12月に米英仏三カ国の最新鋭機が米本土で合同空軍演習を行いました。相互運用の実相がわかる内容ですね。ここにF-35が加わりデータ融合の効果を確認できるのはちょっと先になりそうです。日本は米国と演習を実施していますが、日韓米でこのような演習をする日が来るのか年末には若干期待させられました。
前空軍参謀総長「バズ」・モスレーが言ったように「米空軍が飛行できない場所は世界に存在しない」はずだったが、タリバンのようなローエンドの敵を相手に15年に及ぶ戦いに従事している間に中国やロシアはハイエンドの防空体制を構築してきた。その結果、米軍は技術面、訓練で危険なほどの萎縮し兵力投射に困難をきたすほどになっている。シリアでロシアが航空部隊を配備し、防空体制も整備したことで高水準の防空圏への対応は将来の可能性から現実の問題に変化したといえる。
- そこで米空軍、英空軍、フランス空軍が三カ国演習をラングレー空軍基地で展開した。目標は一度失った戦闘技量を回復し、新しい戦術を体得し、作戦運用の新構想をすすめて、21世紀の航空戦闘の変容に対応することである。
- 演習中に空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が報道陣向けに発言した内容が現実世界と今回の演習が密接に関連しているのを示している。「相互運用能力を高めながら狭い空域で友軍同士の衝突を避けることは重要だ」「今回の演習では中東で使っているのと同じ通信方法で相互運用と衝突回避を狙った」
- 同時に三カ国の空軍部隊は21世紀にふさわしい標準作戦をつくろうとしている。そこでは第五世代戦闘機のF-22やF-35が従来型各機を助け、攻撃能力、残存性、効果を上げることができる。F-22はタイフーンと一緒に飛んだことがあるが、ラファールとの共同飛行は初めての出来事だ。
- 航空戦闘軍団司令官ホーク・カーライル大将は「今回の演習では個々の部分の合計よりも全体効果がずっと上回っており、効力の高い部隊を形成できた」と発言。
- 報道陣への対応の席上で空軍上層部から脅威環境の変化について説明があった。ウェルシュ、カーライル、欧州駐留米空軍のフランク・ゴレンク中将、英空軍参謀総長サー・アンドリュー・プルフォード大将、アントアン・クルーフランス空軍監察長官が同じ席上にそろった。
- 「今回の演習では敵機と敵ミサイル、地対空ミサイル、電子戦をそれぞれ進歩中の敵の脅威として重視した」とカーライル大将が述べた。
- そういった脅威内容への対応としてカーライルは「リンクと通信で情報を伝達し、三機種で種類が違うエイビオニクスやセンサーを搭載していますが、それぞれ戦闘に加わり、ミッションの切り替えで、空対空から空対地のように、戦闘状況に応じた役割を果たせるかを見ることとしました」と説明。
- これまでと状況がちがうのはAWACsの役割だ。演習が12年前に開催されていたらAWACSは戦闘機部隊とハブアンドスポーク構造で運用されていただろう。つまりAWACSが中央になり、目標データや警報を周囲の戦闘機に送っていただろう。だが第五世代戦闘機のF-22や今後加わるF-35にはセンサー、データ融合、通信能力が搭載されており、自ら情報発信ができるので中央配置のハブアンドスポーク構造から分散構造のネットワークになる。攻撃段階の各機がこれまでより動的に目標を捕捉し、各機がAWACSへ送る情報はAWACSが発信する命令に活用されるだろう。
- 「今回の演習の狙いは合同軍を最少共通項で構成するのではなく航空優勢を実現する戦闘部隊としてもっと高い次元で効果を発揮できる部隊をつくることです」とカーライル大将は説明。「パイロットたちは共同作戦のこつをまなび、進歩する能力がないと強力な敵防空網では成功はおぼつかないと体感しました」
- 英空軍トップはパイロット技量の重要性を強調した。サー・アンドリュー・プルフォードは英空軍がタイフーン飛行隊2個、F-35飛行隊1個を追加したと発表。これからは難易度が低い航空作戦環境はもはや存在しなくなる中で適正技能の確保に問題意識をもっているという。
- タイフーンは第五世代機ではないが、実に強力な戦闘力があり、英空軍によるISIS攻撃の中心になっている。タイフーンにトーネードを組み合わせて運用している。
- 「タイフーンの近代化改修が進行中です」とポール・ゴッドフレイ大佐(英空軍ロッシマス基地司令)が述べた。「とくに電子戦が大きく改良され、センサーや統合が進歩し、マンマシンインターフェースの改良でコックピットは第五世代機との共同運用を意識した機能を持ちました」
- ある英軍パイロットがうまくいいあらわしている。「一番多くの情報を収集し、処理し、活用することが一番早くできれば情報戦で勝利をおさめ、最終的に戦闘でも勝利できる。第五世代機があれば一瞬のうちにデータを第四世代機と共有できるので、タイフーンは高性能な戦闘機に変身できる」
- これに対してラファールは今回の演習に参加した機種で最古参だ。同機はアフリカ、中東、アフガニスタンで実戦投入されており、フランス軍が合同作戦、遠征作戦を実施する際の有効な手段だ。同機の戦闘システムも順次改良されており、フランス海軍がまず同機を稼働して15年が経過している。.
- 「2004年まではわずか10機しか運用していなかった」とマリー・アストリ・ヴェルニエが2014年取材時に回想している。当時はダッソー・アヴィアションの国防サポート部門長だった。現在のラファールは四つの「トランシェ」があり、各型で各種改良が加えられている。このうち最新のスタンダールF3R型が2018年に引き渡される。
- 現時点の最新型F3は最初のF1と共通点は少ない。「F1仕様をF3に変える改修作業には時間がかかりました」と述べたのはフランス国防省でラファール事業を担当したセバアスティエン・ファーブル海軍大佐だ。改修点が合計1,000の大台を超えたが、うち60パーセントは技術改良関連で、残りは装備と支援ツール関連だという。
- 英仏両軍にとってラングレー基地までの移動自体が遠征空軍部隊の演習になった。大西洋を横断して訓練を行うことは通常の業務になっている。
- これだけの規模の演習になると支援体制の手配も大変だが、英空軍、フランス空軍ともに米空軍主催の演習へはレッドフラッグ演習など参加経験が豊富で新しいことではない。ただ今回違いが生まれたのは両国空軍が合同運用したことだ。フランス側の人員110名(戦闘機、KC-135給油機乗員除く)はいったんフランスから英国へ仏軍機で移動してから英軍C-17とKC-30Aヴォイジャー(A330MRTTの英軍仕様)に同乗して大西洋を越えた。
- 今回の演習で最高の賛辞は英空軍トップから出ている。「大事なのは三カ国空軍部隊がひとつになり作戦を実施したこと。三カ国がこれまで実施してきた実績の上で今後も一緒に作戦できると示せた。その場所がイラクだろうとシリアだろうと関係なく、米本土東海岸の当地で行ったことが重要で三カ国部隊が一つのチームとして共通目的で行動できたことの意味は大きい」とブルフォードが述べている。■
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