2016年5月5日木曜日

★オーストラリア潜水艦選定結果>日豪関係と選定結果は別の話と見るのがオーストラリア多数意見のようですが....



さて日本では当面の入札失敗の犯人捜しをするのでしょうが、当のオーストラリアでは選定結果を受けて建造、配備、運用など先のことを中心に考えているようです。その中で日本の論調を伝えるこの記事は貴重な存在になるかもしれません。日本の戦略思考の程度とともに品格が問われそうですね。今回はオーストラリア専門サイトからご紹介します。この案件は当面大きな進展がない限りこれまでとします。

Goodbye Option J: The view in Japan

3 May 2016 6:09PM
今週オーストラリアは潜水艦HMASランキンを日本へ派遣し共同演習に参加させ、二国間協力を促進するが、先週に三菱重工業が12隻の潜水艦建造事業で落札に失敗したことを公表したばかりだ。オーストラリア国内では入札プロセスでの日本の取扱いについて批判がすでに生まれているが(下参照)、当の日本はどう見ているのだろうか。
  1. 日本メディアは潜水艦事業の顛末に極めて高い関心を示しており、選定結果が出た今はこの傾向が強い。日本は軍事ハードウェアの輸出を可能にする改正まで行いオーストラリア向け潜水艦事業は初事案になると期待していた。特に潜水艦の共同建造は日豪並びに日米豪の防衛協力の強化につながると見ていた。
  2. 日本としては提案が採択されるものと見ていた。読売新聞は天地がひっくり返ったようだと政府の驚きぶりを表現している。The Australian紙への記事でグレッグ・シェリダンが日本で政治家や外交評論家に取材しており、日本が戦略パートナーとしてのオーストラリアへ厳しい視線を見せている様子を伝えている。特にオーストラリアと中国の関係を問題視しているようだ。
  3. オーストラリアではDCNS案の採択は日本との二国間関係とは切り離してとらえられている。しかし日本では不採択の理由に関心が集まっており、今後の影響については二の次のようだ。
  4. 日本メディアで一番目立つ論調は三菱重工業の経験不足かつオーストラリア国内建造に熱意を示したのが遅すぎたというものだ。フランス、ドイツ側がオーストラリア国防筋や政治家に積極的にロビー活動を展開した一方で日本案を売り込んだのは在オーストラリア日本大使だったという。日本の防衛関係者の一部が機密性の高い防衛技術の輸出に及び腰だったのも日本に熱意が不足していた理由とされる。
  5. 記事の多くが日本案の不採択理由を国内政治に求めている。オーストラリア前首相トニー・アボットが2015年早々に「競合評価手順」を導入したことに言及するものもあるが、それよりも同年後半に首相がマルコム・ターンブルに交代した意味を重視しているようだ。
  6. 目を通した記事の半数が中国の影響を取り上げている。読売新聞は「もしオーストラリアが中国に配慮して日本案を不採択としたのなら見過ごすことはできない」とし、日経新聞はオーストラリアが中国の機嫌を損ねたくなかったのではないかとの見方を紹介しているがこれは日本政府内部にも広がる見方と同一だ。Newsweekはターンブルの訪中と潜水艦事業の採択発表までが極めて短期間であり、首相には中国と親族・ビジネスを通じたつながりもあると指摘している。
  7. 今後の日豪関係での展望はわずかだが、以下の記事が目立つ。
  8. 産経新聞は日豪、さらに日米豪の協力にひびが入れば中国の南シナ海軍事拠点化が止まらなくなると警鐘を鳴らしている。南シナ海での各国共同パトロール案は検討の価値があり、安倍首相にはオーストラリアとの二国間関係強化を求め、日豪関係さらに日米豪の協力関係が失速していると見られないようにすべきと主張。
  9. 読売新聞は「アボット前首相は日米豪協力の重要性を認識していた。ターンブル政権にはアジア太平洋の安定性確保でどんな役割を果たすつもりなのかを説明してもらいたい」と述べている。
  10. メディアは今回の結果でショックと失望を伝える一方、オーストラリアの提案採択手順を批判する声は出ていない。日本国内ではターンブルの対日政策、対中政策はアボット政権との一貫性が高いと見ているものの、アボットが極めて日本寄りだっただけに今回の決定を日本メディアは従来の路線が変更になったと見ており、今後の論調でこの見方が出てくるだろう。

参考)4月26日にオーストラリアABC放送が伝えた関係者の声は以下の通りです。(テレビ番組からの書き下ろし)

Transcript

司会 オーストラリアの造船所ではカヌー一隻も建造できないとの悪口が当時の政府首脳から出て一年半ですが、その政府がこのたび史上最大の国防建造事業をフランスのDNCS案を採択し、500億ドルで設計、12隻建造まで一括して発注することになりました。ただし建造の大部分は国内で行います。国政選挙を数週間に控え、政府は国内雇用2,800名分が生まれると自慢していますね。政治部のリプソン記者が後で追加情報をお伝えします。

マルコム・ターンブル首相(画像) : これは象徴的な事業になります。海軍には大きな進展の日となりました。オーストラリアの21世紀経済にも大きな意義が生まれます。将来の雇用にも大きな日です。オーストラリア製、オーストラリアの雇用、オーストラリア生まれの鋼板、すべてこの国に朗報です。

