h中国の大型ステルス機J-20の最新状況です。ソ連と今の中国を比較する論調でJ-20をTu-22バックファイヤーに比較して厄介な存在だとしていますね。米軍機を本土に近づけないための「長い槍」の役割を中国は期待しているのでしょう。開発ペースが急加速することもあり、今から対策を練っておく必要がありますね。
J-20 Stealth Fighter Design Balances Speed And Agility
Unique J-20 could fit anti-access role
J-20の外観上の特長のひとつが大型カナード翼だ Photo via Internet
成都航空機のJ-20ステルス戦闘機は中国の航空宇宙工学の頂点ともいうべき存在だが、その開発の実態は謎に包まれており、試作一号機が突如2010年末に登場したが、その後2012年5月に二号機がデビューしている。二機には2011と2012と言う番号がついており、一緒に飛行しているのが目撃されている。
【試作2号機】 2号機で大きく目立つ違いは機体後部の着陸装置が細くなり、両エンジンの間の機体下部トンネルが深くなっていること。全可動式垂直尾翼の後ろに伸びるブームが長くなり、機体下部の固定式安定板が後部に移された。垂直尾翼の後縁とカナード翼が短縮され、前縁の基部はこれまでの曲線から直線形状になっている。
超音速空気取り入れ口の外壁の上部ラインは曲げられ、着陸装置の格納扉の形状が変わっている。扉が閉まるのは着陸装置が伸びきってからで機首の着陸装置扉も形状を変えている。F-22と同様の一体型フレームなしキャノピーは分割式風防とキャノピーの分割構造に変更され、キャノピーは緊急脱出時に破砕される。赤外線探査追尾装置を収めるとみられる部分が機首下部に追加され、ミサイル接近警告用のセンサーをいれたフェアリングが胴体下についている。
二号機は一号機初飛行の3年後に登場しており、フライトテストで判明した不具合を解消がされているのだろう。現時点でJ-20の実戦化時期は明らかではない。ペンタゴンの最新版議会向け報告では2018年以前には実現しそうもないとしている。.
しかし二号機から当初の基本設計に問題がないことがわかる。試作型全4機は西安のYanliang空軍基地(中国空軍の主要テスト施設)に配備されているらしい。J-20は中国初のステルス戦闘機だが同時に中国最大の戦術機でもあり、その役割が問題だ。
【機体構造】 J-20を観察すると西側、ロシア双方の機体と類似点がないことがわかる。機体の大きさは公開情報の衛星画像から正確に推測されるが、機体の性能特徴は誤って推測されていることがある。さらに搭載するエイビオニクスや素材の情報は不明だ。
J-202号機と初号機の違いとして機体後部で下部の経常が変わり、テイルブームが長くなっている、腹部のひれがやや後方に移っていることがある。二号機の前縁基部が直線になっており、カナード翼と垂直尾翼の端が短くなっている。電子光学センサーの格納部が機首下と機体右側側面に追加されている。Credit: Photo via Internet
J-20の操縦翼面のレイアウトはロッキード・マーティンF-22と大きく異なっているが、胴体のレイアウトはよく似ており、兵装庫が二つ腹部にあり、さらに側面にレール発射式空対空ミサイル(AAMs)をすべて空気取り入れ口の下および外側に取り付けている。両機種とも主着陸装置を兵装庫の後ろに持ち、エンジンは二基が近接している。違うのはJ-20がF-22より全長で 9.5 ft.大きく、兵装庫の大きさはほぼ同じだが、燃料搭載量が違う。
J-20の内部燃料搭載量がF-22より4割多いと見るのは妥当な評価だろう。機体が長い分だけ縦横比がよくなり、遷音速時に抗力効果が出る。
機体は大きいがJ-20の空虚重量はF-22とほぼ同じかもしれない。これはF-22の搭載するF119エンジンより出力が小さいエンジンを積んでいるためで、さらに二次元的推力方向変更式ノズルを搭載していないことが大きい。J-20試作型はUnited Engine Corp. (UEC) 製 AL-31Fを搭載していると見られるが、F-22との推力の差は大きい。F-22では中間推力運転時でJ-20がアフターバーナー点火時とほぼ同じ推力がある。ただしUECのAL-31/117S/117を今後搭載すれば差は縮むと見られる。
ノズルが丸く、機体後部の形状もF-22に比べればステルス性が劣ると見られるが、これはスホイT-50でも同じだ。これは高速飛行可能な機体ではレーダー断面積を犠牲にしてもいいとの賢明な判断なのかもしれない。一方カナード翼はステルス性能に逆効果だという人もいる。
【空力特性】 成都航空機のJ-10設計者 Song Wencong が2001年に発表した論文でJ-20の空力特性を説明している。論文ではデルタ翼、カナード付きで前縁部の基部を延長したLerx構造で相互作用を論じている。J-20の機体はJ-10より幅が広く、カナードと主翼は位置が離れている。しかし同論文によればLerxとカナードを共に使うことで揚力係数が最大になり、カナードと主翼を近くに配置した場合では得られない効果だという。
