2016年3月23日水曜日

米比基地利用協定の中身に注目



南シナ海のご当地フィリピンで米軍が再び基地利用できるようになったという話題です。当面は空軍基地のネットワークを整備しながら、本命の海軍施設の供用開始まではまだ相当時間がかかりそうですが、1991年に反米感情の高まりから米軍基地を放逐したフィリピンがやっとここまで来たのかというお話です。中国は過敏な反応を示すでしょう。
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Analysis: New U.S.-Philippine Basing Deal Heavy on Air Power, Light on Naval Support

By: Armando J. Heredia
March 22, 2016 12:25 PM


先週末に米フィリピン両国が第六回二国間安全保障対話をワシントンDCで実施した。今回は高度防衛協力協定 (EDCA) で初の具体的成果が表れた。米国が太平洋再配備の一環として部隊をローテーション配備したり事前集積拠点として利用できる基地五か所が発表された。
  1. このうち4か所が空軍基地で、ルソン島のバサ、パラワン島のアントニオ・バウティスタ、セブのマクタン-ベニト-エブエン、ミンダナオのルンビアの各基地だ。首都マニラ郊外のフォート・マグサイサイは唯一の地上部隊用施設となる。
  2. この発表を見ると興味深い可能性が見えてくる。バサはフィリピン空軍戦術攻撃飛行隊の拠点であり、米空軍の航空戦闘軍団飛行隊を収容する余地が大きい。マクタンはフィリピン諸島の中央部に位置し、フィリピン空軍の輸送隊が拠点としている。また基地は国際空港に併設されており、港湾とも近い。ルンビアは反乱勢力が活動するミンダナオにあるが、直近の戦闘が発生した地点にほど近く、フィリピン空軍の第15攻撃飛行隊の基地となっており、この数年間反乱勢力への対地攻撃を実施している。
  3. 同飛行隊はフィリピンで初めて精密誘導攻撃を実施しており、ペイヴウェイ爆弾をアブサヤフ反乱勢力に投下している。これは米空軍が技術指導しており、今後の展開の前例となった。アントニオ・バウティスタ基地はパラワン島にあり、スプラトリー諸島に近い。フォート・マグサイサイはこれまでの米比軍事交流でおなじみの基地だ。
  4. 基地利用案は恒例のバリカタン(肩を並べた協力)演習の際に発表された。
  5. 同演習では今後各基地の利用で大きく前進するだろう。今のところ、各基地の整備に予算を確保する必要があり、部隊の展開はまだ実行できない。一部には冷戦時の米軍駐留に戻るとの批判もあるが、各基地はフィリピン基地であり、米軍は兵員を交代で配備し、施設を建設し、物資を事前集積するがあくまでもフィリピン側が管轄する範囲内であり、かつてのスービック海軍基地やクラーク空軍基地のような米軍が完全に管理運用するのとは異なる。
  6. この違いの意味は大きい。また今後の整備も必要で、例えば基地運営のモデルはまだ未完成だ。どちらが指揮統制すべきなのか、米軍が一方的に基地から発進できるのか。さらに状況を複雑にするのが中国の脅威だ。もしEDCA指定基地の米軍が攻撃を受ければフィリピンが直接攻撃を受けたことになり、運用上米軍部隊への攻撃と事前集積装備への攻撃を区別することは不可能だ。
USS Enterprise (CVN-65) at Subic Bay in 1993. US Navy Photo
USS Enterprise (CVN-65) at Subic Bay in 1993. US Navy Photo

  1. EDCAの背景には米軍のアジア再展開があるが、各基地は同時に人道援助災害救難(HA/DR)活動の支援にも活用できる。マクタン-ベニトエブエン基地は国内中央部にあり、この数年同地区は強力な台風に相次いで襲われているので、救援物資の輸送用の大型機の受け入れには最適な立地といえる。
  2. ただし今回の発表で目立つのは海軍関係の基地が入っていないことだ。この地域の海洋安全保障上の課題で中心となる不安定さは空軍だけでは根本原因を解決できない。海軍のプレゼンスがどうしても必要だ。ではスービック他がどうしてリストにに入っていないのか。
  3. まずスービックは1991年の米軍撤退後は経済輸出地帯に変換されており、工業地帯として民間産業用に利用されている。2015年中頃にやっとフィリピン国防省が輸出地帯公社から認可を受けて15年間の期限付きで旧海軍基地部分の利用が可能となった。
  4. そうなると基地再整備はまだこれからとなり、第七艦隊艦船の受け入れは拡張工事が完了してから可能となる。ベニグノ・アキノ大統領は今年夏に退陣し、整備事業の決定は次期政権に任される。
  5. 5月予定の大統領選挙の結果次第で事態は複雑になる。有力候補の一部には親中国姿勢を示すものもあり、米国務省、国防総省の政策立案部門は動向を注視している。■


1 件のコメント:

Hikaru Matsuda さんのコメント...

翻訳記事楽しませてもらっています。すみません、ミスプリ指摘です。
6.この違いの意味は大きい。・・・中国の驚異だ。>>>中国の脅威だ。
スペースライブラリ 松田