オバマ政権にいろいろ問題があるようですね。国家安全保障ですから軽い話題ではないのは重々承知としても、そもそも外部の声を聞く耳をもたないというのはいかがなものでしょうか。 また、国防長官に口出しをしてくる安全保障会議の存在が見え隠れしていることが下の記事から分かります。国防長官職というのは大変な仕事のようですね。
Breaking Defens
Hagel On Way Out; Can White House Listen To Criticism?
WASHINGTON: 人気低下、混乱した世界、自身の戦略思考の不足を疑われ、国防長官チャック・ヘイゲルが退場しようとしている。
ホワイトハウスがヘイゲルを更迭する形だが、オバマ大統領は本人を罷免しておらず、ホワイトハウスから公式な声明が出ていない。これは2006年に民主党が大勝し、ブッシュ大統領がドナルド・ラムズフェルド国防長官を更迭した際とは対照的だ。事実、オバマがヘイゲルを閣僚に招いたのであり、今回も国防長官辞任の発表の直後にオバマはヘイゲルをハグしている。
ラムズフェルドの後任はいまも称賛を集めるビル・ゲイツで、退任するラムズフェルドの隣に立っていたが、ヘイゲルの後任は未定だ。
「タイミングが難しい」と内情に詳しい退役将官は言うが、中間選挙は民主党には残酷な結果に終わったとはいえ、ヘイゲルの後任も共和党主導の上院で承認公聴会に臨まなければならない。しかし、なぜこの時期に長官人事なのか、2016年度予算編成、強制削減の再来、ヨーロッパと中東で危機が続く中である。
「不思議に思われるでしょう」と上記将官は語る。この時期に交代させるホワイトハウスの思惑ななにか。実は「もっと深い事情がある」というのだ。
一つの疑問は対シリア・イラク戦略への批判にホワイトハウスは耳を傾けられるのか、と言う点だ。ヘイゲルは公然とホワイトハウスの方法論に賛同できないと発言し、立ち去ろうとしているが、中間選挙では国家安全保障は争点にならなかった。オバマ政権で国防長官を前に努めたレオン・パネッタ、ビル・ゲイツ両名とも回顧録や公式発言でホワイトハウスが外部の意見を聞かない傾向をはっきりと指摘している。そもそも我が国の制度では補佐官やトップ将官が大統領にときには厳しく隠すことのない助言を提供することで大統領の選択が最高のものとなり、政策運営の方向を最良にするよう考えられている。
そこで今回のヘイゲル更迭をラムズフェルドの事案と比較すると大きな違いがわかる。ラムズフェルドはブッシュ政権のイラク政策そのものを体現する人であり、その政策は選挙の洗礼を受け否定された。
シリアや国防支出を巡りオバマ政権に対する公然の批判が統合参謀本部議長マーティン・デンプシー将軍がから出たのがヘイゲル更迭につながったのだろうか。国防関連で経験豊かなある民主党関係者は次期国防長官は統合参謀本部の手綱をしっかり握る必要があると見ている。この発言はホワイトハウスの視点を反映している。
もう一つの疑問はスーザン・ライス国家安全保障担当補佐官の業績と評価だ。経験豊かな民主党国防関係者はライスについて「後にいつも波乱を残すが、政策を首尾一貫して形成する観点では決して望ましいことではない」と評している。
共和党の議会スタッフは国家安全保障会議が「マイクロマネジメント」で細かい点まで干渉してきたのがヘイゲル辞任の要因と指摘する。「共和党の大勢は今回の辞任に落胆させられています。長官は前に進もうと努力していたのに、また全力を尽くしたのにNSCのマイクロマネジメントと国家安全保障を政治の道具にすることに勝てなかったと見ています」
上院軍事委員会の委員長に就任する予定のジョン・、マケイン議員は次期長官公聴会でも議長を務める予定で、今回のヘイゲル辞任に対して次の声明を発表している。
「チャックとは一緒に仕事をして、ふたりで最大の国家安全保障上の課題に注意を払ってきた。ISISであり、シリア内戦であり、中国の台頭であり、なんといっても予算強制削減だ。チャックが現政権の国家安全保障に不満を持っていたのは知っている。前任者も過剰なまでのマイクロマネジメントの経験を語っており、チャックの場合も同じだった」
