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★★A2/ADへの対抗は発想の変換で:米海軍に新思考を求める攻撃能力の拡充 



確かに攻撃が最大の防御なので、大量の中国ミサイルへの対応と言う悪夢は避けたいというのが米海軍の本音でしょうね。レーザーやレイルガンとなると莫大な電力が必要ですので、ズムワルト級で試すオール電化艦や今後の核融合に期待するのでしょうか。BMD一本槍と言う日本もそろそろ考え直す時に来ているのかもしれませんね。ただし、日本国内に陸上イージスを配置するのはとてもリスクがありますので、西太平洋の第一線で守りに着くイージス艦には相当の役割が今後も期待されます。いかにもアメリカ人好みの発想ですね。しかし、ハープーンやASROCなどまだ旧式の装備が相当残っている、あるいはその間に更新してこなかった報いがでそうですね。一方で既存ミサイルの改装など現実的なアプローチも垣間見え、ここらが現在の国防予算環境を意識した点なのでしょうか。

47 Seconds From Hell: A Challenge To Navy Doctrine

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on November 21, 2014 at 4:29 AM

CSBA graphic
WASHINGTON: 巡航ミサイルがこちらに向かってくる。どこで迎撃するか、200マイル先だろうか、それとも35マイル未満の地点?
  1. 200マイル以上の地点と答えたあなたは現在の米海軍と同じ思考だ。海軍は数十年かけて高性能ミサイル防衛体制を構築してきた。だがブライアン・クラークBryan Clarkはこれは間違っているという。クラークは12か月前まで米海軍トップ将官の補佐官だった。.
  2. SM-6のような高価格長距離大型迎撃ミサイルを少数調達するのは「間違った自信」につながるとクラークは警告し、中国のように装備が潤沢な敵は安上がりなミサイルを連続発射し、当方の貴重な高性能兵器を消耗させるだけだいう。逆に長距離攻撃ミサイルで敵の発射前に粉砕すれば良い。防御はなるべく軽装備で近距離とし、シースパロウのような安価な装備をと電子ジャミング能力を整備する、弾薬切れの発生しないレーザー装備の導入も必要だ。
The USS John Paul Jones test-fires an SM-6 in June
USSジョン・ポール・ジョーンズがSM-6の試射に成功。本年6月
  1. これは海軍の考え方を一変しそうな内容で、敵のミサイルをあえて艦隊の35マイルまで接近させるのだ。中国のYJ-12のような巡航ミサイルの最高速度を当てはめてみた。クラークに試算結果を見せたところ、確認してくれた。マッハ3.5の巡航ミサイルだと30カイリを47秒で飛来してくる。
  2. 「不安要因は高まる一方」とクラークは認める。「だが、現在の防空体制は誤った自信観をうむだけだ」
  3. 飛来するミサイルを数百マイル先で迎撃できるが、次の発射に時間がかかるので、短距離射程の迎撃ミサイルを連続発射し、これにはスタンダードミサイル、シースパロウ、ローリングエアフレイムと各種のミサイルがあり、最後はファランクス近接防空システム (CIWS)のガトリング銃でもれなく弾丸をばらまいて防御する。イージス艦の垂直発射システム(VLS)で長距離射程迎撃ミサイルを100発運用できるが101発目のミサイルが飛来してくるだろう。
  4. 最新鋭の巡航ミサイルだと100発で合計300百万ドルかかるが、イージス駆逐艦は1,500百万ドルで、その護衛対象の航空母艦は6,000百万ドルを軽く超える。ここには艦載機は入っていない。金回りの悪い北朝鮮やヒズボラではミサイル100発をかき集めるのは困難だろうが、資金が豊かなイランや中国なら安上がりのミサイル多数を高価な艦船に向けて一日中でも発射できるだろう。
  5. 優れた攻撃能力が優秀な防衛手段になるとは限らない。小型、低価格、短距離の迎撃手段を中心にすれば、防衛装備をもっと搭載でき、飛来するミサイルを多数撃破できる。重要なのは、そもそも発射してくる敵を止めることだ。ここに米海軍の直面する本当の問題点がある。なぜなら海軍の対艦ミサイルはロシア、中国、さらにインドと比べても相当に射程距離が短くなっているからだ。
CSBA graphic
米海軍の対艦ミサイルはロシア、中国、インドの装備に有効射程が大幅に見劣りしている。

