スキップしてメイン コンテンツに移動

フランスが第3世代SSBN建造に乗り出した。水中核抑止力をなんとしても維持する姿勢。完成すれば2090年までの供用をめざす。

 


Naval Group Image

 

ランス国防相フローレンス・パルリがSNLE 3G計画が正式開発段階に入ったと2月19日発表し、フランスは第3世代の原子力弾道ミサイル潜水艦 (SSBNs)を建造する。

 

式典はノルマンディのヴァル=ド=ルイユで開かれた。ここにフランスで装備調達にあたるDGAが流体力学試験施設を運営している。

 

パルリ国防相は「第3世代SSBNはル・トリオンファン級よりわずかに長く、排水量も微増する。聴音能力を改良し、防御力が向上する。静粛度も高まる。海中の環境音の中と一体化し、運用上の優越性を実現する」と演説した。

 

フランスの2019-2025年の軍事計画法では四隻あるル・トリオンファン級SSBNsの代替艦として第三世代 SSBNs (SNLE 3G)に2035年から交代させるとある。フランスは常時一隻のSSBNを展開し、海洋配備抑止力を引き続き維持する。

 

フランス軍およびDGA (Direction Générale de l’Armement, フランス政府国防装備保調達技術開発庁)がSNLE 3G事業を統括する。産業界とは新型SSBNs4隻の開発、建造の大枠合意をめざす。このうちナバルグループが主契約企業となり、テクニカトムが原子力ボイラーを製造する。

 

第一段階契約は2021年中に交付し、開発研究を2025年までに完了する。

 

フランスの国防産業界200社以上がナバルグループと協同し、艦設計を完成させる。工期30年、100百万時間相当の作業量となり、設計に15百万時間、建造に80百万時間を想定する。

 

ナバルグループの潜水艦建造部門はシェルブールにあり、300名超が設計部門に従事し、建造部門で2千名が働く。シェルブールで艦体を建造し、各システムを搭載し、潜水艦として完成させる。

 

 SNLE 3Gの一部としてDGAはタレスとソナー開発で合意書を締結しており、各種ソナーとともに処理装置の開発を目指す。

 

タレスは新世代艦側部・艦尾曳航式ソナーを完成させる。これは光学技術をもとにした直線的アレイ(ALRO)で、その他として聴音アレイ、反響探知装置、水中通話を実現する。

 

センサー情報の処理に用いるALICIAは分析、探知、識別、分類、統合、警告の略で入手済みデータを活用し、操作員の負担を軽減しながら指揮命令を支援するのが狙いだ。

 

新型ソナーは段階的に性能を向上させ、最初の基本技術ブロックは第2二世代 SSBNs (SNLE 2G)に2025年から搭載される。第3世代 (SNLE 3G) 艦には2035年以降搭載となる。

 

テクニカトムは原子炉の設計、製造、搭載を受け持つ。同社によれば第3世代SSBNの原子炉には50年に及ぶ小型原子炉のノウハウを盛り込み、安全性を担保しながら軍用に必要なエナジーを実現する。SNLE 3G用の原子炉はバラクーダ級原潜の低出力原子炉と今後登場する次期空母 PANGとの中間の位置づけだ。K22と呼ばれる原子炉は高出力を実現する。設計研究は2020年12月8日のエマニュエル・マクロン大統領の決定を受け始まった。

 

SNLE 3Gの艦体設計はSNLE 2G(ル・トリオンファン級)の正常進化形となるようだ。先に登場したル・トリオンフォン級同様に見えるが、流体力学性能は向上し、艦体上を海流がなめらかに流れる。またポンプジェット推進方式を採用する。潜舵をX字形にしシュフラン級SSNとの共通性もあるが、曳航式アレイのため中央部にフィンをつける。想像図を見るとSNLE 3Gの艦体はすべて無音響タイルで覆うようだ。現在供用中のフランスSSBNでも同様のタイルが導入されているが、重要部分のみに装着している。無音響タイルはゴムあるいは合成ポリマー製でアクティブソナーの音波を吸収し、艦から出る音を低減する効果がある。

 

潜水艦に詳しいH.I.サットンによれば、艦首すべてをソナードームにするのは極めて大型の半球ソナーを搭載するためだと言う。魚雷発射管四門はソナードーム後方に配置する。発射管は外側に向け角度をつけているはずで、魚雷発射時に潜航速度に制限がつく。

 

式典会場でフランス海軍の SNLE 3G事業担当者は次期SSBNsは2035年以降の脅威に対抗する想定で、なかでもソナー探知を最も重視しているとNaval Newsに語ってくれた。

 

Naval Group Image

 

数字で見るSNLE 3G 

 

全長: 約150 メートル

排水量 15,000トン (潜航時)

乗組員: 100名程度

兵装:

  • 16x M51 SLBM(名称は M51.4か)

  • 4x 魚雷発射管、 F21大型魚雷および次期巡航対艦ミサイルFCASW を運用か

建造開始 : 2023年

初号艦の海軍引き渡し: 2035年

退役(級全体): 2090年

 

この記事は以下を再構成し、人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください

 

French Start Next-Generation Ballistic Nuclear Missile Submarine Program - USNI News


By: Xavier Vavasseur

February 22, 2021 4:35 PM


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...