「大統領には次回指名する国防長官には芯の強い、正しい判断ができ、独立独歩の人、ボブ・ゲイツ、レオン・パネッタ、チャック・ヘイゲルの各人が示した資質を持つ人物を指名するよう望む」
次期長官指名公聴会は来年1月まで開催予定がない。退任する下院軍事委員会委員長バック・マッケオン Buck McKeon はCNNでヘイゲル辞任に「仰天」し、次期長官候補は大統領の移民政策のため困難に直面するだろうと発言。マッケオンは感度の高いアンテナを有した政治家だ。
「課題山積みのの中、長官は省を効率よく冷静に導いた」とマッケオンは声明を発表。「オバマ政権はこれで四人目の国防長官を探すわけだが、歴代長官が去るにあたって大統領は『悪いのは彼らか、自分か』と自問すべきだ」
先の退役将官は「もし自分で選ぶなら、ミシェル・フローノイ、ボブ・ワーク、アシュトン・カーターというところだね」と語り、内部事情に詳しい他の人と意見を共有している。三名とも両党から高い評価を受けており、面倒な任命手続きも難航しないだろうと将軍は見る。「それぞれペンタゴンでの経験があるので、省内の官僚主義の捕虜にならないはず」
ヘイゲルは捕虜となっていたのか。「ある意味でそうと言える」と先の将軍は言う。「省内をコンパクトに合理化しようとしてその他いろいろあったが、結局ISISにくぎ付けに終わり、ウクライナがあの始末でその他いろいろがうまく行かず、結局長官は参ってしまったのではないか」.
誰にとっても参る仕事だ。では次期長官候補の紹介を次にしたい。それぞれ強みと弱みがある。
Michele Flournoyミシェル・フローノイ:現政権は女性の任命をトップ人事で希望している。ミシェルは民主党内で人望が高い。それでも国防次官の職を辞したのは政策立案・調整で消耗し家族と民間人復帰を優先したためだろう。またペンタゴン退官後は現政権を適格かつ穏やかに批判している。批判そのものを受け付けない観のあるホワイトハウスが本人を登用するか、また本人も心身で重責となる長官職を引き受けるかは疑問だ。
本人をよく知る国防専門家は「ミシェルはヒラリーの下で長官職を希望するだろう」と述べており、今回は打診を断る公算が大きい。
Ash Carterアシュ・カーター: 国防副長官として調達・補給を手際よくさばいた手腕は喝采を集めたが、ヘイゲル長官任命時に選から外れている。そんな人物が任命時の公聴会を切り抜けられるか。法廷では自説を堂々と述べることで有名だ。ホワイトハウスにとって気分の良い人物ではない。民主党の国防関係者は「調達や核兵器含む戦略問題では一番熟知している人物。国防総省でも経験があり、意思決定もしっかりしている。うまく管理すればよい長官になる。ただし、統合参謀本部を抑えきれるかどうか」と評す。
経験豊かな国防関係者もカーターは「名声と称賛の中、去って行ったが、実は長官職を求めていることは周知の事実」と言う。
Bob Workボブ・ワーク:ヘイゲルの副長官は実直な管理者タイプで、国防総省に復帰後は高い地位を確保している。任命されれば議会の承認は確実だ。戦略家として知られ、海兵隊流のスタイルで政権にとっても有益な助言が期待できるが、好ましくないニュースも伝えてくるだろう。ただし現政権としては本人を副長官に留め、政策の継続性と正確性を優先する可能性が高い。
上記の民主党国防関係者は「ワークは任命の可能性がある。いきなりトップの席につくのではないか」と評す。
また先の経験豊かな国防専門家もワークなら良い業績を残せそうだが、障害もあるという。「よい人事だが本人がDCを離れたら途端に知名度が低いのが問題だ。オバマはスター級の人物を長官に据えたいと思っている」
Frank Kendallフランク・ケンドール:ペンタゴンの調達最高責任者は静かだが実効性のある指導力を備えた人物で、ペンタゴンの調達方法を効果的に変化させた。残念なことに上記民主党国防関係者はケンドールに長官任命のチャンスはないと見る。ただし、「ケンドールは管理手腕が優れ、上層部でも一番との印象がある」と優しいことばで評している。■
Sydney Freedberg contributed to this story.
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