北朝鮮全土を衛星監視しているとは思えなかったのですが、三分の一未満というのはショックですね。全土カバーにざっと50基の衛星が必要ということなので北朝鮮上空を周回中の米衛星は15-16基なのでしょうか。日本の情報収集衛星はじゃあ何をしているのかまったくわかりません。北朝鮮でさえこの状況なら中国が移動式ミサイルを整備したらお手上げですね。これを補うため超高高度にとどまる無人太陽光飛行船多数を運航するのはどうでしょうか。
Graphic: Capella Space
Tiny Satellites From Silicon Valley May Help Track North Korea Missiles
シリコンヴァレー企業の小型衛星で北朝鮮ミサイルの居場所を探知
- 北朝鮮が初の大陸間弾道ミサイルを発射したが、ペンタゴンおよび情報機関は数年間前から警告していた。スパイ衛星で監視していたが北朝鮮の進展ぶりが速いだけでなく、監視対象が局所的過ぎ米国は今回のミサイル発射準備を探知できなかった。
- このため米早期警戒体制の補強策が緊急かつ迅速に求められている。発射前に攻撃する能力が同時に必要だ。最も興味を惹かれるのがシリコンヴァレー発の解決策の採用でオバマ政権時代に小型かつ安価な民生衛星を導入し標的場所の駐車場にある自動車の数を把握したり作物の生育具合を監視していた。
- ペンタゴンで高度の機密性を有する数十億ドル単位の衛星を多用してきた向きはこの新しい動きに抵抗あがる。だが北朝鮮ミサイル開発がここまで進み、ついに小型衛星群を打ち上げる野心的な構想の計画を立てるに至った。
- 衛星多数を同時に打ち上げるが、軌道に留まるのは一年せいぜい二年で新しい軍事緊急対応策「キルチェーン」実行に必要な対象地を監視させる。開戦やむなしとなれば先制攻撃する新戦略の一環として衛星画像で北朝鮮の発射地点、核施設、核製造施設を識別する。
- 数分でも事前警告が出せれば在韓米国人数万人、数百万人の韓国、日本国民の生命を救えるかもしれない。
- 「金正恩はミサイル実戦能力の整備に突き進んでいる」とロバート・カーディロ国家地球空間情報局長官が述べている。同局は衛星による地図作成を統括する機能があり、長官は北朝鮮のICBM発射前に述べていた。「向こうの加速化に対しこちらも加速している」
- 衛星の軌道上運用予定を国防関係者が口にすることはないが事は緊急だ。先週火曜日の北朝鮮ミサイル発射はPang Hyon航空機工場の新規地点から移動式発射台で行われた。ペンタゴン報道官ジェフ・ディヴィス大佐はミサイルは「従来の型と全く違う」と述べた。
- 移動式だと夜間悪天候でも有効なレーダーセンサーで探知をめざす衛星でも難題だ。スパイ衛星の監視範囲は北朝鮮全土の三分の一に満たない。
- 米情報機関は今回のミサイル発射の兆候を数日前に探知していたと国防情報局広報官ウィリアム・マークス中佐は述べる。とはいえペンタゴンは誤った評価をしていた。米太平洋軍は中距離弾道ミサイルと発表していた。数時間後にレックス・ティラーソン国務長官から北朝鮮が発射したのは大陸間弾道ミサイルでアラスカまで到達可能と発表した。
- トランプ政権は民生用レーダーで北朝鮮の脅威に対応しようとしている。前政権から秘密工作も継承し、北のミサイル発射を妨害しようとしているが、効果は一定せずかつ間にあわないことが多い。
- ICBMテストの翌日に米韓両国が行ったミサイルテストが新戦略の一部のようだ。ミサイル発射は北朝鮮指導部が暮らす平壌攻撃を想定している。
- キルチェーンは先週の米韓共同声明文にも出ており、韓国新大統領文在寅には方向転換となる。これまで文は先制攻撃構想の検討を禁じており、金正恩執行部を除去する米韓勢力の動きの脅迫観念に取りつかれた北朝鮮を資するだけだとしていた。
- 文大統領は南北直接対話の復活を公言し、以前の政権で本人が首席補佐官時代に名付けたいわゆる太陽政策に言及していた。
