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米陸軍の次期中型垂直離陸機材調達事業

事業名が垂直航空機なのはヘリコプターになるかティルトローターになるか未定のためですね。ともあれ大型調達案件がスタートしそうです。今後も動向に要注目ですね。
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Aerospace Daily & Defense Report

U.S. Army Seeks Ideas On Medium-Lift, Scout/Attack FVL

Feb 24, 2016 Graham Warwick | Aerospace Daily & Defense Report

Boeing/Sikorsky

意表を突く形で米陸軍が高速軽量偵察・多用途および中型攻撃輸送用の回転翼機を検討中。国防総省の進める次世代垂直飛行機(FVL)の「ファミリー整備」構想によるもの。
  1. 米陸軍は2月22日に情報提供要請(RFI)をFVL性能セット1(CS1)とともにFVL中型と呼ぶセット3(CS3)で発出した。まずシコースキーUH-60ブラックホーク後継機を2030年代中ごろに作り、その後ボーイングAH-64アパッチ後継機種づくりをめざす。
  2. 中型FVLの前に位置づけられる共用多用途機(JMR)技術の実証事業でベルヘリコプターとボーイング/シコースキーがそれぞれ輸送用途の高速回転翼機を製作中で2017年末に初飛行の予定だ。
  3. RFIによればCS1は「一番機体が小さいが機動力が最高の機体」というのがFVLファミリーでの位置づけで、使用用途は「偵察、軽攻撃、軽襲撃撤収作戦用」としている。陸軍は「民生用、民生機の転用、軍事用あるいは概念上の機体技術」を広く求める。
  4. 性能要求原案には「地形追随あるいは地形回避で飛行速度200ノット超」で無給油で229カイリの飛行半径としている。この速度要求では通常型のヘリコプターは対応不能だがシコースキーの同軸リジッドローター方式S-97レイダー複合機はここに入る。
  5. S-97の設計速度は220ノットで陸軍の求める武装航空偵察機材の要求に合致し、現行のベルOH-58Dカイオワウォーリアーの後継機になるが、調達は先送りされており、退役が進むOH-58Dの代わりはAH-64Eアパッチ攻撃ヘリを用途追加して対応する。
  6. レイダー試作機は自社費用で二機が作られおり、一機目は2015年5月初飛行のあと性能限界の確認用に投入されている。二号機は顧客向け実証に使う。シコースキーはロッキードの傘下に入りミッションシステム技術の開発に入っている。
  7. もう一方のCS1は6名乗りで機動性に優れ、高度 6,000 ft. 温度95F  ( これを6k/95条件と呼ぶ)で地上ホバリング効果を発揮でき、偵察攻撃ミッションで滞空時間2時間で170カイリを移動し、強襲ミッションでは30分で229カイリとする。空中給油能力と艦載運用も求める。
  8. ただしRFIでは「情報の取得はCS1が調達段階に進むことを保証するものではない」と断っている。「現時点ではCS1をどう進めるかの決定はない」
  9. CS3ではUH-60、HH-60、MH-60、AH-64の各機種が実施中のミッションを想定する。RFIによればCS3では「多方面で活躍できる中型垂直離陸機」をめざし、強襲、攻撃、戦闘捜索救難などを想定任務に挙げる。
  10. CS3のRFIでは2030年供用開始の想定で技術内容を求め、巡航速度は230から310ノットとし既存ヘリコプターで対応不可能だ。ベルのV-280ヴァラーJMR実証機が280ノットのティルトローター機で、ボーイング/シコースキーのSB-1ディファイアントは230ノット同軸リジッドローター複合機の設定だ。
  11. その他の性能想定には無給油飛行半径が229から450カイリ、機動性、6k/95でのホバリング性能、機内に3,500-4,000-lb.または機外に6,000-8,000-lbのペイロード、空中給油能力と艦載運用がある。
  12. CS3のRFIは市場調査の意味もあり、機材開発決定 (MDD) に先立つ位置づけだ。陸軍の2017年度予算要求にはFVL中型機調達予算が計上されている。
  13. 予算案では10.4百万ドルで代替案検討(AOA)を始める。AoAは2018年度まで継続し、マイルストーンA決定で技術開発を開始すべきかを決め、2019年度に提案提出を求める。機体製造の契約交付は2021年度に想定している。■

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