F-3のエンジン開発で相当の進展があった模様です。米国では本当に日本が第5世代戦闘機を作れるのか関係者が興味津々でながめつつ、日本の強み弱みを知る各位はいろいろコメントを出しています。(下参照) 当ブログとしてもほっておけない話題のため急遽掲載することにしました。前回大きな反響を呼んだ同じAviation Week発の記事と比較すると面白いでしょうね。(日本が目指す次期戦闘機はF-3) http://aviation-space-business.blogspot.jp/2012/10/f-3f-x.html
Japan Ready For Next Fighter Engine Core
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- 2030年投入をめざす国産戦闘機F-3用に、実証用エンジンコア製作が日本で続いている。低バイパス比ターボファンエンジンの素材研究は完了しており、新技術の実用化をめざし別チームは新型機の兵装庫を研究中だ。
- 実証エンジンではコア制作後にファンと低圧タービンの製造に移ると防衛省技術研究本部(TRDI)が説明している。IHIがエンジン製作にとりかかっており、その他技術要素と並行しF-3の実現成を目指す。.
- 機体製作には三菱重工業含む数社が参画し、性能諸元は2013年発表のF-3案に近いところに落ち着いており、飛行性能より航続距離と兵装運用量を重視する。最新の画像資料を見ると2013年提唱の案に極めて近いことがわかる。
- その設計案は25DMUと呼称され大型戦闘機で機体下部に兵装庫をもち、ラムジェット推進ミサイル6発を格納する。このミサイルはMBDA製メテオとほぼ同寸だ。主翼は大型で燃料搭載スペースを確保し、抗力を減らしているが、加速性能が犠牲になる。
防衛技術本部(TRDI)はF-3戦闘機の概念を2013年発表の25DMU
- TRDIは2014年時点の研究でこの形状が最適とする理由を上げている。鍵は長時間飛行性能で現場により長く滞空するほうが、高性能機より意味がある。この仕様でTRDIは非公開の設計案の検討を外部に依頼している。その結果としての26MDUでは大変更はないだろう。
- ただし公表図面では25MDUと次の二点が異なる。兵装庫に格納するミサイルが4発になっていること、コックピット下と前方にあった赤外線センサーが消えている点だ。
- TRDIはターボファンエンジン全体の完成で日程案は発表していない。前の発表では低圧圧縮機と低圧タービンの試作品を2017年度から開始するとしていた。(テストは2015年度に始まっている) 完全な形の試作エンジンは2018年度に実証し、その時点でF-3の製造に踏み切るかを政府が決断する。当然日本政府はまずエンジン開発の進展に期待しているはずだ。
- エンジンコアの中核になる圧縮機と燃焼室のテストは良好な結果を産んでいるとTRDIはするが、詳細は明らかにしていない。
- 三年前の時点で実証エンジンは推力15トン(33,000 lb.)で通常より小型形状とし抗力を減らすすとしていた。F-3は双発エンジンの想定だ。プラット&ホイットニーF119(ロッキード・マーティンF-22に搭載)と同様に日本もシャフト二本、六段高圧圧縮機で高圧低圧タービンは各一段構造で逆回転するエンジン開発をめざしている。
- TRDIは高圧タービンに入るガス温度は平均で1,800C(3,300F)と公表している。これまでの研究内容にはセラミックマトリックス複合材(CMC)があり、これは金属より高温に耐える素材で、タービンの側壁に応用できる。セラミックの補強材はカーボンシリコン繊維だろう。固定部分と回転部分のブレイドはニッケル素材の単結晶超合金で製造する。タービンディスクはローターのブレイドをとりつける場所で国産のニッケルコバルト超合金TMW-24で製造する。
- 5年前まで固定部分はCMCで、回転部分は金属製とするとしていた。日本国内の研究成果からTMW-24製のディスクは従来型の鋳造鍛造工程で製造可能で、通常用いられる粉体冶金工学技術に頼らなくても実現できる判明した。
- 研究者はTMW-24はディスク寿命1,000時間、遠心力630メガパスカルの条件で評価をした。この条件ではTWM-24は710Cまで加熱に耐え、2000年代にに粉末冶金工学で実現した730Cの実績に近い。また1970年代中頃の鋳造鍛造工程では690Cが限界だったので大きな進歩とTRDIはまとめている。ただし、タービンとしての性能は未確認である。
- 兵装庫の検討は2010年から始めており、2013年から各種試験を実施している。その結果として超音速飛行時に兵器を投射した際の空流速度と角度の組み合わせ条件がわかった。次の課題は兵器を投下する気孔構造の設計だ。
- 日本の技術陣は亜音速機として川崎重工業製P-1哨戒機の事例で兵器投下の仕組みと作動は理解しているが、超音速機からの投下ではコンピューターによる運動力学シミュレーションや風洞テストで超音速飛行中に兵装庫扉を開放した場合の研究をしている。風洞はマッハ2.5相当まで再現でき、2012年発表の報告書では兵器投下試験をマッハ1.4条件の風洞内で実施したとある。この速度は空対空ミサイル発射の条件なのだろう。同報告書では計11通りの空洞形状を検討したという。■
以下Aviation Week誌上に現れた同上記事へのコメント及びコメントへのコメント(訳は相当編集しています。)
