We Ran a Simulated ICBM Attack on the United States to Find Out: Could We Stop One?
米本土へのICBM攻撃シミュレーションを視察して:攻撃阻止は可能なのか
By Tom Demerly
- ノースロップ・グラマン社の弾道ミサイル防衛技術実証の実情を見る機会を得た。
- 将来のいつか、外交手段で解決できなくなったとの想定だ。米海軍艦船が某敵対国家の潜水艦と衝突した。米空軍偵察監視機材が国際空域ぎりぎりの地点で攻撃を受ける。ならず者国家は弾道ミサイルテストを続ける。
- 宇宙軍団の監視衛星がミサイル発射を探知したのは現地時間0234時、標準時1734GMT、サンフランシスコは日曜日午前10:34のことだった。
- 早期警戒監視の画面が無音で赤く点滅する。赤い円弧が囲む。速度、高度などデータが自動表示される。海上配備レーダーから情報が入る。もっと多くのデータが利用可能となる。軌道、加速度、最高高度、再突入地点、大気圏内減速が判明する。そこからミサイルの推定命中地点を割り出す。
ミサイル発射の瞬間 (credit: Northrop Grumman)
- 記者は椅子に座りICBMが米本土西海岸に向かう様子を見ていた。ミサイルは最高地点に達し、攻撃の最終段階に入る。変化が早い。見ていて汗が出た。実にリアルだ。ミサイルが目標に向かい高度を下げると減速するが、それでも相当の高速だ。
- 米本土がならず者国家が発射したICBMの攻撃下にある。米本土が攻撃を受けるのは第二次大戦後初の事態となる。迎撃戦が始まった。
- 情報機関の分析官は脅威の推定損害規模は中程度だとわかっているが、なすすべがない。弾頭は小さいようで、現在の標準から見て粗削りだ。機能しないかもしれない。誘導システムは精密ではないかもしれない。弾頭が太平洋上に落ちる、あるいはカリフォーニア州の山脈部分に落下するかもしれないし、サンフランシスコのマーケットストリートと六番街の金融地区交差点上空で爆発するかもしれない。放射性物質が市内に拡散するかは爆発高度により変わる。あるいは不発かもしれない。
- だがそれが今回の攻撃の主要ポイントではない。大事なのはならず者国家が米政府に意思を明確に伝えていることだ。そちらに到達できるぞ。攻撃の意思があるぞ。もはや安全ではないぞ。
- 本誌The Aviationistはノースロップグラマン社の厳重な保安体制施設で米本土の弾道ミサイル防衛の現状と将来の姿を知る機会を得た。そこで見たのはアジア大陸の某所から打ち上げられたICBMを迎撃するという背筋の凍る思いの演習だった。(編集部注 ノースロップ・グラマン社要請で敵性国家の国名を具体的に示さないことで了承した。
- ノースロップ・グラマンのケン・トドロフ(グローバル防空ミサイル防衛部長)が本誌に語った。「これは文字通りロケット科学の世界です」
- トドロフはICBM発射シミュレーションを統括し、ノースロップ・グラマン製造の弾道ミサイル防衛システムズを使った。同社の地上配備中間軌道防衛(GMD)システムへ新規技術が投入されている。一部はまだ運用が始まっていないが、ICBM防衛には不可欠の技術要素だ。脅威を与えるならず者国家が太平洋地区の国だとすればノースロップ・グラマンの新技術は単に重要だけでなく本国防衛に不可欠だ。
- GMDのような装備がなければわが西海岸は歴史上はじめてICBM核攻撃にさらされる。
- 各種センサーからのデータが洪水のように入り、ICBMの追尾状況がわかる。部屋全体ほどの幅がある大型画面でミサイルを追尾する。個別画面でも同じ状況がわかる。不気味なほど静かだ。
ICBMによる米西海岸攻撃シミュレーションの画面 (credit: TheAviationist.)
- 「地上配備迎撃ミサイル発射。アラスカ、フォート・グリーリーから」とシステム操作員が告げる。上昇中の迎撃ミサイルの軌跡が画面に現れる。弧を描き加速しているのがわかり、飛来するICBMの降下軌道に重なっていく。
- 「地上配備迎撃ミサイル発射、カリフォーニア、ヴァンデンバーグ空軍基地」と二番目の軌跡が画面に現れた。米西海岸からの発射だ。米ミサイル二発が今空中にあり、ノースロップ・グラマンの新技術により迎撃データと標的情報が混合され中間段階での迎撃データを出していく。
- いろいろな線が音もなく合流し明るい照明の「Y」字形が画面にあらわれる。別の画面ではICBMが下降に入る弧を描き、迎撃ミサイルも弧を作り迎撃に向かう。
- 「大気圏外で弾丸に命中させるようなものです」とトドロフが説明する。ミサイル三本の軌跡が巨大画面で合流する。今命中させようとしている発射体は時速1万マイルだが大きさはゴミ箱くらいだ。
- ICBMの飛翔には四段階ある。発射打ち上げ段階が迎撃上で一番難しいが、発射地点を探知できる。上昇段階はイージス戦闘システムで探知されやすくRIM-156やRIM-174スタンダードミサイルを艦船あるいは地上施設から発射して対応する。三番目が「中間段階」でICBMを大気圏外でTHAADミサイルあるいは現在開発中の別装備で迎撃する。
- 目の前の巨大ディスプレイでいろいろな線が合流してきた。
- 太平洋東側のカリフォーニア州上空の大きな「Y」字がはっきりしてきた。音はまったくなく、三本のミサイルを示す記号が消える。迎撃が成功した。ノースロップ・グラマンの新技術を使って太平洋上空でICBMを破壊し、米本土は無傷だった。
ミサイル発射シミュレーションでICBMの追尾の詳細画面 (credit: The Aviationist)
- その後、地上配備中間軌道迎撃(GMD)による2017年5月30日の弾道ミサイル迎撃実証実験の成功例の実際の映像を観た。地上配備迎撃ミサイルはヴァンデンバーグ空軍基地(カリフォーニア)から発射され、「対ミサイル」ミサイルは大気圏外命中発射体が搭載されていた。迎撃に成功し、模擬ICBM(太平洋ケジェリン礁から発射)を破壊した。再突入段階の高高度で直撃した。この実証は弾道ミサイル防衛システムの成功例とされている。
- ノースロップ・グラマンのミサイル防衛体制への貢献度は大きい。2017年初めにケン・トドロフは報道陣に「議会各位には脅威が増大する中で本土防衛を実現する難題がのしかかっている。国防予算が減少気味の現在、本土を現実の脅威、増大する脅威から守る手段となる『槍先』の整備に最高優先度をつけるのが重要ではないでしょうか」と述べていた。
- 現実の見出しから太平洋地区から発射されるICBM脅威は現実になったのがわかる。ミサイル防衛体制の整備は米国の最優先課題と言ってよい。■
Note: The Aviationist.com wishes to thank Lauren A. Green, Manager, Branding and External Communications for Northrop Grumman Mission Systems and the entire team at Northrop Grumman for their kind assistance with this article.
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