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中国に愛想をつかしてきたトランプ大統領の次の手は?


習近平が訪米で示した対応力・応用力のなさは驚くべきで、内弁慶タイプの指導者かと思ったほどでしたが、北朝鮮を巡り各方面の国内要素をはかりにかけて身動きが取れなくなっているのか、一度は約束しても最初から実施するつもりはないという確信犯なのでしょう。トランプ大統領もビジネス経験から中国人との付き合い方は体得しているはず。今後は現実を重視したアプローチに双方が収れんしていくでしょう。

 

Trump Cools on China 中国に冷静になってきたトランプ

The Trump administration is losing patience with Beijing and adopting a tougher policy. トランプ政権は北京に忍耐を失い、強硬政策をとりつつある
U.S. President Donald Trump welcomes Chinese President Xi Jinping at Mar-a-Lago state in Palm Beach, Florida, U.S., April 6, 2017.
The National Interest June 30, 2017


  1. トランプ政権が中国に忍耐心を失いつつある。先週は鉄鋼製品へ関税適用をちらつかせ北京へ衝突姿勢を示した。当初の対中国姿勢と真逆で、中国をパートナーととらえ北朝鮮問題の解決をめざすアプローチは過去のものとなった。
  2. 大統領選中のトランプは中国に厳しい姿勢だった。2016年5月のインディアナ州選挙集会では対中貿易赤字に触れ「このまま中国に勝手にさせておけない」と述べている。選挙運動中のトランプは当選の暁には中国を出し抜くと述べていた。「抜け目なく立ち回れば中国に勝てるはず」と2015年7月にサウスカロライナで述べていた。
  3. 大統領に就任するとトランプは北京と対立するより協調を優先した観があった。4月初めの習近平主席との会談後、トランプは北朝鮮問題、貿易問題共に一緒に解決できると楽観視していた。前向きな言葉と裏腹に選挙運動中の厳しい提言は棚に上げて、中国との協調関係作りを優先した。中国を通貨操作国と批判せずに北朝鮮問題で同国の支持取り付けを優先した。
  4. 北朝鮮問題解決を中国に期待すること自体が大きな賭けだ。中国は北朝鮮に実効力のある圧力をかけることに乗り気ではない。なぜなら北朝鮮現政権の存続に中国にとって戦略的な意味があるためだ。エリック・ゴメス(ケイト―研究所の国防外交政策専門家)は「北朝鮮はちょうどよい緩衝国として在韓米軍と中国国境の間に位置している」と述べている。安全保障上の関心から中国は北朝鮮の崩壊はおろか不安定化につながる動きをとりたくないのだ。
  5. さらにこれが正しくないとしても中国にはトランプが期待するような北朝鮮への影響力は実は有していない。ゴメスは「中国が金正恩を平和裏に米国の望む方向へ導く力があると信じるのは現実とかい離しすぎの見方だ」 2013年の金正恩の叔父で北京寄りの張成沢処刑は北朝鮮が最大の後援国に堂々と反抗する史背の表れに他ならない。中国は強い圧力をかけると裏目に出ると見ているのではないか。つまり北朝鮮が完全に制御不能になると中国は計算しているのだ。
  6. トランプ政権が望む形では中国が北朝鮮を扱えないと露呈すると、大統領は中国への失望を隠せなくなった。オットー・ウォーンビアの死亡を受けてトランプは中国の北朝鮮問題への支援ぶりについてツイッターに6月20日投稿している。翌日、レックス・ティラーソン国務長官も大統領に同じ感想を述べ、報道陣に中国は「外交的責任がありこれ以上のエスカレーションを回避したいのなら北朝鮮に経済外交上の圧力をもっとかけるべき」と報道陣に語っている。
  7. トランプ政権は非難と別に中国の神経を逆なですること疑いの余地のない手段も実施に移している。昨日財務省から中国企業一社、中国人二名が北朝鮮とつながりがあるとして制裁措置を適用した。さらに財務省の金融犯罪対応ネットワークが北朝鮮の外貨獲得を助けたとして中国の銀行一行に罰金を科すと述べた。直前に国務省から中国の人身売買取締まりが実効性を上げていないとし、中国が北朝鮮労働力を利用していることを決定の大きな背景とした。
  8. 現政権も前政権と同じく中国の域内ライバルと関係強化を狙っている。トランプのインド首相ナレンドラ・モディとの首脳会談の前に政権チームはMQ-9Bガーディアン無人機22機の売却を承認し、インド洋上の中国の動きを監視させるねらいがある。また中国を怒らせているのがトランプ政権による台湾への総額14億ドル武器売却だ。
  9. ただしトランプの地政学的な動きは武器販売にとどまっていない。モディ首相との共同記者会見でトランプはマラバール海軍演習に米国が日本とインドに加わると述べ、ティラーソン国務長官と同様に戦略的忍耐の段階は終わったと公言した。オーストラリア国立大の国家安全保障研究部門の主任研究員ディヴィッド・ブリュースターは同上海軍演習は「三カ国間の協調体制が強まり重要であることの実際的かつ象徴的な存在」だが「封じ込めをねらう演習」ではないと強調し、中国がこれ以上「ルールに基づく秩序を傷つけようとすればするほど三国の結束を強めるだけ」と警句を述べている。
  10. だが同時にトランプは中国との協調の可能性を放棄していない。楊潔チ国務委員との6月22日会合でトランプ大統領は一帯一路構想で中国への協力への関心を表明している。対中姿勢をがらりと変更した前歴のあるトランプが再度姿勢を変えてもおかしくない。ただし今のところ、新しい政策アプローチは明確な主張にとどまらず実際にトランプ政権が実行に移しているのはあきらかだ。■
Dimitri A. Simes is a reporter-intern at the National Interest.
Image: U.S. President Donald Trump welcomes Chinese President Xi Jinping at Mar-a-Lago state in Palm Beach, Florida, U.S., April 6, 2017. REUTERS/Carlos Barria.


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