デイヴィッド・リプソン記者: 事業の規模にふさわしい美辞麗句で首相は史上最大の防衛契約を交付することになります。

アンドリュー・デイヴィス(戦略政策研究所)(画像): 今回整備する潜水艦は足掛け50年の事業となり総額は900億ドルになります。

リプソン記者: フランスのDCNSはショートフィン・バラクーダ潜水艦12隻を原子力推進から通常型推進に変える形で建造し、就役を2030年以降と想定しています。我が国の国防には大きな進展となり地元製造業への活性化効果が期待されています。

ターンブル首相(画像) : さらに2,800名分の雇用がオーストラリアで波及効果として生まれ、経済効果は実に大きなものがあります。

リプソン記者:南オーストラリア州の産業界は信頼を試される機会になりますね。わずか17か月前に当時の国防相ディヴィッド・ジョンストンが造船企業ASCを公然と侮辱していました。

ジョンストン前国防相(画像) カヌー一隻もまともに作れないあそこを信頼していないとわからないかな

リプソン記者: この発言がでて一か月後にジョンストンはアボット政権から更迭されました。当時首席補佐官だったショーン・コステロがDCNSの採択を今回成功に導きました。公職にあった時から何らかの情報を知っていたのではないですか。

ショーン・コステロ(DCNSオーストラリア法人CEO)(画像) DCNSで働くことは政府の事前審査と承認済みを経て実現しており、事業関係者すべてで異論がないはずです

リプソン記者: 今回DCNS案が差がつけたのはバラクーダのステルス推進方式、ポンプジェットです。

コステロ(画像): ちょうどプロペラ機とジェット機のちがいのようなものです。ローターと(聞き取り不能)が防護枠の中でずっと低い音紋つまり騒音しか生みません。

リプソン記者: 探知が困難になりますね。

コステロ(画像): ずっと困難になりますよ。

リプソン記者: 政府としてはDCNSが12隻全部をオーストラリア国内で建造する点が気に入ったわけですね。

コステロ(画像): 一部はフランスで作業します。特殊な部分です。それでも全体の10%未満でしょう。

リプソン記者: フランス案はドイツ案、日本案より抜きんでいました。敗れた両国は失望感を表明してますが、日本のコメントがとくに辛辣です。日本の防衛相は選考結果は大変遺憾といっています。

アンドリュー・デイヴィス(画像): 今回の選定で日本の取り扱い方では問題があったと思いますよ

リプソン記者: 問題はトニー・アボットが日本から潜水艦を「完成品」として導入する話を付けたとの報道があったときから始まっていました。南オーストラリア州はこれに対して国内造船業の将来で懸念を表明しました。さらに議会内の勢力を考慮して党から追放される前日にアボットは言い方を変えて競争評価手順で行くと発表しています。

デイヴィス(画像): 南オーストラリア州とアボット氏の政治関係が日本政府をいやいやながらヨーロッパの民間会社との競争に従わせたのだと思いますね。ヨーロッパ各社には状況は困難だったのです。すると安倍氏は国内で潜水艦輸出の承認を得るべく政治力を多用しました。これまで防衛装備の輸出実績がない国にとっては大きな案件です。そこでオーストラリアはこの微妙な事情を理解してあげて何らかの穴埋めをする必要があります。

リプソン記者: 日本は残念に思っていますが、オーストラリア国内の専門家は選定結果は正しいと見ています。

ピーター・ブリッグス(潜水艦専門家(画像): 日本はこれまで自国内で潜水艦を時間をかけて発達させてきましたが、フランスやドイツの潜水艦の作り方と比べると時代遅れです。

リプソン記者: ではここから難しい話題です。オーストラリアは現在六隻のコリンズ級潜水艦を運用中で、まず2036年に一隻が退役となります。なんか遠い先の話に聞こえるかもしれませんが次世代の潜水艦は相当複雑な仕組みであり、建造が遅れれば一号艦就役が2030年代に先送りされ我が国の国防力に穴が開いてしまいますが、域内での武力紛争の可能性が高まっていきます。

ブリッグス(画像): まず三隻が2030年、2032年、2034年に稼働可能となります。さらに9隻が加われば相当の強化になります。ただし設計工程に時間をかけすぎると一号艦の就役が2035年になり、現有の六隻も稼働できるよう維持する必要があり、2030年時点で望ましい形になりません。とくにこれからの戦略構図を考えると。



2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

通常潜水艦にポンプジェットなんて燃費が悪くて使いものにならない
こんなことも指摘できない「潜水艦の専門家」も怪しいものだ

結局、「中国ビジネスで成功した」と言うターンブルに変わったのが全てだろう
言い訳をすればするほど自白しているようなものだ

匿名 さんのコメント...

>防衛装備の輸出実績がない国にとっては大きな案件です
>そこでオーストラリアはこの微妙な事情を理解してあげて
>何らかの穴埋めをする必要があります。

今回の豪向けの潜水艦の前の
戦後の日本の防衛装備品輸出案件は

オーストラリア空軍が練習機選定でT-1練習機調査(1965年)
高く評価したオーストラリア側が提示した仕様に合わせ
着陸速度低下の為T-1の一機を翼端延長改造(810号機)
その上でオーストラリア空軍はMB326選定

になるんじゃなかったっけかな?