スキップしてメイン コンテンツに移動

USSフィッツジェラルドの現況と今後の修理見通し


本件、マスコミは米海軍に非があるとなんとか印象操作したいようですが、海軍はまず艦の修理が可能なのか、同予算を確保するのかと技術的な対応が進んでいるようです。JAG海軍法務部による審判がどんな結論を出すかも注目されますが、長期戦になりそうですね。

 Navy struggles with approach to fix crippled destroyer Fitzgerald, as investigation continues

損傷受けた駆逐艦フィッツジェラルドの修理方法検討に集中する米海軍、他方で調査も進む
By: David B. Larter, June 30, 2017 (Photo Credit: MC1 Peter Burghart)

WASHINGTON — 日本沖合で衝突事故に遭遇した米海軍駆逐艦フィッツジェラルドは乗員7名を喪失し、艦体にはトレーラートラックが入るほどの穴が開いた。同艦の復帰作業は並大抵ではない。
フィッツジェラルドの損傷の現況
  1. ACXクリスタルのバルバスバウにより艦の喫水線下には12x17フィート大の穴があき、三区画が急速浸水した。乗組員に脱出の余裕は1分程度しかなく浸水で眠りを覚まされた者もあった。
  2. 同艦に衝突警報音を作動させた形跡がないが、鳴らしていれば衝突前に乗組員を起こすことができていたかもしれない。ただし詳細は海軍による調査を待つしかない。
  3. 衝突で艦橋と右舷SPY-1レーダーアレイが大きく損傷し、主機関室と通信装備室が浸水し、損害額は数百万ドル相当と言われる。
  4. 事故原因の追及とは別に海軍は複雑な技術課題に取り組む必要がある。つまり損傷した同艦を浸水からどう守るのか。損傷の正確な評価から修理可能なのか判断し、どこで修理するかを決める必要がある。
  5. 海軍技術陣が浸水箇所の排水はほぼ完了し、艦体の穴に継ぎをあてる作業中と第七艦隊広報官クレイ・ドスが伝えてきた。
  6. 「USSフィッツジェラルドは来月にも横須賀海軍施設内の乾ドックに入れ修理する。弾薬類は6月25日に撤去ずみ。さらに排水、燃料除去さらに応急措置として艦体に継ぎをあてる準備中。ドック内で技術評価を開始の後米本土で本格修理を行う」
  7. 当初から海軍は同艦修理に前向きで、事故直後に第七艦隊司令官ジョセフ・オーコイン中将も報道陣に修理は長期化するとの見通しを語っている。「一年未満で済めばいいほうだろう。USSフィッツジェラルドは必ず復帰します」
どこでどう修理するのか  
  1. 第一段階は艦を安定させ海から出すことだ。この工程は7月6日から8日に完了すると海軍は見ている。その後艦体の完全調査を行う。
  2. 衝突時に艦橋構造にゆがみが入り、SPY-1レーダーのアライメント問題が発生しているとの懸念がある。補正修理に巨額費用が掛かる可能性があるが評価はまだ未完了だ。
  3. 艦を海から出すだけでも相当の作業だと1988年に蝕雷したフリゲート艦サミュエル・B・ロバーツのゴ―ダン・ヴァン・フック退役大佐が述べている。「そもそも乾ドック入りの予定が各艦で決まっています。艦を支えるべくキール下に置くブロックを準備します。ただ艦体に損傷があったり穴があれば艦設計で想定外の応力荷重が発生し、うまく扱わないとキールが曲がったり、外板が損傷することがあるのです」
  4. つまりフィッツジェラルドの乾ドック入り予定を変更し損傷を受けた艦体を考慮する必要があるということだ。初期調査では同艦のキールは大丈夫と見られているが、キールが損傷すれば別途巨額費用が発生する。フリゲート艦ロバーツの場合はキールが折れていたが、海軍は大修理を実施している。
  5. 修理費用は補正予算から確保するだろうとロバート・ナッター退役大将は見ている。ナッターは駆逐艦コールがイエメン入港時に襲撃され修理が必要となった際の艦隊司令官だった。「海軍が予算を確保するとすれば海外緊急作戦用予算が妥当だろう」
  6. 海軍がコール修理に2.5億ドルを必要とした当時は補正予算をあてにした。ジョン・ワーナー上院議員(当時)(共、ヴァージニア)が法案を作り海軍に修理費用を確保させたとナッターは回想する。
  7. 乾ドック内で海軍は艦体を入念に調査し、修理費用を積算する。コールでは2.5億ドルでF-35ほぼ2.5機と同額の費用がかかった。
  8. フィッツを超重量級運搬船で本国回送するのが可能性が高いと語るのはブライアン・クラーク元潜水艦勤務士官で現在は戦略予算評価センターの研究員だ。「海外で修理は不可能でしょう。現時点では自力で本国へ回送して修理できるか大型船で運搬すべきかを判断しようとするはずです。その結果、民間造船所で長期にわたる修理がはじまるはずです」
  9. クラークはジェネラルダイナミクスのNASSCOサンディエゴが修理場所として最適と見ている。
  10. コールの場合は建造場所のインガルス造船(ミシシッピ州パスカグーラ)に大型運搬船ブルー・マーリンにより回航された。インガルスはコールの損傷部分を切断し区画を新造し艦に戻した。2002年の広報資料によると鋼鉄550トン分と主機関二基を交換している。
フィッツジェラルドの乗組員は今どうなっているのか
  1. フィッツジェラルドの乗組員は徐々に通常勤務に戻りつつあると第七艦隊広報官ドスは述べている。
  2. 「乗組員は通常勤務にゆっくりと戻っており、当直ほか乾ドック入りに備えている。技術科は燃料除去に取り組んでいる。基地施設全体がフィッツジェラルド乗組員および家族の支援にあたっており、通常勤務復帰は癒しの重要な過程であることを強調しておく」■

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...