Taiwan Navy Emphasizing Domestic Shipbuilding Program in Ongoing Maritime Restructure
By: Michal Thim and Liao Yen-Fan
March 25, 2016 11:30 AM
海防艦沱江 Tuo Jiang” 、2014年の引き渡し時.
台湾海軍(ROCN)の大規模戦力再整備案は2014年に発表され、1万トン駆逐艦4隻、フリゲート艦10から15隻の国産建造をうたっていた。
- 20年にわたる戦力近代化でディーゼル電気推進式攻撃潜水艦(排水量1,200トンから3,000トン)を最大8隻建造する。これまでの外国の旧装備中心の調達を国産建造に切り替えるのは台湾事情に合わせた国防政策の一環だ。台湾は中国の装備近代化の脅威を直接受けているが、海軍関係の軍事力格差は顕著に広がっている。
- ただし人民解放軍海軍だけが台湾の国産化政策の背景理由ではない。現有艦船の構成をみるとその場しのぎの調達で、必ずしもROCNの希望どおりになっておらず、各種艦や装備が入り混じり、協調が難しいことがわかる。そこで大幅な手直しに入るわけだが、その中心に孫連Hsun Lienプロジェクトがあり、目標は統合戦闘システムを開発し全艦船で運用することだ。なお、新大統領蔡英文の選挙戦で経済成長のため国内造船業の再活性化策が掲げられており、国産国防装備は重要な意味を持っている。
- 台湾のStorm Magazine2月号によれば、孫連プロジェクト第二段階で2,500トン艦三隻を発注するという。背景には第一段階の500トン沱江Tuo Jiang級双胴船艦が成功したことがある。
- 新造艦はSky Bow/Tien Kung 3 (TK-3)、Sky Sword/Tien Chien 2N (TC-2N)を垂直発射システム(VLS)に搭載し、新型Sea Oryx近接防空システムを採用する。これはRIM-116ローリングエアフレイム・ミサイルと形状が類似しており、開発はまだ終わっていない。各装備はいずれも國家中山科學研究院 (NCSIST)が生産にあたる。報道では対空装備を重視しており、シンガポールのAlert 5は同艦を「防空双胴艦」と位置付けている。
- ROCNの近代化事業の中核は分散コンピュータ処理を基本とする戦闘システムの開発にある。これはNCSISTとハネウェル共同開発のH930モジュラー戦闘システムが基本になっていると思われる。ただし新型システムは国産の3Dフェーズアレイレーダー、VLS(Mk. 41 VLSの搭載が難しいため当面はMk. 48 VLSを搭載する)、電子戦装備、ソナーさらに長距離対応可能な高速発射5インチ砲で構成するだろう。
- 孫連プロジェクトはイージスシステムと同等の能力をめざすROCNの目標の実現方法だ。その前には既存のオリバー・H・ペリー級フリゲート艦ROCS田単Tian Dan を元に5,000トンのイージス艦にしようとしたが費用面で中止となっている。孫連プロジェクトでは既存艦含めて艦船すべてを対象にする。
- 新型艦は沱江級に外観が類似しつつ、防空能力を重視すると伝えられ、ミサイル艇集団による強襲作戦の拠点防衛に投じるのではないか。沱江級の防御も念頭にあるだろう。沱江級は空中発射対艦ミサイルには極めて脆弱である。ただし、新型艦がこのミッションに投じられる可能性は低いかもしれない。沱江級の防空能力不足を指摘する向きは多いが、その批判は的外れだ。沱江級の最大の防御性能は低レーダー断面積(RCS)であり、台湾沿岸部付近での作戦時にはこの特徴が最大限に生かせる。大型艦を投入すれば注意を引くだけでなく、防空力増強という本来の目的が台無しになってしまうだろう。
- むしろ新型艦に期待されるのはROCN水上行動群(SAG)の防空能力強化だろう。SAGはキッド級駆逐艦一隻とラファイエット級、オリバー・H・ペリー級フリゲート艦の混合構成だ。この中で老朽化しつつあるキッド級駆逐艦に防空任務とC4ISR機能が過大に期待されており、実際の戦闘では簡単に機能を喪失してしまうかもしれない。ここにもう一艦加えればキッドの負担を緩和でき意味がある投入になる。
- 別の可能性もある。キッド級の後継として大型艦を建造する意向が示されているが、ROCNは小型艦で強力な火力を実現することもできる。孫連プロジェクトでVLSを搭載すればキッド級以上の威力が発揮できるが、キッド級と同等のC4ISR能力が実現するかは不明だ。
- フリゲート艦は10ないし15隻を国内建造の予定で、孫連プロジェクトの戦闘システムの実証意外に沱江級で採用した波浪貫通型双胴構造を大型艦に応用するのが上位の意図だろう。
旧米海軍のキッド級駆逐艦、基隆(DDG-1801)と蘇澳(DDG-1802)
- 新造駆逐艦4隻を調達するROCN方針へは米海軍大学校のジェイムズ・R・ホームズが批判を寄せている。ホームズの言い分では再整備構想では制海任務を主眼に置いた大型艦で構成するSAGから高速ステルスミサイル艦を多数運用する編成に移行すべきだとする。後者では協同集団運用が中心となる。台湾海軍のつ使える資源に限りがあることで敵の侵攻を食い止める任務中心の構成にすることが理に適う点でホームズの批判は妥当と言える。
- 20年かけて海軍力を再整備する案で台湾は制海任務と抑止任務を共に重視するようだ。このうち抑止任務用には光華級Kuang Hua VI高速攻撃艇と沱江級ミサイル海防艦が相当する。ともに台湾海峡での作戦を念頭に置き、台湾沿岸部の複雑な地形を生かし、敵に見つかる前にミサイル発射を行う。もう一方でSAGも温存され、台湾海軍力の大きな柱とする。
- だがROCNが考える20年にわたる近代化案が全部承認されているか不明だ。ただし台湾が大規模建艦に踏み切るかは別にしても、孫連プロジェクトがROCN戦闘艦の将来像を示しているのは確かだ。同プロジェクトとは別にしてもWPC形状のフリゲートにVLSを搭載した新型艦は異論を生まないだろう。
- 確かなのは台湾が国産建艦能力引き上げに躍起となっていることで、今後も革新的な各種艦設計が出現してくるだろう。■
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