、オーストラリアと英国が参加し、連合作戦テストチーム(UOTT)は、ブロック4バージョンのテストと評価だけでなく、目視範囲を超える空対空ミサイル「メテオ」のような米国以外の兵器のテストと評価も行っている。

 809 NASは1941年に設立され、当初はフェアリー・フルマーを使用していたが、第二次世界大戦終結前にスーパーマリン・シーファイアーで再装備した。戦後、同飛行隊はデ・ハビランド・シーホーネットと同じ会社のシーヴェノムを飛行させた後、ブラックバーン・バッカニア空母攻撃機を受領した。同飛行隊は、フォークランド紛争で実戦投入されたSTOVLシーハリアーで復帰する前に、1978年に英国の正規空母運用の終了とともに解隊し、1982年12月以来、休眠状態にあった。

 2022年9月、英国国防省は809NASが「2023年第2四半期に立ち上がる予定」であり、2025年の完全運用能力(FOC)につながると発表した。しかし、このスケジュールの一部がずれたことが確認された。飛行隊の再就役は2023年末になるが、FOCは2025年と予測されている。

 FOCが達成されれば、英国のライトニング部隊は2個飛行隊を同時に運用配備できるようになる。これは重要な能力だが、大きなコストがかかり、F-35Bフリートの将来の規模について長年の懸念がある。

 今年5月1日現在、イギリスは31機のF-35Bを受領しているが、そのうちの1機は2021年に地中海での離陸事故で失われ、将来の発注で代替される予定だ。この31機は、「トランシェ1」と呼ばれる48機の初期発注の一部であり、2025年末までに最後の1機が引き渡される予定だ。

 英国国防省は、2015年の戦略的防衛・安全保障見直し(SDSR)で示されたF-35Bの138機保有を目標に掲げていた。しかし、それ以来、予算上の懸念で再考されたようだ。

 これまでのところ、英国国防省は27機のTranche 2を発注する計画を確認している。下院委員会向けに作成された報告書には、次のように記されている:「F-35フリートの最終的な規模、作戦展開、帰属に関する計画についてはあいまいなままであり、プログラムのコストと兵力増加率について継続的な懸念がある」。

 同じ報告書によれば、イギリス空軍の現在の戦闘機隊は「高い能力」を提供している。F-35Bは最高級の能力を備えているかもしれないが、部隊は全体的に兵力の深みを欠いており、消耗を想定した予備機材も不十分である。例えばロシアと戦う紛争の想定で問題となるだろう。約100機が就役しているマルチロール戦闘機タイフーンの初期バージョンを退役させる計画もあり、問題は悪化の一途をたどるだろう。


 国防委員会の報告書は、F-35の追加購入を確約することが、同委員会が「戦闘機不足」と表現する問題に対処する最善の方法である可能性を示唆している。第6世代戦闘機であるテンペストを待ったり、第4世代戦闘機であるタイフーンを買い足しするよりも、F-35なら今すぐにでも入手可能である。


 英国国防省は、現在想定されている74機以外にもF-35を購入する可能性があることに変わりはないが、決定はこの10年の半ば頃になりそうだと述べている。その後、同省は検討するとし、「...将来の作戦環境、敵対しそうな相手の能力、戦闘方法をどのように進化させるか、クイーン・エリザベス空母の耐用年数を通じて計画された戦力要素を維持するために必要な航空機の数。さらに、グローバル・コンバット・エア・プログラムの開発、有人航空機が付加的な能力や無人プラットフォームでどのように運用される可能性があるか、これらすべてがどのようにデジタルで接続される可能性があるか、といった要素も含まれる」。


 しかし、F-35の追加購入は、戦闘機数問題の一部を完成させるにすぎない。また、現在の納入率でも戦力の増強には問題がある。特に、機体を実際に飛行させるための整備員が不足しているのだ。

 F-35の買い増しに関する疑問は、必然的に統合打撃戦闘機の機種の問題につながる。これまでのところ、イギリスは2隻の空母から運用できるSTOVL型F-35Bバージョンにコミットしており、高速道路やその他の即席の滑走路からも運用できる可能性がある。トランシェ2もF-35Bで構成される。F-35Cを調達し、空母にカタパルトとアレスター・ギアを装備する以前の計画は、空母の建造中にコスト面から断念された。

