背に腹は代えられないとはいえ、せっかく狙った効果が中途半端になれば安物買いの銭失いになりかねません。水上艦でどこまでステルスが実現するかという問いに同艦は画期的な歴史の一ページとなるはずだったのですが。米海軍はまだステルス性ありと突っぱねているようですが、忸怩たる思いがあるのでしょうね。
New External DDG-1000 Mast Reduces Ship’s Stealth From Original Design
By: Sam LaGrone
March 3, 2016 12:10 PM • Updated: March 3, 2016 1:42 PM
センサー装備の追加装備で次世代駆逐艦ズムワルト (DDG-1000) のステルス性能が当初想定より劣化すると判明した。
- 海軍発表の予想図ではズムワルト級三隻は当初デッキハウスに組み込む予定だったセンサー各種をデックハウス前方のマストに装着するほか、デックハウス側面左右にその他センサーを付ける。
- この変更でデックハウスが狙った効果が一部犠牲になる。当初は複合材デックハウスは敵レーダーによる探知を防止するねらいがあった。当初センサー用アンテナ類はステルス機と同様に表面から突出しないよう整形されていた。
当初の完成予想図ではセンサー類はデッキハウスに統合されている。
- 今回外部にアンテナが突出する形になったのは重量軽減と費用節約のためと海軍海上システムズ司令部NAVSEAがUSNI Newsに述べている。
- NAVSEAによる説明ではズムワルト級は変更後も海軍の求めるステルス性を発揮できるという。
- 「変更後のDDG-1000上部構造物は性能および重量面で改善され費用増かを抑える効果がある。変更によりマスト一本がデッキハウス前方に加わり、UHF、VHF、データリンクの通信系と風速センサーをマストに集約する」という。
- 「変更により各艦は三隻とも性能面の向上をしつつ、費用高騰を抑え、重量軽減も実現するが、中核性能要求(KPP)たるレーダー断面積(RCS)の水準は満足できる範囲になる」
DDG-1000ズムワルトの右舷、2015年12月7日撮影。US Navy Image
- RCSはステルス性能の指標で、低いほどレーダーに映りにくい。ロッキード・マーティンF-22ラプターのRCSは角度によるが「ビー玉」程度といわれる。
- 当初の設計案ではRCSはもっと小さかったが、費用面を考慮して海軍はRCSを犠牲にして費用を抑える判断をした、とブライアン・クラーク(戦略予算評価センター(CSBA)の海軍アナリスト)は見ている。
- ただし変更後の形状でも海軍がDDG-1000に求めた水準は最低限で実現するとクラークは解説している。
- 複数筋からマスト採用への変更は性能水準を切り下げた結果であり、この背景に2010年のナン-マカーディ立法による見直し、つまり当初想定より単価が25パーセント以上増加した場合に国防総省が事業を見直す必要が課せられたことであるとの指摘がある。DoDが当初の7隻建造を3隻に削減したのも単価上昇を生んだ。
- ナン-マカーディ立法により海軍は性能水準を下げており、Sバンド大型探査レーダーは装備を断念している。また57mm砲は30mmに変更されている。
- 一番艦ズムワルトはジェネラルダイナミクスのバスアイアンワークス造船所による公試のあと今年後半に海軍へ引き渡し、サンディエゴで戦闘装備の搭載を完成させる。■
現段階でRCSを低くできたとしても、近代化改修時にセンサーだ武装だといったものが外側に突出してくる可能性は高い(これまではずっとそうだった)。それに対し敵も味方もレーダーの性能は進歩していくわけで、現段階で過大な投資を行っても限定された期間しか機能しないのだとしたら、最初から艦艇のステルス化には限界があるようにも思える。
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