ポケット戦艦というとナチ・ドイツみたいですが、軍縮条約の裏をかいたが結局戦艦でも巡洋艦でもない中途半端なグラフ・シュペー等と違いズムワルト級は思い切りミサイル重装備艦にするという発想なので意味が違います。とはいえミサイル重装備構想はソ連がすでに実現していましたね。空の重武装機構想とならぶ攻撃力重視の発想ですね。
The U.S. Navy's Stealthy Zumwalt Class Destoyer: America’s New 'Pocket' Battleships? 米海軍のステルス艦ズムワルト級駆逐艦はアメリカ版「ポケット戦艦」になる
July 30, 2017
- 三隻しかないズムワルト級駆逐艦をどうしたものか。当初30隻近くの建造予定で兵装もその想定で調達したが建造遅延、隻数削減、費用上昇にあった。このまま持て余し装備の代表になりそうなところ、同級を新任務のステルス敵艦キラーにしたら威力を発揮できるだろうか。
- ズムワルト級駆逐艦は32隻整備し精密誘導砲弾で内陸部を攻撃する構想だった。海兵隊揚陸作戦支援も念頭にアイオワ級戦艦の退役で空白となった大口径火砲の代わりを期待した。.
- 残念ながら費用超過および技術問題のためペンタゴンはわずか三隻建造にとどめた。もっと悪いのは長距離攻撃砲弾があまりにも高額になり海軍が購入できなくなったことで、さらに揚陸作戦支援に投入できるのは一隻に限られ同級の存在意義が疑問視されていた。
- 一方で中国人民解放軍海軍PLANの伸長が著しい。2000年当時のPLANは戦力として認識されていなかったが、ズムワルト級はこのころ開発中だった。今日ではペンタゴンはPLANを「アジア最大の海軍力で水上艦、潜水艦、揚陸艦、警戒艇含め300隻以上ある」と見ている。現時点で米中両国は直接対立していないが、中国が南シナ海東シナ海で好戦的態度を強める中、両国が軍事衝突する可能性も増えている。同様にロシアもバルト海、地中海、太平洋で海軍活動を強化している。
- ステルス性を備えたズムワルト級はレーダー上で漁船程度にしか映らず、敵海域での活動が可能だ。ミサイル多数を搭載したズムワルト級は対艦攻撃任務にうってつけだ。単独行動しても米海軍の戦闘ネットワークに接続したまま敵部隊を追尾し撃滅する。
- そこで艦首の155mm高性能主砲システムを撤去しMk.41垂直発射システムへ換装し長距離対艦ミサイル(LRASM)を搭載する。主砲の場所に発射管200本が収まるとオハイオ級誘導ミサイル潜水艦を上回る威力が実現する。ステルス艦にステルス対艦ミサイルを搭載し人工知能で誘導すれば相当の戦力だ。あるいは戦術トマホーク200本で対地攻撃にも投入できる。
- 対艦攻撃に徹するズムワルトは単独行動をとるはずだ。護衛艦艇は敵に探知されてしまうからだ。AN/SPY-3多機能レーダーとSM-2・ESSM各ミサイルの組み合わせで自艦防御は十分だ。搭載済みのMk.57発射管80基に防御装備としてスタンダードミサイルSM-2を中距離防空用、ESSM(発展型シースパロウミサイル)を近接防御に使い分ける。新型SM-6がMk.57におさまれば予備の対艦ミサイルとして運用できる。
- とはいえ攻撃任務につくズムワルトに護衛が不要ではない。お気づきのようにズムワルトには対潜装備がない。空母打撃群と同様に原子力攻撃潜水艦一隻ないし二隻がズムワルトを護衛し水中脅威を警戒するだろう。潜水艦が敵部隊に陽動攻撃を加えたり、先行して状況を偵察するだろう。
- ズムワルトがハンターキラー艦として成功できるかは海軍の他装備とネットワークで結んだ運航ができるかにかかる。敵目標の補足情報を衛星、MQ-4トライトン高高度長時間無人偵察機、P-8ポセイドン、空母艦載機、水上艦、潜水艦から受け取る。ズムワルトは敵任務部隊の位置を把握し自艦レーダーを作動させず待ち伏せ攻撃をかける。ネットワークがあってこそズムワルトの機能が発揮され、危険な敵脅威の裏をかけるはずだ。
- アメリカ版ポケット戦艦とでもいうべき存在となり、大洋で単独行動で敵に対峙させれば危険がともなう。だがこれだけの火力を集中運用する構想には訴求力があり、同艦のステルス性能、高水準の個艦防御能力へ米国が優位な軍用通信ネットワーク能力が加われば十分な残存性も期待できる。就役ずみ初号艦が数年間ドック入りするが再登場する際には敵艦攻撃に特化した艦になる。敵陣営の艦船建造が進展していることを考えると同艦の任務が不要になる事態は当面考えられない。■
Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.
Image: Flickr / U.S. Navy
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