論文ではステルス機で斜め配置の尾翼構造にも言及している。固定式で角度をつけた尾翼は高迎え角の場合強力な交差流にさらされる。その結果、尾翼には強いモーメントが生まれ、尾翼が斜めになっているため、ピッチアップの力も加わるという。この解決方法として同論文では小型の全可動面の採用を提言している。J-20はスホイT-50と一定の方向では安定性を欠く点で共通しているが、J-20では尾翼を全可動式にすることでアクティブ制御を可能としている。また論文ではカナード構造により失速しても推力方向変更を使わずに確実に回復できるとする。
【エンジン】 論文では次世代戦闘機には超音速巡航飛行が必要ととし、超音速時の抗力削減の必要を強調している。ただしJ-20の超音速巡航飛行のカギはエンジンで、中国はロシアがSu-35SやT-50で開発中の技術を模倣しようとするだろう。UECの117Sエンジン(Su-35S用)はAL-31Fの推力32,000 lbより強力なうえ、デジタル制御方式となっている。T-50ノ117エンジンは117Sと似るが、さらに33,000 lb. へ増加しているとUECはいい、高温限界点が引き上げられ最高出力をアフターバーナーなしで持続できるという。ただし、J-20に117エンジンを搭載してもF-22の推力重力比にはかなわない。
【武装】 J-20の武装搭載方法はF-22と似ているが、兵装庫が短く狭い点がことなり、SD-10AAMサイズだと4発しか入らない。しかし、翼折り畳み式ミサイルなら十分収まる大きさのようだし、中国はロシアから Kh-58UShKE マッハ4級の対レーダーミサイル購入を交渉中と言われている。同ミサイルはT-50も機体内部に搭載する。
側部ミサイル格納庫はF-22と違い、ミサイルレールを引き延ばしてから扉が閉まる設計で、目撃されたミサイルには低アスペクト比の翼と折りたたみ式尾翼がついていたという。機関銃の搭載は見られていないし、想定されていないようだ。
このためJ-20は空対空戦闘機として重点を前方ステルス性能におき、高速度で効率を発揮する空力特性をもたせ、航続距離が長く、中程度の機内ペイロードを持たせ、防御用に適度の機動性をもたせた設計だ。開発の余地が相当あり、現行エンジンはとくに改良が必要だが、中国はハイローミックスの戦闘機配備を考えていることがわかる。
【作戦構想】 機体の成り立ちは中国の地理的条件から生まれた接近阻止領域拒否戦略に合致しており、中国がシナ海と周辺の島しょ部分にの軍事、地理上の野望の焦点をあわせていることに符合する。合衆国がこれから配備する戦術戦闘機は戦闘半径600マイルと中国本土の目標に到達できないし、同盟各国も同じ装備の整備を進めているのが現状だ。
そのため作戦の実施にどうしても必要な二機種が空中給油機と情報収取監視偵察(ISR)機だ。米空軍司令官レベルが好む「分散統制」構想でISR機材は統制通信機能も有する。しかし、給油機もISR機も防御能力がなく、戦闘空中待機combat air patrol (CAP)戦闘機による援護は長距離では実施が困難だ。
J-20の主要任務はステルス性とスピードでCAPを突破し、重要な給油機とISR機を追い散らすことだろう。長い航続距離で「長い槍」の利点を発揮し、J-20の有効飛行半径内では空中でのレーダー支援が不可能となる。
また対レーダーミサイルの搭載でJ-20にはある程度までの対艦攻撃が可能となる。中国の新型対艦高速ミサイルCM-400AKGおよびYJ-12はJ-20の兵装庫に入らないが、主翼下に取り付け可能だろう。また兵装庫も拡大されるかもしれない。.
こうして見ると同機はソ連時代のTu-22M2/3バックファイヤー爆撃機に匹敵する存在かもしれない。対抗する側にとっては手ごわい敵となる。
J-20
|
F-22
| |
全長 (ft.)
|
66.8
|
62
|
翼幅(ft.)
|
44.2
|
44.5
|
主翼面積(sq. ft.)
|
840
|
840
|
機体空虚重量(lb.)
|
42,750
|
43,340
|
機体内燃料(lb.)
|
25,000
|
18,000
|
離陸重量、通常時(lb.)
|
70,750
|
64,840
|
最大推力(lb.)
|
55,000
|
70,000
|
最大戦闘時推力重量比
|
0.94
|
1.25
|
戦闘時推力重量比
|
0.59
|
0.93
|
戦闘時主翼吊り下げ重量lb./sq. ft.
|
69
|
66.5
|
Sources: Lockheed Martin, AW&ST analysis
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