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ヘイゲル長官が明らかにした重点技術分野 第三相殺戦略で優位性の維持できるか




オフセットとは相殺というよりは優位性確保ということでしょうか。かつて通産省はじめとする日本の官民一体の産業政策を非難していた米国が今やなりふりかまわず同じ方向に向かっているのは歴史の皮肉なのでしょうか。

Hagel Launches ‘Offset Strategy,’ Lists Key Technologies

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on November 15, 2014 at 9:37 PM

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REAGAN LIBRARY: 準備期間数か月を経て、チャック・ヘイゲル国防長官から「相殺戦略」“Offset Strategy” が正式に発表された。ヘイゲル長官はレーガン国防フォーラムでの講演で、優位性がおびやかされている米国の技術水準を今後どう維持するのかを具体的に述べたものの、重要な点で詳細は語らなかった。
  1. 「相殺」の意味は軍と産業界でチームを組み、技術上のブレイクスルーを求め合衆国が潜在敵国に対し優位性を保つことにある。アイゼンハワー大統領時代の「ニュールック」では核兵器がこの役割を果たし、物量で勝るソ連に対抗した。スマート兵器、ステルス、センサー類、コンピューター・ネットワークが1970年代の「相殺」の中心的存在だった。核兵器やスマート兵器が世界的に拡散普及したことで、米国は脅威に直面している。ではヘイゲルのいう「三番目の相殺戦略」の核心は何か。
  2. 長大なリストはないものの、ペンタゴン内部で続く悩ましい議論から次の技術がペンタゴンの縮小気味の予算で優先順位が与えられる分野であるとヘイゲル講演で明らかになった。ロボット、自律システムズ、縮小化、ビッグデータ、高度生産技術として3-Dプリントが含まれている。では、これらに優先順位を与える意味は何か。
  3. 「ロボットと自律システムズ」とは同じ意味だ。戦闘に投入される機械を無人化するだけでなく状況判断、自ら決定することができるようになる。プレデター無人機や爆発処理ロボットのような遠隔有人操作は不要となる。究極的にはコンピューターが殺害対象を選択すれば、倫理・法律・プログラミンング双方で課題となる。だが現在の遠隔操作式システムでは相当の人的監督が必要で、人件費が上がる中、軍はこのまま続けることができないし、通信をたえず維持しておく必要があり、敵勢力がジャミングやハッキング技術を磨く中でこれも軍として保証ができない。
  4. 縮小化はどうか。大型の軍装備から人体を取り外し、生命維持装備や防護対策を取り除けば、残りはかなり小型化かつ安価にできる。この流れを最大限に活用すれば、すべての部品を小型化できるはずだ。究極的には小型、使い捨ての自律兵器の「大群」を実現することになり、誘導ミサイル(魚雷)と無人機の交配となるのではないか。
  5. ビッグデータはすっかり定着した感があるが、軍は民間よりはるかにこの分野に詳しい。NSAによる通信傍受、プレデターが動画を撮影する等で、問題はデータの海におぼれずに賢く解析する能力だ。画面に目をこらす若い下士官に大きく依存している現状が軍にあるが、このままでは人体の限界に達してしまいそうだ。民間の「ビッグデータ」解析技術を投入すれば少なくとも情報収集データを人間の手を介さずに選別できるはずだ。問題の兆候や異常状況を人間に選別させるのはいかにも時間効率が悪い。
  6. 高度生産技術とはあやふやなことばであるが、ヘイゲルは3Dプリンター技術を取り上げている。従来はすべてを一度設計してから量産を数か年続けるのが常だった。3Dプリンターならいつでもすばやく試作し新技術を取り込む、既存技術を改造したり、と状況に対応が可能だ。縮小化した自律的軍事装備にはうってつけの技術であり、ミニ無人機をミッションごとに必要な数だけ調達できる。各艦艇や地上部隊に3Dプリンターを積めば予備部品は必要な時に調達できる長距離の補給線の制約から解放される。
  7. リストに入っていないものにサイバー安全保障があり、この分野の予算は増加しているが、ヘイゲル長官はすでに十分な注目度があると思って割愛したのか。また電子戦もサイバーのややセクシーさを欠く隣接分野としてこれまで20年間にわたり無視されてきたがここにきて国防トップ数名の講演で再度注目されている。同じように極超音速、水中戦、長距離打撃も優先順位が高くつけられる分野のはずだ。しかし、長官自身が具体的な技術分野を口にしたことの意味は大きく、講演に出ていない技術が無視されることはありえない。
  8. ヘイゲルが強調したかったのはなるべく多くの実現可能なアイディアを可能な限り広い範囲の情報源から入手するため網を広くしておこうということだ。今日のイノベーションの多くが「従来からの国防企業」以外から生まれていることを長官は承知しており、「民間セクターの提案には積極的に耳を傾け、企業、大学を問わず国防総省の常連企業以外を歓迎する」と発言している。このことは短期的には国防総省が「政府の内外を問わず頭脳明晰な才能を招き、白紙から今後3年5年でDoDが開発すべき技術分野やシステムを分析したい」
  9. 各分野への投資活動は「長期研究開発企画事業」 “Long-Range Research and Development Planning Program”と分類される。この名称は1970年代の相殺事業で生まれたものだ。事業全体を統括する最高機関が「高性能抑止力審議会」“Advanced Capability and Deterrence Panel” で長官官房、情報部門、各軍、統合参謀本部、研究開発や調達分野のトップレベルを集める。そのとりまとめ役は国防副長官ボブ・ワークで、強引なやり方と遠慮のなさで知られる技術通であり、以前の勤務先である新しいアメリカの安全保障を考えるセンターthe Center for a New American Securityがロボット工学と3Dプリンターを特に強く求めていた。
  10. ヘイゲルの「国防イノベーション構想」では技術がすべてではない。フランク・ケン―ドル副長官がすすめる調達手続きの改革Better Buying Powerの第三版BBP 3.0ではイノベーション誘発に主眼を置くとの発言がある。同時に作戦方法の一新、新しい作戦概念、軍事教育の刷新、中核指導層をどう育成するか、を考えるという。しかし、各話題もまだ抽象的だ。個別具体的に高度技術の内容を取り扱う必要があるのは否めない。■

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