  1. クラークの考える戦略案は水上艦艇の役割を逆転させ、現在の防御中心から「攻撃的海上支配」に変える。これは単にミサイルだけの問題ではない。
  2. 現時点で米海軍は貴重なイージス艦18隻を弾道ミサイル防衛の任務につけており、ヨーロッパ地域、ペルシア湾、アジアへ派遣している。政治的に各艦には高い優先順位がついている。しかしクラークはこれは無駄使いと考え、建艦予算の一部を削っても、陸上配備のミサイル防衛体制を拡充すべきと考える。なぜ15億ドルのイージス艦を派遣するのか。570百万ドルの陸上イージスでも同じ効果が得られる、というのである。
Lockheed Martin graphic
陸上配備イージスシステムの概念図
  1. クラーク構想で攻撃に主眼を置き、各艦の戦闘力を引き上げる。イージス駆逐艦・巡洋艦には防御用のかわりに攻撃用ミサイルを搭載し、沿海戦闘艦の砲塔を外し小型VLSをつけ、イージス艦の防空任務、護衛任務を代行させる。また攻撃支援も行わせる。現時点で名前のついていない共用高速艇Joint High Speed Vessel (JHSV)や海上前進基地(旧揚陸艦)Afloat Forward Staging Base (AFSB) にもLCSでの防御ミッションを担当させる。LCSの機雷掃海装備やレイルガンを搭載すれば艦隊防御が可能となる。
  2. 以上の大部分は海軍の現実の施策の延長線上にある。海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将はかつてクラークの上司でもあり、イージス巡洋艦・駆逐艦を高度の脅威環境である西太平洋に専念させるべく一部任務を補助艦艇にまかせる方策を求めてきた。海軍はJHSVやレイルガンの試作を行う一方、AFSBには低出力レーザーを搭載した。ただし補助艦艇を新型兵器の作戦運用に供する発想はクラーク以外にない。沿海戦闘艦についてはチャック・ヘイゲル国防長官が海軍に仕様再検討を命じており、武装を強力にし生存性が高くなった次代艦となるはずだ。時間と費用の観点から現在のLCSを原型とした艦になるだろう。また射程65マイルのハープーンしかない海軍だが、ロッキード・マーティンに新型長距離対艦ミサイルLong-Range Anti-Ship Missile (LRASM)の製作をさせようとしている。
An artist's depiction of a Lockheed Martin LRASM (Long-Range Anti-Ship Missile) hurtling towards its target.
ロッキード・マーティンのLRASM(長距離対艦ミサイル)の想像図
  1. ただしクラークは一部修正を提言している。たとえばLRASMは空中発射型大型弾頭(1,000ポンド)から発展させるべきで、射程も300マイルと控えめにすべきとする。弾頭を軽量化すれば燃料をその分多くつめるとクラークは主張し、射程1,000マイルとしてもハイテク敵艦に相当の打撃を与えられる。電子装備による防御を主とする今日の艦艇は冷戦時より脆弱な構造になっているからだ。射程1,000マイルのLRASMなら内陸部の目標も攻撃可能で、誘導方式が正確なら陸上海上ともに目標を破壊できる。これが実現すれば海軍には選択の幅が広がり、おそらく次世代陸上攻撃兵器Next-Generation Land-Attack Weapon (NGLAW)の企画は不要となる。
  2. そこでレイセオン製スタンダード・ミサイルだが、海軍は能力向上に巨額の予算を投じ、敵ミサイル迎撃を期待しているが、クラークは同ミサイルを攻撃手段に転じられないかという。一定の射程で空中、海上あるいは陸上の目標を攻撃できる。SM-2には実は対水上艦モードもついているがほとんど見過ごされているとし、最新版SM-6でGPS誘導がつくと、地上攻撃にも転用できるとする。ただし、クラークはここにとどまらない。スタンダードミサイルを敵航空機、艦船、陸上のミサイル施設を標的に敵の発射前に攻撃すべきとする。また改造して対潜水艦用にも使えると主張。現在主力のASROCは射程12カイリだが、転用すれば一気に10倍の有効射程が得られる。弾道ミサイル防衛用のSM-3については各艦への搭載数を緊急用ごく少数に限るべきだとする。
Navy photo
Evolved Sea Sparrow Missile (ESSM) launching
