スキップしてメイン コンテンツに移動

米海軍>新CNOの戦略方針案は戦闘能力重視を前面に掲げる


中国やロシアが好き放題に振る舞いつつあるのは米国の力を低評価しているためであり、もはや甘受できる段階ではないと米国防関係者が舵の方向を切り替え始めています。とくにオバマ政権が残り一年を切り、指導力がどうしても低下するこの時期だけに今回の新CNOは頼もしい発言をしています。問題はこのビジョンをどう実施に移していくかでしょうね。日本も当然無関心ではいられないでしょう。

CNO: Warfighting Trumps Presence; ORP, EW Win; LCS Likely Loser

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on January 05, 2016 at 1:27 PM

Navy photoジョン・リチャードソン大将
WASHINGTON: プレセンスという用語はこれまでたびたび海軍力や海軍艦艇整備の文脈で使われてきたが、新任の海軍作戦部長(CNO)による新しい戦略展望では一回も使われていない。かわりにジョン・リチャードソン大将の8ページにのぼる「海洋優位性確保の設計構想」“Design for Maintaining Maritime Superiority” では「戦争」「戦役」「戦闘」の語句が8回も現れている。
  1. 要は戦闘行為及び抑止力は平時のプレゼンスに勝り、性能が能力をしのぎ、質が数より優先するということだ。これは単なる用語の変更ではない。目指すべき方向の変更であり、戦略方針や予算状況の先が見えない中での変更だ。
Adm. Jonathan Greenertジョナサン・グリナート大将
  1. 確かにリチャードソンの前任ジョナサン・グリナート大将も「戦闘が第一」と戦略方針の最上位に掲げていた。だがグリナートは同時に海軍の平時プレゼンスを日常的に世界各地に展開することにも同じ比重を於いていたのであり、国力の誇示、海賊対策、友好国との演習を通じてこれを実現しようとした。またブリーフィングではまずスライドでその時点で艦艇何隻が世界のどこに展開中かを示すのが常であった。グリナートには艦艇隻数がすべてであり、小型かつ低価格艦として沿海戦闘艦を高く評価していた。だが単価5億万ドルのLCSより20億ドルの駆逐艦の戦闘能力が遥かに高いことがわかっていても両方を同時に調達するのは無理だった。
  2. これに対しリチャードソンの戦略構想では「プレゼンス」という用語が出ないだけでなく、艦隊の規模でも言及がない。隻数を確保して世界各地での平時ミッションをこなすこと(軍事用語ではこれは「能力」)は重要ではないとする。大事なのは各艦の性能でロシアや中国を(可能なら)抑止し、(必要なら)撃退することだとする。両国が「ハイエンド戦闘能力を整備している」との認識からだ。
  3. 「この25年間で始めて米国は大国間の競争に復帰しようとしている」というのがリチャードソンの認識でアシュトン・カーター国防長官およびロバート・ワーク国防副長官と共通する。
  4. リチャードソンが中国及びロシアを脅威と明確に発言したが、同時にイラン、北朝鮮、イスラム国も含めており、グリナート提督の発言とは鮮明なちがいが目立つ。「(中国との戦争について)もっとオープンに話すべきだという向きがある」とグリナートは2014年に海軍大学校で講演している。「これはできない。不必要な泥沼に入り込んでしまう」との発言を受けて下院シーパワー小委員会を率いるタカ派のランディ・フォーブス議員がグリナートを強く非難した。
Rep. Randy Forbesランディ・フォーブス下院議員
  1. だが時代背景、基調、CNOは変わった。リチャードソンが「ロシア及び中国が安定を損なうような行動をとっていることを課題として明確に認識するのはいいことだ。図上演習や艦隊演習から新構想が生まれて両国の勝手な主張に対抗できることになるから」とフォーブス議員はBreaking Defense へ文書で伝えてきた。「各国との関係を競争と率直にとらえているリチャードソン提督はアジア太平洋で米国のめざすものをもっと明確に示してくれる」
  2. そこで「海洋優越性確保の構想」では戦闘力の重要性を力説している。しかも文頭から「米海軍は海洋作戦を迅速かつ持続的に実施する準備体制を整える」としている。19世紀の海軍理論家アルフレッド・セイヤ・マハン(艦隊主義者)のパラグラフもあるが、同時期の英国人ジュリアン・コーベットについては僅かに言及するだけだ。コーベットは日常の戦闘を重要視していた。もしCNOがこの主張を実施に移したら、大きく異る結果が生まれる。海軍に沿海戦闘艦の建造を取りやめて浮いた予算を高性能ミサイル等に使えとの指示がカーター長官から出ている。これではLCSには将来がないがリチャードソンがLCS擁護に走るとは思えない。
  3. その他にもリチャードソンはグリナート時代からの重点項目を強調している。オハイオ級原子力ミサイル潜水艦の老朽化に対応した後継艦建造は海軍で最優先事業だがリチャードソンの戦略構想では「国家としての存続の根幹」だとしている。敵意を持ち核兵器で武装したロシアの抑止を念頭に置かないとこの言い方は大げさに聞こえる。
  4. 同様にグリナートはこれまで海軍が軽視してきた分野としてジャミング、なりすまし、電子信号排出管理の再整備に尽力し、各分野をサイバー空間に統合し、海軍用語で「電磁層作戦」“electromagnetic maneuver warfare”と呼ぶ概念を作り上げた。リチャードソンは「電磁操作作戦構想をさらに拡大」したい意向で繰り返し電子戦は将来の「情報化」“informationalized”戦場では当たり前になると主張。(「情報化」という語句は中国の文献からの引用であるようだ)
  5. わずか8ページの文書のため詳細部分はまだ決まっていない。「驚かされたのは海上ならびに沿海部へ向けての海軍力強化をうたった部分だ」と評するのはロバート・マーティネイジ前海軍次官だ。「ORP(オハイオ級ミサイル原潜後継艦建造)を特記しているほか、電子戦も重要視しているが『沿海部よりはるか先から兵力投射し極度に情報化され防衛体制が整備された環境で実行するシナリオ』で必要な能力は言及されていない」
  6. 「艦隊編成を実際にその方向で再構築することの意味は大きい」とマーティネイジは語った。「水上艦隊の構成で重要になるのではないか(例 ミサイル防衛重視に対して攻撃力の重視) 水上艦隊と潜水艦部隊のバランスと将来の空母航空隊の構成(強力な防衛体制地帯への長距離からの攻撃能力)に重要な影響をあたえるのではないか」
  7. リチャードソンがハイエンド脅威対象に重点を置くのはペンタゴンのトレンドと軌を一にしている。カーターとワークの相殺戦略とも通じるものがあり、ロシア、中国への警戒が高まる中、危険な技術が世界に拡散していることでも懸念が増大している。リチャードソンが海軍に提起しているのは切迫感a sense of urgency であり、これはこの15年間通じ対テロ陸上戦の支援に専念していた間に希薄になっているものだ。
  8. リチャードソンは文末でこう記している。「世界最高の海軍部隊であり続けるためには常時戦闘可能な状態である必要がある。対抗諸国も優位性を確保に注力しており、当方も速度を高め、打ち勝つ必要がある。勝利を確保する余地は極めて薄いとはいえ、差は決定的になる」■

