この問題は中国の論理の罠に入って行く気がするのですが、記事にもあるように無害通航であったとすれば問題の海域は中国領海であると認めたことになってしまうのでは。とはいえ既成事実の積み重ねで強弁する中国は世界で相手にされないはずですが。日本が南シナ海のパトロールに加わることには中国はすでに予防線を張っていますのですぐに実現にならないでしょうが、それまでにややこしい問題は解決しておいてもらいたいものです。問題は文中にある超大型巡視船が尖閣に登場した際にどんな事態が発生するかですね。
US Will Push Harder On Chinese Territorial Claims: PACOM
By Sydney J. Freedberg Jr. on January 27, 2016 at 3:28 PM
2015年10月に中国が領海と主張する海域を航行したUSSラッセン
WASHINGTON: 中国の南シナ海を巡る主張に米国は今後も挑戦していく、と「航行の自由作戦」は回数を増やし、より複雑かつ範囲を広げると米太平洋軍司令官ハリー・ハリス大将が発言した。さらに昨年秋に2012年以来久しぶりに実施した航行の自由作戦は実がないと批判されたが実は違うと主張。
- 「航行の自由作戦は継続するだけでなく、回数が増え、中身も複雑になり、範囲が広がることがわかるはず」と、記者が安全保障国際問題研究所での講演で質問をした際に回答している。「一般論だが、航行の自由作戦は南シナ海のみならず世界各地で実施していく」
- 海軍もFONOPS(航行の自由作戦)の実施が3年間なかったことを認め、昨年9月に航海、飛行、軍事活動の展開を南シナ海で中国が一方的に主張する地帯ふくめ実施する権利を有しているとした。その後にラッセンが同地区へ派遣され、中国(およびベトナム、フィリピン、台湾)が領有を主張する地点から12カイリ以内を航行させた。米国はいずれの国にもUSSラッセンの通行を事前通告していないが、中国の神経を逆なでした。
- だが同艦は12カイリ水域を軍事活動せずに航行したので、国際法上では「無害通航」扱いで領海を通過したことになる。対照的に軍艦は他国の12カイリ領海内では軍事作戦を実施できない。ラッセンがレーダー訓練をしていれば米国が問題地点を中国領海とみなしていないことになっていただろう。だがペンタゴンも認めたように「無害通航」させたことでは中国の主張に真っ向から立ち向かったことにならず、人工島を取り巻く海域が領海だったことになる。
- ハリス大将はラッセンはそれでも重要な役割を国際法上で果たしたと主張する。「ラッセン作戦は中国の主張に対して一定の反論になった」とし、「例として無害通航に先立つ通告を求めている点だ」
- 中国が独自の国際法解釈をしていることに留意すべきだ。中国の在フィリピン大使 Zhao Jianhuaは「軍艦、軍用機の無害通航は認められない」と昨年8月に発言した。P-8哨戒機がCNN取材陣を載せて中国人工島付近を昨年5月に飛行した際に、中国側は空域からの退去を求めてきた。P-8並びにP-3が海南島を偵察飛行しているが、中国戦闘機が毎回スクランブルをし、危険なほど接近したことがあった。その意味でラッセンが「無害通航」を敢行した事自体は議論の余地があるものの実績となった。
- 「中国側は領有権、資源の利用で全く妥協する気配がない」とハリス大将は述べた。昨年秋に中国を訪問した際のことで、「こちらの考え方は個人の観点も含めはっきりさせた。つまり問題の各島は中国の帰属ではなく、埋立工事は域内緊張を増やすもので中国の行動は挑発的だと告げ、この点で激しく意見をぶつけあった」
- ハリス大将は緊張が和らぐとは見ていない。たしかに人民解放軍との堅調緩和に努力している。たしかに中国も海賊対策など国際問題に積極的に貢献している。また現時点で中国は南シナ海での土地造成を中断している。
- だが中国沿岸警備隊はマンモスサイズの「警備艇」として排水量12,500トンを建造中で、これは米海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦より大きい。艦首は強化され他艦への衝突を前提にしている。紛争中地帯でで中国沿岸警備隊は同じ警官でも悪いおまわりさんの役で、人民解放軍海軍は善良な警官の役になっているが、これだけの威容を誇る艦を建造することはフィリピン、ベトナム、日本の各沿岸警備隊が相当厳しい対応を迫られることになる。
- 米国は日本防衛という条約義務を尖閣諸島が攻撃を受けたれば履行すると具体的に述べているとハリス大将はセミナー来場者に想起させた。(米国は該当諸島の領有国を特定していないが、日本は数十年に渡り実効支配中) また米国は域内諸国との関係強化につとめており、フィリピンとは新規防衛取り決めで国内基地施設を米軍が利用できるようになった。海兵隊部隊と将来的には空軍がオーストラリアから作戦展開できるようになり、インドとは共同演習と軍装備売却が進んでいる。ハリス大将としては日本と韓国が根深い敵対感情を乗り越えて米国含む「三国間」共同体制を樹立することを期待したいところだ。
- 中国が急速に軍備を進め技術面も拡充してきているが、ハリス大将はそれでも米国には「一方的な」優位性があるいう。そのひとに米国にはアジア太平洋に友好国が数々あるが、中国には皆無だとする。■
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