2016年5月14日土曜日

次の戦争はどんな姿になるのだろうか 今わかっていること


Aviationweekの創刊100周年エッセイの一環ですが、二人の著者は中国による米ハイテク奇襲攻撃スリラーGhost Fleetの著者ですので、内容もその方向になっています。戦争を計画する側は前回の戦争のイメージにとらわれ結局事態に追いつけなくなるそうですが、果たして次に全面戦争が勃発すればどうなりますか。心してご一読ください。


Aviation Week & Space Technology

The Next 100 Years: P.W. Singer and August Cole

What We Know Now About the Wars of the Future
May 5, 2016Aviation Week & Space Technology

将来の戦争は偶発的に始まるかもしれない。例えばパイロットが無茶な操縦をして別の機体に衝突し、単なる事故だったものが怒りに変わり戦火につながるかもしれない。あるいは危機状態が限界に達し、新政策もしくは新しく造成した島が問題となり同盟国も巻き込んだ大国同士の戦争になるかもしれない。あるいは新世界秩序の構築のため強くなった経済力、軍事力を活かそうとするかもしれない。
未来の戦闘の原因や進展は予測が難しいが、確実なこともある。空がカギを握りそうだ。ただし米国がこれまで経験したことのない形になりそうだ。米国が制空権確保に苦労した最後の経験で空軍は陸軍航空隊の名称だった。米地上部隊が空爆を受けた直近の事例はラオスに展開した部隊が北ヴィエトナムがソ連のアントノフ貨物機を爆撃に転用した機体から爆弾を受けたものだった。ドッグファイトがあった最後の年に生まれた子供がそろそろ軍務についてもおかしくない年齢になっている。
将来の戦争では空の戦いが重要になるとしても、航空機多数で航空優勢の確保を狙う国家が相手となるか、非国家勢力がこれまで誰も経験したことのない方法で空に進出を狙ってくるかは不明だ。後者は現実のものになっている。イラクシリア戦では紛争当事者双方が無人航空機システム(UAS)を投入している。現地での米軍作戦の成否はUASによる目標補足と攻撃能力にかかっている。イラク軍も中国製UASを使い、自称イスラム国でさえ民生用ドローンを情報収集監視偵察用に使っているほどで、一昔前の正規国家では考えられない能力が現実のものになっている。
未来の戦争は多方面での戦いとなるが、開戦は想定外の場ではじまりそうだ。1914年にはドイツ歩兵がベルギーになだれ込み、1941年には九九艦爆が真珠湾に急降下爆撃をしかけ、「衝撃と畏怖」作戦ではバグダッドに巡航ミサイルがさく裂したが、次の戦争の開始は音もなく始まりそうだ。その理由として第一回目の対戦は低地球周回軌道の真空あるいはサイバー空間が舞台になりそうだからだ。それぞれの場所での結果は決定的な効果を生みそうで、現代アメリカの戦闘行為がその両方の場所に依存し、妨害破壊活動に脆弱な場所になっているためだ。
将来の戦争では長い間優勢だった技術優位性も消えるだろう。多くの国家が第五世代戦闘ジェット機やプレデターのような無人機の導入を急ぐのは戦闘の在り方そのものが変わってきたためだ。将来の航空戦で勝敗を決めるのはその前に発生するサイバー空間での対決の結果であり、主要米航空宇宙産業で発生しているデータ強奪が特に大きな意味を持つ。自国の研究開発成果が相手国にも筒抜けでは軍備競争に勝つのは極めて困難だろう。
だが指導層が現状維持を守り通そうとする際に敵側が単にこちらの技術を盗みコピーしていると考えるのは都合がよすぎる。ワシントンDC在住の既存防衛産業からは満足できず、国防総省はシリコンヴァレーに色目を使い、民生部門の技術革新と同様の変化を期待している。反対に中国の政府と民生分野の研究陣は連携して各種の画期的な国産技術を開発しており、例として重慶の長安自動車 Changan Automobile Co.は自動運転車を開発中で2,000キロの運転を達成しており、世界最速スーパーコンピュータ天河-2 Tianhe-2 もある。
こういった技術が戦闘の様相だけでなく戦闘員や技能も変えるだろう。サイバー空間での戦いでは以前は存在さえしなかった軍の組織、にわか集めのサイバー戦闘員、ハッカー集団も参画するはずだ。かわりにF-22パイロットでさえも戦場のデータ管理者の役目を担い、もはやかつての戦闘機エースの片りんは見つけられない。さらに人工知能がSF小説の世界から抜け出し、すべてを制御する存在として台頭してくるはずで、すでにIBMのワトソンではペンタゴンも契約をしている。
どんな変化が生まれるにせよ、将来の戦争ではAviation Weekが100年にわたり丁寧に報じてきた過去の経験もやはり有効だとわかるはずだ。技術がいかに進歩しようと、戦争の本質は人間で、戦争の原因も進展も人間が作るものだ。戦争につきものの状況が見えない事態はやはり残るし、初回交戦の結果で以前の想定条件は変わらざるを得なくなる。敵側も学び実力を上げてくるし、お互いのOODA(観察予想決定行動)のサイクルを意識するはずだ。また革新、組織化、実施面で優れた方が勝利を収めるはずだ。■

オーガスト・コールとP.W.シンガーはともに国家安全保障の専門家で小説Ghost Fleetを共著している。同作品では第三次世界大戦の開戦模様と戦闘に用いられるはずの各技術を描写している。

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