スキップしてメイン コンテンツに移動

★オーストラリア潜水艦選定>浮かれるパリ、一方で豪州には早くも心配の声、日本は何を学べたか



今回の商談の結果についてはこれから各種の分析が出てくると思いますが、とりあえずオーストラリア側とフランスからの発信が目立ちます。たくさん経験を積むのはいいのですが、方向性を持たずにたくさん鉄砲玉を打っても効率が悪いですね。商談に勝つことの難しさは皆さんの方がよくご存じでしょう。当面はインドとのUS-2商談の行方が注目ですかね。

「defense news」の画像検索結果Australia’s Submarine Decision: Concerns Down Under, Celebrations in Paris

Nigel Pittaway, Pierre Tran and Christopher P. Cavas, Defense News4:12 p.m. EDT May 2, 2016

Australian Sub Turnbull(Photo: James Knowler/AFP/Getty Images)
オーストラリアが次期潜水艦12隻建造でフランス大手DCNSを選定したのは外部でも大きな驚きを呼んだ。事業規模は500億オーストラリアドル(380億ドル、332億ユーロ)でドイツのティッセンクルップ・マリンシステムズ(TKMS)と日本政府が受注でしのぎを削っていた。
  1. マルコム・ターンブル首相が4月26日にフランス案の優位性が「明白」と述べるとパリではシャンパン瓶が次々と開けられたがオーストラリアでは政治観、評論家が選定を巡り意見を戦わせていた。
  2. 「疑いの余地ない結果として国防省から提言が届いた。三案はいずれも優れた内容だった」(ターンブル)
  3. 日本には失望の結果となった。もとはといえばトニー・アボット前首相自らが日本に参加を求め、当時のオーストラリア報道では首相のお墨付きとまで報じられていた。
  4. オーストラリア戦略政策研究所の上級研究員アンドリュー・デイヴィスは「わが方の首相から安倍首相へ電話で伝えたとしているが、これで当面は豪日関係は冷たくなるだろう」と見ている。
  5. 「決定そのものは悪くないと思う。どの案でも優秀な潜水艦になっていたはずだ。三カ国が競い合うのは極めて恵まれた環境だ」とデイヴィスは述べた。
French President Francois Hollande holds up a model選考に残ったフランス潜水艦の模型を掲げるフランス大統領フランソワ・オランド。DCNSのパリオフィスにて。4月26日。左はジャン・マルク・アイロー外相とジャン・イヴ・ルドゥリアン国防相。右はDCNSのCEOエルヴェ・ジロー(Photo: Christopher Petit Tesson/AFP/Getty Images)
  1. パリでは同日にフランソワ・オランド大統領自らはDCNSを訪問し、ロビーでシャンパンをふるまいながら演説をしている。関係者の手を握りながら一般社員の手まで握るという予想外の振る舞いに出た。
  2. 「これは歴史的な事業で史上最大の武器輸出案件になった」と大統領府は声明を発表し、選定は当然である、何故なら両国関係はこの50年で「戦略的段階」まで進展したと述べている。
  3. フランスが期待する事業量は170億ユーロ(195億ドル)と国防相ジャン・イブ・ルドリアンに近い筋の話として週刊誌ルポワンが報じている。ロイターは80億ユーロとこれと異なる金額を報道している。
  4. DCNSの株式35%を保有するタレスにも朗報となった。タレスは10億ユーロ(12億ドル)の売上げを期待し、一隻あたり1億ユーロ相当をソナー、電子戦装備、潜望鏡等で売り上げる。
  5. 次は設計契約の交渉とDCNS副社長マリピエール・バリエンクールが述べ、2017年早々に締結を期待している。
  6. その次は装備品の選択だ。仕様で米戦闘システム統合企業と米製兵装が求められている。報道ではレイセオン、ロッキード・マーティンの二社が入札の準備中で、オーストラリア海軍駆逐艦でロッキードはイージスシステムレーダーを、レイセオンがシステム統合の実績がある。
  7. 米製戦闘装備の搭載がオーストラリアで建造する理由で、機密技術がからむためとロビン・レアード(コンサルタント企業ICSA)が解説する。タレスのオーストラリア法人にとってDCNSとならび米企業と連携して作業を進めるよい機会になるだろうとレアードは見る。
  8. ただDCNSに米企業と組んだ経験がないことが懸念材料だ。また米企業秘密をどう守るかという点もある。
  9. 「米海軍はどの案が採択されても知財面の影響を検討済みと思います」と語るのはガイ・スティット(AMIインターナショナル)だ。「オーストラリアは米知的財産を保護できる仕組みを整えています」
The DCNS Shortfin Barracuda Block 1A design is a conventionally-poweredDCNSのショートフィン・バラクーダ・ブロック1Aは通常型動力推進で、フランスの原子力潜水艦スフラン級が原型。 (Photo: DCNS)
  1. オーストラリア政府は12隻全部をASCが南オーストラリア州アデレードで建造すると確認しているが、南オーストラリア州へは国内から批判も生まれている。政府調達の艦船の大部分を同州が建造しているという意見だ。たしかに同州アデレードにあるASCでは2020年から次世代フリゲート艦の建造も始まり、遠洋哨戒艇OPVs12隻の建造が2018年開始となる。ただしOPV建造はその後西オーストラリア州へ移管し、フリゲート艦の建造をすすめる。
  2. 潜水艦建造のスタートは2022年か2023年になると国防省報道官は言うが、このまま実施は難しいとの見方が早くも出ている。建造が遅れれば、既存コリンズ級を改修しつつ新型潜水艦の就役を待つことになる。
  3. 「2022年は希望的すぎますね。OPV建造が2018年から次世代フリゲート艦が2020年と決まっていますからね。これだけでも相当の作業量であり、技術面、施設面で手一杯というところですから」とデイヴィスは指摘する。
  4. 特に一号艦の建造は簡単ではない。「初号艦の海上公試は2028年ごろ、就役はその二年後の2030年でしょう」とデイヴィスは見る。「建造開始から海上公試までが四年間とすれば開始が2024年になってもおかしくない」
  5. ターンブル首相はオーストラリア国内でまず1,100名が直接関連し、間接サプライチェーン含めると1,700名分の仕事が生まれると述べている。波及効果はフランスの方が大きい。DCNS広報によれば協力企業含み4千名分の雇用につながるという。
  6. 日本にとって今回の敗退は学習の機会になるとの見方が多い。フランス、ドイツともに海外の防衛需要で納入実績がある中で、日本にとって初の挑戦となった。武器輸出を自ら禁止してきたのだ。日本には優秀な装備も他にあり注目も集める一方、自信過剰な態度が時として顕著に出ていた。
  7. 「初挑戦の日本は教訓を多く得たのではないか」とスティットは見ている。日豪関係には独特の側面があり、安倍政権としても潜水艦商談を特別扱いしyていたとスティットは見る。
  8. 「日本が今後世界を相手に商売するつもりがあるのかわかりません。日本も次回は完成品輸出をいきなり提案する前にもう少し現実的に成約できそうな商談にもっていくのではないでしょうか」
  9. それでも日本はあきらめず世界の防衛需要に焦点を合わせているようだ。「三菱重工の営業報告2015年版では国際防衛市場の拡大に着目していますね」(スティレット)■


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