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F-15EXが初飛行。米空軍向けF-15生産の再開でC/D型の更新へ。さらにE型との交代が取り沙汰され、生産規模は拡大しそう。

 

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VIKING AERO IMAGES

 

 

空軍向け新規製造のボーイングF-15EXイーグル初号機が2021年2月2日初飛行した。同期はF-15史上最高性能機体といわれ、ミズーリ州セントルイスから離陸し、F-15A試作機の初飛行から50周年を祝い「ヴァイキングテイクオフ」を行った。F-15EX取得の動きは2018年7月に The War Zoneが真っ先にお伝えしている。

 

今回はアレックス・ファーウェルによる素晴らしい画像を掲載したのでご覧頂きたい。

 

機体番号20-0001が空軍が取得する一号機で昨年度の調達を示している。ボーイングは230億ドル近くの契約を交付され、新規製造戦闘機を納入する。

 

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F-15EX roars over the runway at Lambert Field before executing a near-vertical climb on its first flight.

 

 

230億ドルは総額で、このうち2020年7月13日に空軍は12億ドルで初回ロット8機取得を明らかにし、議会が2020年度国防予算で承認した。

 

空軍はさらに12機を2021年度予算で要求しており、5カ年で76機を調達するが、最終的に144機とし、F-15C/D型の陳腐化に対応する。空軍が低視認性機材と高性能第4世代機のバランスをはかる中で調達規模が増える可能性もある。非公式ながらF-15Eの後継機としても取り沙汰されている。

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F-15EX serial 20-0001 screams into the vertical. 

 

2020年6月30日に空軍はジェネラル・エレクトリックにF110-GE-219エンジン(数量非公表)で契約交付しており、初期生産のF-15EX用としている。プラットアンドホイットニーもF100-PW-229エンジンを代替策として提示すると見られる。

 

「F-15EXは導入しやすい価格かつ即投入できる機材で老朽化してきたF-15C/D部隊を一新する」と航空戦闘軍団司令のマイク・ホームズ大将が述べている。「F-15EXは配備されれればすぐ戦力となる」

 

ホームズ大将はF-15C/Dを運用中の各基地は「数ヶ月でEX運用可能となる」と述べており、ボーイングも搭乗員、整備員ともに「数日で機種転換できる」としている。

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ただし、第一線部隊への配備前にエグリン空軍基地(フロリダ)できびしい試験過程が待っている。8機が同基地に配備される。このうち、まず2機が2021年度第2四半期に到着する。残る機材も2023年度中に加わる。

 

その後、EXはまずF-15C/D訓練部隊の173戦闘飛行団があるキングスレーフィールド基地(オレゴン)に届けられ、実戦部隊としてはオレゴン州ポートランドの142戦闘飛行団123飛行隊「レッドホークス」が初となる。その後、マサチューセッツ、ルイジアナ、カリフォーニアのF-15C/Dと順次交代する。ただし、各飛行隊にはF-35Aの配備も選択肢として残っている。

 

F-15EXが導入されるとF-15C/Dと比較してどんな変化が空軍に生まれるのだろうか。大きな相違点は機体内部にある。オープンミッションシステムズ(OMS)で最新の航空技術を迅速搭載できる。EXはフライ・バイ・ワイヤ飛行制御、新型電子戦装備、高性能コックピットも搭載しており、このうちF−15QA(カタール向け)で開発した低プロファイルHUDが目立つ。またミッションシステム系も新型とする。

 

F-15C/Dの更新機材以外に空軍はF-15EXの性能向上に大きな余地があることから「航空優勢の確立及び維持」効果に期待している。ひとつが「兵装トラック」として第5世代機を上回る搭載量を実現することで、大型極超音速兵器が開発中だが第5世代機の機内にはおさまらない。

 

またF-15EXがゆくゆくはF-15Eストライクイーグルの後継機になる可能性もある。ただし、この実現は物議をかもしだしそうだ。空軍はこれまで一貫してF-35Aの1,763機調達方針を維持してきたからだ。ただし、F-15EXがF-15Eと同等の装備で納入されることに注目している。レイセオンのAN/APG-82(V)1アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダー、新型高性能ディスプレイコアプロセッサー(ADCP) II、EPAWSS防御装備だ。

 

ボーイングはF-15EXの輸出も提示しており、想定するのはインド空軍の新型戦闘機構想だが、同国の機材選定は多様な選択肢から決定する事が多く、ボーイングもF/A-18E/Fスーパーホーネットも候補で、F-15EXと競合しかねない。

 

米空軍での活用の行方、他国での採用の可能性もあるが、50年前のF-15A初号機からイーグルの新型が姿を表してきたことの意義は大きい。F-15EXの設計寿命は2万時間もあり、今後50年間にわたる供用は確実だろう。■

 


この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください


The Air Force's New F-15EX Eagle Just Took To The Sky For The First Time (Updated)

The flight comes nearly 50 years after the F-15A first flew. This latest Eagle iteration is set to replace the USAF's F-15C/D fleet, and maybe more.

