本件、マスコミは米海軍に非があるとなんとか印象操作したいようですが、海軍はまず艦の修理が可能なのか、同予算を確保するのかと技術的な対応が進んでいるようです。JAG海軍法務部による審判がどんな結論を出すかも注目されますが、長期戦になりそうですね。
Navy struggles with approach to fix crippled destroyer Fitzgerald, as investigation continues
損傷受けた駆逐艦フィッツジェラルドの修理方法検討に集中する米海軍、他方で調査も進む
WASHINGTON — 日本沖合で衝突事故に遭遇した米海軍駆逐艦フィッツジェラルドは乗員7名を喪失し、艦体にはトレーラートラックが入るほどの穴が開いた。同艦の復帰作業は並大抵ではない。
フィッツジェラルドの損傷の現況
- ACXクリスタルのバルバスバウにより艦の喫水線下には12x17フィート大の穴があき、三区画が急速浸水した。乗組員に脱出の余裕は1分程度しかなく浸水で眠りを覚まされた者もあった。
- 同艦に衝突警報音を作動させた形跡がないが、鳴らしていれば衝突前に乗組員を起こすことができていたかもしれない。ただし詳細は海軍による調査を待つしかない。
- 衝突で艦橋と右舷SPY-1レーダーアレイが大きく損傷し、主機関室と通信装備室が浸水し、損害額は数百万ドル相当と言われる。
- 事故原因の追及とは別に海軍は複雑な技術課題に取り組む必要がある。つまり損傷した同艦を浸水からどう守るのか。損傷の正確な評価から修理可能なのか判断し、どこで修理するかを決める必要がある。
- 海軍技術陣が浸水箇所の排水はほぼ完了し、艦体の穴に継ぎをあてる作業中と第七艦隊広報官クレイ・ドスが伝えてきた。
- 「USSフィッツジェラルドは来月にも横須賀海軍施設内の乾ドックに入れ修理する。弾薬類は6月25日に撤去ずみ。さらに排水、燃料除去さらに応急措置として艦体に継ぎをあてる準備中。ドック内で技術評価を開始の後米本土で本格修理を行う」
- 当初から海軍は同艦修理に前向きで、事故直後に第七艦隊司令官ジョセフ・オーコイン中将も報道陣に修理は長期化するとの見通しを語っている。「一年未満で済めばいいほうだろう。USSフィッツジェラルドは必ず復帰します」
どこでどう修理するのか
- 第一段階は艦を安定させ海から出すことだ。この工程は7月6日から8日に完了すると海軍は見ている。その後艦体の完全調査を行う。
- 衝突時に艦橋構造にゆがみが入り、SPY-1レーダーのアライメント問題が発生しているとの懸念がある。補正修理に巨額費用が掛かる可能性があるが評価はまだ未完了だ。
- 艦を海から出すだけでも相当の作業だと1988年に蝕雷したフリゲート艦サミュエル・B・ロバーツのゴ―ダン・ヴァン・フック退役大佐が述べている。「そもそも乾ドック入りの予定が各艦で決まっています。艦を支えるべくキール下に置くブロックを準備します。ただ艦体に損傷があったり穴があれば艦設計で想定外の応力荷重が発生し、うまく扱わないとキールが曲がったり、外板が損傷することがあるのです」
- つまりフィッツジェラルドの乾ドック入り予定を変更し損傷を受けた艦体を考慮する必要があるということだ。初期調査では同艦のキールは大丈夫と見られているが、キールが損傷すれば別途巨額費用が発生する。フリゲート艦ロバーツの場合はキールが折れていたが、海軍は大修理を実施している。
- 修理費用は補正予算から確保するだろうとロバート・ナッター退役大将は見ている。ナッターは駆逐艦コールがイエメン入港時に襲撃され修理が必要となった際の艦隊司令官だった。「海軍が予算を確保するとすれば海外緊急作戦用予算が妥当だろう」
- 海軍がコール修理に2.5億ドルを必要とした当時は補正予算をあてにした。ジョン・ワーナー上院議員(当時)(共、ヴァージニア)が法案を作り海軍に修理費用を確保させたとナッターは回想する。
- 乾ドック内で海軍は艦体を入念に調査し、修理費用を積算する。コールでは2.5億ドルでF-35ほぼ2.5機と同額の費用がかかった。
- フィッツを超重量級運搬船で本国回送するのが可能性が高いと語るのはブライアン・クラーク元潜水艦勤務士官で現在は戦略予算評価センターの研究員だ。「海外で修理は不可能でしょう。現時点では自力で本国へ回送して修理できるか大型船で運搬すべきかを判断しようとするはずです。その結果、民間造船所で長期にわたる修理がはじまるはずです」
- クラークはジェネラルダイナミクスのNASSCOサンディエゴが修理場所として最適と見ている。
- コールの場合は建造場所のインガルス造船(ミシシッピ州パスカグーラ)に大型運搬船ブルー・マーリンにより回航された。インガルスはコールの損傷部分を切断し区画を新造し艦に戻した。2002年の広報資料によると鋼鉄550トン分と主機関二基を交換している。
フィッツジェラルドの乗組員は今どうなっているのか
- フィッツジェラルドの乗組員は徐々に通常勤務に戻りつつあると第七艦隊広報官ドスは述べている。
- 「乗組員は通常勤務にゆっくりと戻っており、当直ほか乾ドック入りに備えている。技術科は燃料除去に取り組んでいる。基地施設全体がフィッツジェラルド乗組員および家族の支援にあたっており、通常勤務復帰は癒しの重要な過程であることを強調しておく」■
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