  1. では防御はどうするか。まず発展型シースパロウミサイルEvolved Sea Sparrow Missile (ESSM)があり、これもレイセオン製品で米海軍はスタンダードミサイルの補助としか見ていないが、NATO各国の海軍では主力防御手段として採用している。ESSMにも対艦攻撃モードがあり、攻撃、防衛双方に活用できるとクラークは指摘。ただし、主目的はあくまでも防御手段である。単価1.3百万ドルとSM-6の三分の一で大きさも四分の一しかないので各艦に防御用以上の本数を搭載できる。.
  2. このシースパロウを補助するのがジャマー装置だ。クラークが着目するのは水上艦電子戦能力向上事業 Surface Electronic Warfare Improvement Program (SEWIP)の「ブロックIII」で2017年めどで実用化となるもの。「この装備がきっかけとなり今回の構想をまとめた」とクラークも言っている。ジャミング能力は大幅に向上するが、現在の指導原則では「使用することはない」というのは有効射程は30カイリに限定されるためだ。ただし、30カイリになれば飛来するミサイルに電子戦が実施でき、目標を外せば迎撃は不要になる。
Experimental Navy laser
実験用海軍レーザー兵器
  1. 近未来にはレーザー兵器と電磁式レイルガンが登場する。レーザー光線は光の速度という利点があるが、2020年代想定の技術でも有効射程は10カイリにしかならないとクラークはいい、スパロウやSEWIPの補助手段だという。レイルガンは対照的に射程100カイリを超えるが、発射弾頭の速度は光には負けるし、ミサイルのように進路変更もできないので、高速移動目標の攻撃には30カイリ離れると不向きだ。クラークの提言ではイージス艦の5インチ砲を300+キロワット級のレーザーに置き換えるべきとするが、技術の成熟化が前提だ。レイルガンの作動には大量の電気が必要で、JHSVを改装して搭載することになるという。
  2. 各種兵装はコンピュータ化した防御ネットワーク下で作動させる。人間の能力では高速目標を認知できないためだ。クラーク構想では飛来するミサイルに対し各種防御手段を同時に使うが、現在は一つずつの手段を使い、そのあとで別の手段を使う発想だ。現時点はミサイルを遠距離で撃破することを目標しているが、クラーク構想では長距離打撃手段でミサイル発射前の航空機、艦船、陸上施設を攻撃する。
  3. いささか未来的な攻撃手段が多い観があるが、攻撃に重点を置く構想は以前にあった。クラークが支持する「撃つなら矢でなく射手を」と言う考え方は1980年代からあり、当時の米海軍はロシアが発射する大量のミサイル全部の迎撃は不可能と考え、発想を変えミサイルを搭載する爆撃機の攻撃を狙った。だがソ連が崩壊し海軍は制海権を付与の条件と考えるようになってしまった。
  4. 「海軍は1990年代に海上支配の概念は旧式と切り捨てしまいました」とクラークは述べる。「その後は兵力投射能力を発展させ、攻撃機、陸上砲撃能力を整備し、旧来の制海任務を衰退させてしまったのです。その証拠に PACOM (太平洋軍)から2008年に緊急要請が出て、中国に対抗すべく長距離対艦兵器が必要とし、今になってやっと実効性のある解決方法が出ようかという実態です」
  5. 「水上部隊畑の海軍関係者が構想に反応してくれた」とクラークは言う。海軍上層部もたくさんのミサイルを発射してくる敵に対して防衛一本では不利であると理解しているという。クラークの報告書中の提言の多くはグリナート提督の私的なシンクタンク、司令官直属アクショングループCommander’s Action Group (CAG)に本人が属している間に生まれた発想をまとめたものだ。
Rep. Randy Forbes
ランディ・フォーブス下院議員
  1. クラーク報告は議会でも話題になっており、とくに下院海上権力小委員会委員長ランディ・フォーブスが高く評価していることに注目が必要だ。「ブライアン・クラークの最新報告書は優れた内容」とフォーブス議員は声明を発表。(ただし、クラークとはイージス巡洋艦近代化改装案で見解が対立) 「今回の報告書は一般に受け入れられる考え方をちりばめており、現時点で発生している問題の核心の解決手段の枠組みを示している」
  2. 「敵ミサイルとわが方の艦船防衛のコスト効果を改善する方法を求めていきたいし、同時にもっと強力な攻撃能力、長距離火力を巡洋艦、駆逐艦のみならず小型艦艇に搭載する画期的な方法もあるはずだ。この報告書が提起する課題は海軍と議会双方で検討する価値がある」(フォーブス)
  3. 下院小委員会の委員長の発言としてこれは単なる願望ではなだろう。今後のアクションを予告する発言だ。■



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