コメント

このブログの人気の投稿

★★★★北朝鮮ミサイルが中国衛星で誘導されている可能性

中国も北朝鮮関連では叩けば埃がどんどん出そうですね。北京が見切りをつければ平壌の現政権など簡単に転覆させるでしょうが、中国国内にある北朝鮮とのしがらみ(おそらく共産党内部の派閥争い)と東北部の軍の非合法ビジネスの問題があり、米国といったん話がついても実施が難しいのでしょう。そのうちにしびれを切らした米国が単独行動に出るかもしれません。
Record China Is North Korea Using China's Satellites to Guide Its Missiles? 北朝鮮は中国衛星を使ってミサイル誘導をしているのか
Peter J. Brown May 23, 2017 http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/north-korea-using-chinas-satellites-guide-its-missiles-20810?page=show

北朝鮮がミサイル発射を繰り返し米本土を狙うICBM開発に走る中、ひとつ見落とされている点がある。ミサイルに衛星誘導を使っているのではないか。北朝鮮に衛星航法ネットワークはないため、中国衛星を利用しているとの観測がある。 2014年報道で北朝鮮技術者が中国国内で北斗Beidou衛星航法システムの運用を研修中とある。同年の別の記事で中国軍専門官から中国は北朝鮮による北斗の軍事利用を止められないと発言している。 北斗以外に北朝鮮の選択肢として米露両国のGPSがあり、ロシアはグロナスGlonasと呼んでいる。 「グロナスの可能性もありますが、ミサイル誘導に北斗を利用している可能性の方が高い」と小泉 悠(未来工学研究所特別研究員、ロシア安全保障問題)がメールで述べており、ロシアは北の核実験後に武器および軍事関連技術の北朝鮮向け禁輸措置を取っているがグロナスが対象かは不明と小泉は述べる。 北斗衛星群打ち上げは1994年に始まり、現在は東アジア以遠まで展開している。北斗は民生商業用途と軍用の両面で利用され、軍用では妨害を受けず正確にデータが利用できる。 北朝鮮が北斗の軍用機能を利用しているか不明だが、民生用機能で精密誘導兵器を運用しているとは考えにくい。というのは北斗の民生機能は日米韓の電子妨害に弱く有事の際に北朝鮮が利用するのは困難になるためだ。 「特別のチップならびに中国の協力がな…

