オバマ大統領の広島訪問を巡っては謝罪だ、謝罪ではないとの議論の方が大きいようですがもっと大きな世界平和での視点が日本から出てこないのは核抑止体制の現実が理解されていないためと思われます。周辺で不穏な動きがあることから核武装論が簡単に口に上る様相がありますが、実は軍の方が核兵器を使いたくないと考えているのは皮肉な話です。
The Nuclear Football Goes to Japan
7:48 PM ETBY JOE CIRINCIONE
バラク・オバマ大統領が5月27日に広島を初訪問するが、同時に核のフットボールも初訪問となる。
「フットボール」は大統領専用緊急鞄と呼ばれるブリーフケースで軍補佐官が持参し大統領が行くところ常についてまわる。中には数分のうちに1.000発近くの核弾頭を発射する命令コードが入っている。
今週オバマ大統領は広島で指一本で広島22,000個を30分で破壊できる。
米国は核弾頭975個を「高度緊急状態」に置いていると全米科学者連盟のハンス・クリステンセンは推定し、うち435発は大陸間弾道弾ICBMで弾頭多数を搭載し、潜水艦発射弾道ミサイルSLBM120発が合計540個の核弾頭を搭載する。各弾頭は広島型原爆の6倍から30倍の威力がある。
ICBM発射に要する時間は5分、SLBMだと12分だ。ミサイルはで三十分未満で目標到達し全部発射すれば330メガトン、広島型原爆の22,000個に相当する。実施すれば人類の文明は終焉を迎える。
ただし米国が保有する核兵器はこれだけではない。さらに6,000発の弾頭がミサイルや爆撃機で運用可能でさらに予備分や解体を待っている分含めてある。
今回の大統領訪問は米国の核兵器取り扱いで健全さを示す機会になるものの、好機を逸するかもしれない。
広島訪問は政治的な意味が強いが大統領周辺は実質的な意味は薄いとし政策スピーチはないとする。
また今回が大統領の核政策で変更を公言する最後の機会でもない。他に機会はあり、とくに9月の国連総会演説がある。
それでも広島は大統領がプラハ演説で7年前に始めた核政策の感情的な終着点となる。この機会を大統領は活用できるだろうか。
オバマ大統領は同地では簡単な所感として戦争について一般論を語ると発言していた。エイブラハム・リンカン大統領のゲティスバーグ演説も短いもので10センテンスしかなかった。リンカンも戦争の一般論を語っている。オバマなら同じ時間でもっと多くの内容を語れるはずだ。
最低でもオバマ大統領は平和と核のない安全な世界で持論を再度明示すべきだ。三年前のベルリン同様に「核兵器がある限り真の平和はあり得ない」との考えを示すべきだ。
これができれば効果は大きい。だができることはもっとある。大統領は核の惨劇リスクで低減策を打ち出すことができるはずだ。
- 一言で米国の核兵器を数分以内に発射できる体制を終わらせることができる。今の体制は冷戦時代の考え方で時代遅れとなっており21世紀にふさわしくない。
- 最低でも50発のICBMを即応体制から外すことができるはずだ。このミサイルは新START条約下で解体が予定ずみのもの。直ちに速報体制を解除しロシアにも同様の対応を求め、核戦争一歩手前から安全を確保すると言えばよい
- 新世代核兵器体系総額1兆ドル発注ずみの実施取り消しとして手始めに300億ドルの新型核巡航ミサイル事業を中止する。これは必要性が最も薄く事態を不安定化させる装備だ
- 国連安全保障理事会に核実験全面禁止と我が国による核実験探知能力向上を訴えるべきだ。
- さらに上下両院の全議員に広島訪問を求めるべきだ。1兆ドルもかけて新兵器を開発する前にもっと小型の爆弾一発でもこんなことになると実感できるはずだ。
これらをすべて実施しても核のブリーフケースが統制する核兵器は地球上の人類の大部分を消滅するのに十分な規模だ。
後任にフットボールを引き渡す前に一度使えば取り消せないリスクを少しでも低減する好機をオバマ大統領は無駄にすべきではない。
AUTHOR
Joe Cirincione is president of Ploughshares Fund and the author of Nuclear Nightmares: Securing the World Before It Is Too Late. Full Bio
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