BY THOMAS NEWDICK FEBRUARY 2, 2021


コメント

  1. F-16の記事でもそうだったが旧型機の利点ばかり並べ立てて欠点を意図的に無視してる。
    詰る所、旧型機のコスパが良いのはまともな航空戦力や防空網を持たない相手を一方的にボコれる場合であって、更にその手の任務の大半は安価な無人機で代用可能な事を鑑みれば非ステルス有人機の活動可能圏は今後縮小の一途を辿ると予想される。
    何よりも将来的な中露の正規軍との衝突を想定すれば非ステルス機が損害の山を築く事は想像に難く無く、そうなればステルス機のみで作戦に当たらねばならない空軍の戦略は根底から崩壊しかねない。
    先方のステルス機が敵防空網を粉砕すれば後衛の非ステルス機がその搭載力を生かして~なんてのも想定どおりに事が運ぶ保障は無くステルス機で無ければ生存不可能な環境が維持されれば旧型の非ステルス機は遊兵となってむしろ前線のお荷物と化す。
    適材適所と言えば聞こえはいいが、今後の米軍にそれだけの多種機材を運用出来る余力があるのか、むしろF-16VやF-15EXは空のLCSとなってリソースを食い潰すだけの存在になる可能性が高いと思う。

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    1. 君等はF35の欠点を意図的に無視してるでしょ?計画自体が杜撰で維持費が高騰してるからF15EXが採用された経緯がある訳。コロナ禍でアメリカの財政は更に厳しくなる。そうなったらF35の採用数は削らえて、それが1機辺りのコスト増になって、君等が言ってるコストが安いってF35のメリットを消してしまう可能性が高い。
      性能面で言っても、いつまでステルス戦闘機が通用するか分からない。記事にもあるがF35はペイロードが低いのだから、F15EXがF35の完全上位互換ではないのだ。超音速兵器への対応能力はF35より高いくらいだ。
      私はこの記事はとても客観的に仕上げてあると思うね。
      F35のヤバいトコを無視して礼賛する記事が多い中、カウンター情報を出してることこそ称賛すべきだろう。

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    2. 勝手にF-35の話をしてると思い込んでるようだが私はF-35とは一言も書いてないよ?
      (それと戦闘機を表す時はFの後ろに「-(ハイフン)」入れてね。その書き方だとエンジンの話になるよ)
      まず、F-15EXの採用はT-7の製造が起動に乗るまで仕事の無いボーイングの工場救済に過ぎず、コストの安さも虚偽(旧型機に必須の外装式装備を除外した本体のみのコストで安く見せかけていた)だと向こうで問題になってる。
      それとEXの採用数は最大でも144機だが記事にある230億ドルというのはあくまで契約の上限額であり現時点でその金額で契約したわけではない。
      となれば今後、仮に最大額の230億ドルで契約できたとしても144機全数を買えない可能性が高く、更には現状のF-15が減数していけば残った少数のF-15EXの維持費が高騰する事は目に見えている。
      F-15EXを推す人達はF-35と比べて搭載量が多い事を強調するが、それは今後B-21が担当する事になるので心配はいらない。
      ステルス機が通用しない戦場では非ステルスは尚更通用しないだろう、それともそうはならない根拠がお有りで?
      結局のところ非ステルス機のコストが一見安く見えたとしても投入できる任務が限定される上に今後敵性国家に普及していくであろう敵ステルス機に歯が立たない事が明白な以上は総合的に見て高いものにつく、と判断せざるを得ない。

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    3. >仮に最大額の230億ドルで契約できたとしても144機全数を買えない可能性が高く、更には現状のF-15が減数していけば残った少数のF-15EXの維持費が高騰する事は目に見えている。

      あなたは上記のように指摘するが、F35もそうではないのですか?
      米空軍がついにF35の採用数を1000機に削減して、第4,5世代機に新技術を盛り込んだ機体を採用する。その様に記事になってる。
      原因はここで指摘されて通り、維持費コストの問題が原因だ。
      最大のF35発注数の米空軍がホントにF35の発注数を減らした場合、あなたがF15EXを揶揄して指摘してる通りF35の機体価格と維持費は暴騰してしまうだろう。
      維持費が高いF35をビーストモードにしてステルス性という特性を消してまで、非ステルスでの任務に就けるのなら、F15EXやF16Vの様な第4,5世代機でそれに換えてコスト削減を米空軍は目指すだろう。

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