 しかし、通常離着陸(CTOL)のF-35Aは、空母に配備できないことを除けば、一定の利点を提供する。決定的なのは、F-35Aは航続距離と積載量に優れていることだ。F-35Bの戦闘半径は約450海里であり、小型の武器格納庫には2000ポンド級の武器は搭載できないが、F-35Aの戦闘半径は約650海里であり、大型武器を搭載できる。


 もちろん、イギリス海軍はF-35Bが空母の運用に不可欠であることから、F-35AよりもF-35Bを常に支持しており、809NASが設立された今、それはおそらく強化されるだけだろう。

 しかし、F-35A型とF-35B型の混成部隊は、両機種が意味のある数で獲得されるのであれば、将来的にはまだ選択肢となりうる。

 英国王立サービス研究所のジャスティン・ブロンク上級研究員(航空戦力と技術担当)が言うように、「例えば、陸上ベースのF-35を2個飛行隊分購入するのであれば、A型を購入する意味がある。トランシェ2の)27機の上に16機を追加するのであれば、B型にこだわるのが理にかなっている」。


 一方、デビッド・デプトゥーラ元航空戦闘司令部計画・プログラム部長は、国防委員会で「率直に言って、現在からテンペストを導入するまでの間はF-35の購入を検討すべきだ」と述べた。

 全STOVLフリートでは、ジョイント・ライトニング・フォースをどのように運用するのがベストなのかという問題もある。

 ダン・ステンブリッジ少佐(退役)が国防委員会で語ったように、「この政治的な問題は、我々が英国で保有しているF-35は、陸上で運用できる空母搭載型航空システムなのか、それとも海上運用できる陸上搭載型システムなのかということだ。根本的に、それを決めないという選択をしている。そのため、これらのシステムを何に使うかをめぐって二重会計になってしまうのだ」。


 さらに、72機のF-35Bは、英国海軍が提供する約束をしている空母攻撃能力には十分かもしれないが、英国空軍に期待されている陸上ベースの能力を犠牲にすることになる。


 国際戦略研究所のニック・チャイルズ上級研究員(海軍・海上安全保障担当)は2020年9月、英国議会の国防委員会で、空母打撃に使える機材24機という野心を満たすには、F-35Bは48機よりも「かなり多い」数が必要だと考えていると述べた。訓練やその他の需要を考慮すると、60~70機という数字が妥当だろうとチャイルズ氏は主張する。そして、これは空母打撃のためだけであれば十分だろう。

 2021年にインド太平洋に展開するイギリス空母打撃群のためにF-35Bを追加提供したことがあるアメリカ海兵隊との共同作戦が、解決策の一部になるだろう。しかし、これは海兵隊が追加能力を持つことに依存しており、作戦環境でどのような作戦が実施されるにせよ、米政府がその参加を承認する必要がある。



 ライトニング・フォースの将来をめぐる英国の議論に長い影を落としているのは、コストだ。ロッキード・マーティンによると、2020年のF-35Bの単価は1億100万ドルで、この数字は2014年から2022年の間で32%削減されている。とはいえ、単価は依然として予測を上回っている。ブロック4 F-35の導入は、F-35ファミリーにまったく新しいレベルの能力と追加兵器を提供する。英国が適切なタイミングで発注すれば、その構成のF-35を手に入れることになる。同時に、ブロックIVの各機体のコストは、現在ラインオフしている機体に比べて大幅に上昇する。

さらに、機体単価は1つの要素に過ぎず、運用コストと比べるとあまり意味がない。特にF-35Bの維持費は、アメリカ政府も懸念している。



 英国政府が戦闘機隊の機数不足に対処するためには、近いうちに、F-35のユニークで幅広い先進的な能力を費用対効果分析で検討しなければならないだろう。同時に、F-35Aの検討は、ほぼ避けられないと思われる。

 JSFの通常型離着陸バージョンを艦隊に加えることは、イギリス海軍の支持を得られないだろう。しかし当面は、809海軍航空隊「不滅部隊」は、海軍航空の能力再生で目に見えるシンボルとなる。


Royal Navy Activates First F-35B Unit, Big Decisions On Type’s Future Loom

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED DEC 8, 2023 1:44 PM EST

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