- だがトランプ大統領は圧力をかけるため艦船を集結させ、制裁強化やミサイル防衛体制整備に動いた。北が六回目の核実験または米本土到達可能なミサイルの発射に踏み切れば軍事行動のオプションも加わる。
- 「脅威は極めて切迫している」とH.R.マクマスター安全保障担当大統領補佐官は新アメリカ安全保障センター主催の会合で発言。「そのため今までと同じ対応はできない。以前失敗した方法はくりかえせない」
- そこで衛星では民生技術の活用をめざす。カリフォーニアのグーグル本社を望む国防総省のビルにオフィスを構えるラジ・シャーは国防イノベーション実験部門DIUxの長で民生小型レーダー衛星技術に広く投資中で、今年末または2018年初めにはペンタゴンが利用できるとみている。
- 「大変難易度の高い挑戦です」とシャーは語る。イラクでF-16のパイロットだったシャーはシリコンバレーでの経験をアシュトン・カーター国防長官(当時)に売り込み、カリフォーニア事務所に抜擢されたのだ。「利用できる技術を軍用に改修するのがカギです」
- シャーの部隊はシリコンヴァレーの新興企業カペラスペースCapella Spaceに投資しており、今年末にレーダー衛星一号を打ち上げる予定だ。衛星多数を打ち上げれば対象地を毎時監視できると同社は述べている。
- 「衛星の大きさはバックパック程度です」と同社創設者パヤム・バナザデは語る。イランで生まれ、テキサス大とNASAジェット推進研究所で衛星設計を学び、ミニチュア化が得意だ。軌道上でアンテナと太陽光パネルを伸長する。
- 衛星の構成部品は「すべて小型化しています」とし、「次世代の衛星はもっと小さくなります」という。
- 国家地球空間情報局もペンタゴンの例を見てシリコンヴァレーの中心地サンホセに連絡事務所を開き、衛星レーダーデータ技術を有する企業の取り込みを狙う。
- 政府関係者が北朝鮮の衛星監視偵察機能の不足を認めるのはまれなことだが、ウィリアム・J・ペリー元国防長官がこう発言している。もし北が米国あるいは同盟国を狙いミサイルをくり出してきても「探知できない可能性が高い」
- 更に状況を悪くしているのは北朝鮮が固体燃料の利用を昨年から始めたことだ。液体燃料方式のミサイルは燃料充填に数時間から数日かかるが、固体燃料ミサイルは事前警告無しで発射できる。
- 打ち上げ準備作業の探知を雲の有無、天候状況に関係なく行い、ミサイル等の軍事装備の移動状況を監視するカギは衛星を常時待機させることだ。宇宙空間にレーダーを配備すると巨額の費用が必要であった。巨大アンテナと大出力の電力も必要だった。
- 2007年の議会予算局試算ではレーダー衛星21基を軌道配備すると940億ドルとしていた。一基あたり40億ドルになる。この試算が出たのは北が初の核実験を実施した直後でミサイルや移動発射台の追跡が衛星で可能なのかに話題が集まり、衛星35基から50基があれば偵察が迅速に行えるとしていた。
- 新世代の小型かつ安価な衛星ならその目標が実現しやすくなる。カペラはレーダー衛星の今年末の初打ち上げに続き36基を軌道に乗せる予定で議会調査報告の方向に沿う。
- カペラ以外の民間企業も新世代レーダー衛星の打ち上げを狙い、アーサスペースシステムズUrsa Space Systems(ニューヨーク州イサカ)、アースキャストUrtheCast(カナダ、ヴァンクーヴァー)、イセエIceye(フィンランド)がある。各社ともシリコンヴァレーと強いつながりがある。
- 国家地球空間情報庁の民生技術利用事業ではカナダ、イタリア、ドイツからレーダー衛星を購入し民生新型技術の評価を目指す。
- カーディロ長官は新規民間企業との連携で北のミサイル等の監視能力不足を埋めることを期待している。「新規企業でも古手企業でも不足分を埋められるならそれで十分だ」■
Eric Schmitt contributed reporting from Washington.
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