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大規模戦争抑止のため小規模対立が頻発? 海軍力プレゼンスを考える



これまでも大艦巨砲主義の時代から海軍艦艇の種類別バランスの問題はとりあげられており、グリナート前海軍作戦部長が強力な旗振り役となりLCSは代表に新しい海軍の姿を模索してきたのですが、直近でカーター長官がLCSを冷遇しはじめてから部妙な風向きになっています。空母戦闘群も減少していくでしょうし、そもそも米海軍だけで世界秩序を維持しようとする姿勢が現実にそぐわなくなっているのではないでしょうか。砂山理論というのは面白いのですが、安全保障でも有効なのでしょうか。

Many Ships = Few Wars: The Case For A Big Fleet

By Sydney J. Freedberg Jr. on January 22, 2016 at 4:07 PM

Aegis cruisers and destroyers.
Aegis cruisers and destroyers.

WASHINGTON: 国際紛争を地震に例えれば、小規模の揺れが続くほうが激甚震災よりマシだ。戦争で言えば世界大戦となる。社会科学では競合する勢力が2つ以上あれば、それぞれの差異は多くの小規模紛争により解消し全面戦争は回避できるとする。そこで海軍のプレゼンスを世界規模で展開することが望ましいと米海軍士官2名が最近論文を執筆している。
  1. 中国が南シナ海で露骨に示す動きのような挑発行為にしっかりと対処するためには多くの艦船が必要となる。多くの艦船を投入すれば相手方と相互の動きを監視することで大戦争勃発のリスクを低くすることができる。問題は米国にはそれだけの艦船数がないことだ。
  2. 「艦船隻数は平和維持に極めて重要だ」とジェリー・ヘンドリックス海軍大佐(退役)は記者に語る。共著者のベンジャミン・アームストロング中佐とともに「ここまで海軍が規模を縮小した状況はこれまでなかった。仕組みがバラバラになりかけている」
Jerry Hendrix
Jerry Hendrix

  1. 「海軍プレゼンスにより米国の権益の範囲と米国の決意の程が示され、意図をしっかりと理解させることで紛争勃発を防いでいる」とヘンドリックスとアームストロングは新しいアメリカの安全保障を考えるセンターの研究文献「プレゼンスの本質:海軍プレゼンスと国家戦略」The Presence Problem: Naval Presence and National Strategy” で記している。両著者はさらに「海軍・海兵隊の規模縮小による海軍力プレゼンスの減少は摩擦発生の可能性が増えることにつながり紛争や戦争勃発の可能性も増えそうだ。米国の権益がどこまでなのか疑念を持たれるためだ」
  2. ヘンドリックスとアームストロングは米海軍を巡る議論の核心をついている。予算が限られる中、海軍は小型艦多数で平時のプレゼンスを保つべきなのか、それとも強力な艦艇少数で戦争に備えるべきなのか。海軍の首脳陣や国防長官はバランスの維持に苦労しており、小型の沿海戦闘艦が特に議論の中心になっている。ヘンドリックスとアームストロングの主張はこの難しい決断の前にそもそもプレゼンスとは何か、そしてもちらん何のためのプレゼンスなのかをはっきりとしておくべきだと主張する。
  3. この点が知性ある整理ができていないのは実経験が不足しているためではない。米海軍は太平洋に1800年からほぼ一貫して艦船を配備している。南北戦争の時代でもエイブラハム・リンカン大統領は太平洋戦隊をそのまま残したのはプレゼンスの維持を念頭に置いていたためだと両著者は言う。テディ・ロウズベルトの「Great White Fleet」では戦艦をイタリアの災害援助に派遣している。海軍長官レイ・メイバスによれば世界各地でプレゼンスを示すことが「これまでで最大の功績」だという。
  4. なるほどプレゼンスは重要だが、なぜなのか。「海軍力のプレゼンスを巡る長い歴史の中でこの任務を遂行することの戦略や理論で議論はほとんどなかった」と両著者は論じている。「海軍のプレゼンスはいつもどの時点でも世界各地に派遣できる十分な隻数があることが前提のようだ」
  5. 事実、「プレゼンス」任務にあたる艦船は一貫して一つのミッションにあたるか、友好国との演習を展開して敵意を有する勢力へ決意の程を示す、人道援助を通じて善意を強化するなどの役割を果たしている。だが海軍の理論家は艦隊戦闘や戦時の護送任務や通商破壊を論じることはあっても戦争行為を思いとどまらせる作戦については触れないことが多い。
  6. 両著者の理論的の土台とは驚くべきことに1996年の砂の堆積コンピューターシミュレーションだ。砂山に砂粒を追加すれば、どれだけ慎重に手を動かしてもある時点で山は崩れる。バランス欠如が限界を超えるためだ。デンマークの物理学者ペール・ペックは砂の大規模崩壊を防ぐ最善策として小規模崩壊を連続発生させるのがよいとし、土台のテーブルに振動をゆるやかに与えるのが効果的と計算した。
  7. このベックの「自己編成型臨界性」“self-organizing criticality” モデルは複雑で災害発生に応用されており、地震、森林火災から戦争にまで広がっている。ヘンドリックスとアームストロングの比喩では世界規模の海軍力プレゼンスは砂山に連続して振動を与えるのと同じで一回で破滅的な結果を生む戦争を勃発させる代わりに多くの小規模事件を発生させて不安定さに対応することになるのだ。
  8. 「この理論からわかるのは各国間に相互作用の機会が多ければそれだけ各国の権益を示す機会も増えるので、主張の背後にある価値観や戦う目的が理解できる」とヘンドリックスは記者に語ってくれた。「相互作用があれば各国は緊張緩和を継続的に可能となり、破滅的な結果を招くことはないはずだ」.
  9. ではこの理論から艦隊戦力の編成方向がわかるのだろうか。議論の余地はあるが、「バランス」が重要だとわかり、これが海軍作戦部長に就任したジョン・リチャードソン大将の基本理念になっている。
  10. 「平和維持と戦争勝利の間には重要なバランスが存在する」とヘンドリックスは記者に語る。「もし高性能艦だけ建造すれば、予算が欠乏し十分な隻数をそろえて平和維持のため各地に派遣できなくなる。反対に低性能の小艦艇をたくさんすぎるほど建造したら、艦隊は戦闘に勝利をおさめる能力を失い、通常兵力抑止効果が犠牲になる。350隻ほどの艦隊規模は適性と思うが、LCSはあくまでも艦隊構成の中でバランスの一部という扱いだろう」■


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