★★★真偽は?日本もUCAVを開発していた

日本にもブラック事業がある(あった)のでしょうか。映像公開したのは機密解除になったのか、事業がもっと先に進んでいるからでしょうか。各務原での目撃がないことから別の場所で秘密裏に開発されたのでしょうか。川崎重工関係者は口がさけても語れないと思いますが、事実なら日本もUAV-UCAVを開発していることがわかりますね。判断は読者の皆さんにおまかせします。
This is the combat drone Japan has been building in secretこれが秘密裏に開発していた日本の戦闘無人機だ 川崎重工ブースのビデオでUCAV試作機の飛行状況を写していた (Photo by Harold Hutchison) By Harold HutchisonOct. 06, 05:10 AM http://www.wearethemighty.com/news/this-is-the-combat-drone-japan-has-been-building-in-secret
無人戦闘航空機、つまりUCAVはこれからの軍事航空のカギを握ると言われる。米国、ロシア、フランスが開発中と判明している。 だが本誌We Are The Mighty (以下WATM)はこのたび日本も秘密裏にUCAV開発を進めていたことを知った。 ワシントンで先ごろ開催された空軍関係のイベントでWATMは川崎重工業のブースでビデオ画像を見た。それは同社によるUCAV研究開発の様子で、画像内のUCAVはボーイングX-45やノースロップ・グラマンX-47に似ているようだった。 会場で詳しく聞こうとしたが、同社係員が日本政府の意向だとしてやんわりと断ってきた。翌日も別の係員はこの件は存じていないと答えてきた。 結局三番目に会った川崎重工の小林タクミ氏が「試験機で10年近く前のもの」とし、「防衛省予算による実験事業だった」と説明してくれた。同氏はさらにメールで「2008年ごろのプロジェクト」と述べている。 WATMが当時空軍の筆頭参謀次長として情報監視偵察分野を担当し現在は航空宇宙研究にあたるミッチェル研究所の所長をしているデイブ・デプチュラ退役空軍中将に日本がUCAV開発をしていた事実を知っているか聞いたところ、即座に「知らない」との答えが返ってきた。 このことから日本のUCAVは秘密のベールに隠されていたことがわか…

★★ロッキードが極超音速技術の完成に近づいている模様、SR-72との関連へ注目

Amid SR-72 Rumors, Skunk Works Ramps Up HypersonicsSR-72の噂と関連か、スカンクワークスの極超音速技術が加速中
Sep 27, 2017Guy Norris | Aerospace Daily & Defense Report http://aviationweek.com/technology/amid-sr-72-rumors-skunk-works-ramps-hypersonics
SR-72: Lockheed Martin FORT WORTH, Texas—ロッキード・マーティンが極超音速技術開発を加速化しており、初の実証機を目撃したとの報告もあり、スカンクワークスが進めるSR-72高速機開発との連関が注目される。 「詳細は言えませんが、スカンクワークスのあるカリフォーニア州パームデールで超高速飛行実現の動きを倍増しています」とロッキード・マーティンで航空力学執行副社長オーランド・カバルホOrlando CarvalhoがSAE 国際航空技術学会で語っている。「端的に申し上げれば米国は極超音速革命まであと一歩まで来ています」 Darpaと米空軍研究実験部門が共同で進める推進滑空兵器および極超音速空気取り入れ式兵器コンセプト研究に言及して、カバルホは「この十年で研究は大幅に進み、極超音速技術で状況が一変する意味があることが明らかになってきました。今後も研究テストを進め、極超音速飛行の実現にDarpaとのプロジェクト二件を活用します。国家安全保障ではスピードが肝心です」 SR-72への言及はなかったが、同社が極超音速機として退役済みの高速SR-71ブラックバードの後継機を提案中であることは広く知られており、カバルホの前向きな発言はロブ・ワイスRob Weiss(ロッキード・マーティンの高性能開発事業体執行副社長兼総支配人)の発言に重なる。6月にワイスはAviation Weekに選択的に有人操縦となるSR-72の前身となる飛行研究用機体(FRV)が予定通り進行中と暗に述べていた。 スカンクワークスはFRV開発を来年から始めるといわれ、初飛行予定は2020年だ。FRVはF-22ほどの機体サイズで推進力はフルスケールのコンバインドサイクルエンジン一基だ。しかし実証機に先立ち、ロッキードは各種技術の地上・飛行テスト…