韓国には北朝鮮を軍事脅威と見ない向きが多いと聞きますが、あらためて今回の事件できびしい情勢への認識が高まったのではないでしょうか。また中国とのからみでTHAADの持ち込みを拒否してきたソウルがこれからどう対応していくのかも注目されます。前回の実験でも規模があまりにも小さいためいろいろ言われてきましたが、北朝鮮のねらいはブラフだけでなくEPM攻撃も視野に入れているかもしれず引き続き警戒が必要なのは言うまでもありません。
North Korean H-Bomb? Unlikely. What Will China Do?
WASHINGTON:---北朝鮮国営メデイアが水爆実験成功を金切り声で伝えたが実験は成功したとはいえない。
- ホワイトハウス報道官ジョシュ・アーネストは「初期分析結果は北朝鮮発表と一致しない」と述べ、北朝鮮の最重要国たる中国が決断を迫られるだろう。国連安全保障理事会に本件が提示されるとどうなるか。習近平は金正恩に何を伝えるのか。
- 「中国外務省は今回の実験は事前に通知を受けていないと声明で発表した。中国が実験に対応し経済制裁を実施すれば望ましい展開になる。また一時的に北朝鮮空路を閉鎖するのも効果的だ」と北朝鮮に詳しいヴィクター・チャ(戦略国際問題研究所)が述べている。
- ペンタゴンの声明文は予想通りで今回の核実験を「受け入れがたく無責任な挑発行為であり、国際法をあからさまに無視し、朝鮮半島のみならずアジア太平洋地区の安全安定への脅威」としている。
- この声明文で最も興味をそそられる点はアシュ・カーター国防長官が韓国国防相との電話会談の前に在韓米軍司令官カーティス・スカパロッティ大将から「状況最新報告」を受け取っていたとする部分で、長官が北朝鮮部隊の南進はないと事前に把握していたことを意味し、おそらくU-2が収集したデータから放射線、同位元素の内容を知っていたことだ。U-2が実験直後に上空を飛行したのはほぼ確実だ。
- ただし心配なのは北朝鮮が巨額の予算を核兵器開発に引き続き支出し、各地で必要な機材の購入にあたっていることだ。米国と同盟各国は制裁を厳しく課すだろうが、実験強行で制裁効果にあらためて疑問が生じるだろう。
- 米議会の反応も予想通りで、両党議員がそろって北朝鮮を非難する中、共和党は今回の核実験をオバマ政権非難に利用している。
- 「世界各地で米国の指導力が弱体化していると見られており、現政権の無策無為ぶりは事態を悪化させるだけだ」とマック・ソーンベリー議員(下院軍事委員会委員長)が声明文を発表した。同議員は具体的対応策も示している。「米国は韓国と共同してミサイル防衛装備を展開すべきで、THAADも含め朝鮮半島の安全を確保すべきだ。米本土のミサイル防衛も強化すべきだ。同時に核抑止力の強化は待ったなしであり、抑止力は防衛体制の根本である」
- 下院軍事委員会の戦術空軍・地上部隊小委員会の委員長かつ下院情報活動委員会の委員を務めるマイク・ターナー議員からは北朝鮮の核実験には「効果的な対応と非難を国際社会が与えるべき」との発言があり、NATO国会議員会議の議長も務めるターナー議員は7月のNATOサミット(ワルシャワ)で「現在の危険な状況を明確に再確認し、核抑止力が引き続き同盟各国の安全で最終保証手段であることも改めて確認する」だろうと述べた。
- このことから想起されるのがオハイオ級後継艦整備事業への支持が深まり米国に核抑止力三本柱中で残存力が最大の手段を実現することだ。また長距離打撃爆撃機事業への関心が高まり、核ミッション能力を向上することだ。■
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