- ソフトウエアは大部分が米国からライセンス提供されるのでは。
- 三菱はMRJ騒動があったが。
- MRJは設計でつまづいた。日本が飛行用ソフトウェアでどこまで行ってるのかわからないがここが一番難易度が高いので、機械的稼働部分はできてもソフトウェアが無いと大変だ
- F-35でソフトウェアで問題になっているのを見ると米国の劣勢は明らかで韓国が手を貸せないのか。中国も後発ながら急速に第五世代超音速巡航可能なJ-10の磨きをかけている。
- いつもはリスクを恐れる日本が高性能ファンエンジンを開発でき、F-3に搭載できるのか興味をひかれる
- エンジン開発は日本が想定するより長時間かつ多大な資金投入が必要になると思うよ。戦後日本はまだ国際エンジンを開発していない。GEまたはP&Wと提携することになるのが落ちだろう。
- たしかに戦闘機用エンジンの国産開発は初めての経験になるが、日本には敬意を示したいのは大変に組織階層を重視しリスク回避するからで、米国企業と異なり、問題が発生すると解決には長時間がかかる。また戦闘機用エンジン開発・搭載の経験がないことで実用化までこぎつけるのは大変だろう。幸運を祈るが、日本側も今回の事業で「楽しい時間」を経験するのではないか。
- 記事は通念重視で今回はそのとおりにならないと見ている。次の記事に期待。
- 日本は米国を追い抜き第六世代戦闘機の機体とエンジンで進歩するかも。ただしソフトウェアは別で、少なくともこの事業では無理だろう。
- 日本は素材と高度製造技術の二面で強みを発揮している
- 航空機エンジンは素材革命で新しい局面に入りつつあり、高性能セラミックが金属合金の性能を凌駕しはじめた。日本はセラミクス分野で一歩先を行っており、すでに高性能部品を製造している。高性能セラミックスは高温高圧に耐えるタービンを実現し、従来より多くのエネルギーを活用する手段となる。ゼロから設計した新エンジンにセラミックスを応用することで日本はエンジンメーカーがかかえる問題を回避している。
- セラミクスを活用するためには完全に新型エンジンにするのがよいが、既存メーカーだと技術革新が本当にうまくいくのか確認したいところだろう。リチウムバッテリーで革新性がうたわれたが当初は大きな混乱を呼んだのは記憶に新しい。
- 日本は新型エンジンを小型に設定し立ち上げを容易にしたのは搭載機種が双発想定のためだろう。すごい。
- エンジン以外にも同じことが言える。粉末冶金工法はとても高価だが、これに変わる技術が相当進んでいることを示している。
- 日本では米国が悩む空軍、海軍、海兵隊STOVL機の各仕様の違いという課題は存在しないが、日本機はおそらく短距離離着陸性能を示すだろう。また長距離対応のBVRミサイルを搭載し、おそらく自衛用にレーザーも搭載するのではないか。搭載方法次第だがレーザーは360度全方位照射が可能だろう。
- ソフトウェアは米国ライセンスになるのだろう
- 米国や同盟国が同機をほしがるのではないか。機体、エンジン別でもよい。
- ロッキード、ノースロップ、ボーイング、エアバス、BAEがライセンス生産しても驚かない
- 武器輸出制限を解除したのと軌を一にしている。エンジンは海外でも大量の需要があるのではないか
- ソフトウェアというが、日本が自国開発できないのは設計ソフトなのかエンジン制御ソフトのどちらなの?
- 一番困難な部分はセンサー類、兵装システム、戦闘状況等を統合するソフトウェア開発だが日本が同機のIOC獲得時(2030年目標)に自国開発に成功する可能性は10%未満だ。
- 機体制御やフライバイワイヤのソフトウェアは日本でも作れるが、完全国産にした場合は高価になりそうだし、日程に間に合わない。ライセンス供与受けたほうが早いだろう。
- 兵站や補給活動も大切なはず。JSFでは自動ロジスティクス情報システム(ALIS)があり、真価をそのうちに発揮する。日本が独力で同じものを作るのは困難なはず。また互換性のないシステムを構築されても困る。ただ技術的にもっと簡単な部分では国産化は進むだろう。なんといっても日本側には十分な知識がある。
- 設計用ソフトウェアではすでに商用システムがあり、日本がなぜこれを利用しないのか理解に苦しむ。ただしシミュレーションやデータは独自に進める必要は残るが。
- 訓練用のシミュレーターでも独自に開発するつもりなのか、実績あるメーカーに外注するのか
- 日本は分かれ道に立っている。従来の日本は何でも国内で自分で作ってきたので閉鎖系のシステムで強みを発揮してきた。だが新型機事業が成功すれば自国だけで作るよりも大きな事業規模、利益を手に入れる可能性がある。米国との連合では成功した実績があるがソフトウェアやシステム工学ではまだこれからだろう。
- 日本人の考え方については先のコメントが上手く説明していると思う。
- トルコ、韓国、スウェーデンそしてインドネシアも第五世代戦闘機に取り組んでいる。自国産業のみに依存すると試作段階にも到達しない。そこで各国が設計、開発、製造、維持管理を共有してスケールメリットを享受すればいいのではないか。
- 第5世代戦闘機の定義がずいぶんとあいまいではないか。箱にそこそこのレーダー断面積性能をつけて飛ばすのは20世紀の話だ。戦闘威力と残存性を両立させるのは全く別の話だ。
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