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イスラエル陸軍はこう戦う。周囲を敵に囲まれた同国の戦闘理論は一歩先をゆく。装備品から脳生理学まで、イスラエルの思考は参考になる。

 

 

 

スラエルの敵国はヒズボラのようにイスラエルの弱点をついてくるはずだ。そこでイスラエルは敵の先へ進もうとしている。

 

ヒズボラはイスラエル北部に構え、退避壕に武器を隠し、民間人に紛れ込む。イスラエルが2006年のレバノン南部への侵攻を再度試みれば、民間人の犠牲を回避しつつ、自軍の死傷者も最小にする必要がある。イスラエル国防軍は世界有数の高性能装備を導入し、こうした課題の解決が求められている。

 

脅威となるのは

 

IDF関係者と将来の戦闘にイスラエル地上部隊がどう対応するのかを話し、次の戦闘での課題と機会双方の見識が得られた。中東でここ数年緊張が高まっているのは、米国とイランに加えイランとイスラエルの関係で顕著だ。イランも無人機や弾道ミサイルといった新技術を実用化しようとしており、イスラエルも多層防空体制の実力を試している。

イスラエルは多年度防衛計画をモメンタムと称し、戦場に展開する隊員に最高の技術とあわせ、敵の脅威内容をきめこまかく伝える情報を利用可能にするとある。ただし、イスラエル陸軍にもその他民主主義国家同様の複雑な問題がある。国内が死傷者の発生に懸念し、国際社会も戦闘発生に懸念を示すことだ。

 

ヒズボラが連日ミサイル何千発をイスラエルに向け発射する予測がある。イスラエルはこの状況を実際に経験したが、当時のロケットは小さく精度も劣っていた。その後、イスラエルは米国の支援のもと各種防空装備を実用化した。デイヴィッズスリング、アロー、アイアンドームの各装備で、アイアンドームは米国に納入されている。

 

どの装備をどこに投入するか

 

イスラエル司令官には降下部隊、特殊部隊、歩兵旅団を最大活用する課題がある。イスラエル軍は大規模歩兵旅団が中心の構成で,装甲旅団三個が支援する。ここに降下部隊やエリート部隊が加わり、イスラエルの侵攻作戦で先鋒部隊となる。

 

今日の戦闘では敵の村落を占領するのでは不十分で、各種部隊や技術を組み合わせる勝負となる。昨年のゴラン高原演習を視察したが、イスラエルが戦車と歩兵部隊を村落を想定した地点に向かわせる様子がみられた。IDF関係者からはイスラエルは村落の平定といった戦術面の成功のみならず、特殊部隊や小規模部隊で敵脅威そのものを打破する必要もあるとの発言があった。

 

イスラエルの敵はイスラエルに通常戦で戦車対戦車、歩兵対歩兵の形で対決することはない。ヒズボラのようなテロ集団はイスラエルの弱点を模索している。同時にイスラエルも数年だけの兵役につく徴集隊員で構成する部隊を訓練する必要がある。新世代の兵士が毎年入隊し、新しい技量を提示する。例えば今日の18歳はスマートフォン、ヴィデオゲームを日常から駆使している。

 

イスラエル専門家もその他西側専門家と同じ用語、考え方を使う。つまり、人員機能最適化Human Performance Optimization (HPO)や神経可塑性neuroplasticityを利用し、脳機能が兵士の動きにどう影響するか理解しようとしている。最新技術で若年兵の技能と同じ効果が得られる。

 

脳機能を理解することでイスラエルは現代の戦闘兵士に適正な戦闘実施概念を与えたいとする。イスラエルが考慮する要素の一つが時間だ。今は1914年ではなく、塹壕戦を何年も繰り広げることはない。かわりにイスラエルは最良の技術を投入して最大限の速さで結果を実現したいとする。そこで、各旅団にシミュレーション多数を経験させ、コンピュータの活用で「デジタル背骨」を各部隊に実現させようとする。これは機動性のある司令所であり、各旅団を実弾の飛び交う任務に投入し、将校はシミュレーションで訓練することだ。

 

イスラエルはこう戦う

 

各国の軍部隊に新装備品が導入されている。IDFではF-35、サアル新型コルヴェットがある。だが歩兵部隊では以前とさしてかわらない。イスラエルではキャメル事業があり、次世代装甲戦闘車両の開発が続いているが、まだ実用化に至っていない。

 

イスラエルが実現をめざすのが「マルチディメンション」戦闘だ。各部隊に能力多数を盛り込み、多くの技術を導入し、火力支援を自由に活用させる。戦闘能力が高まった部隊は米海兵隊のようになり、独自に航空機材や艦船を利用する。

 

マルチディメンジョン部隊と指揮命令のコンセプトを使うイスラエル陸軍は決定的な勝利を、迅速に実現しようとするはずだ。ここで時間の要素がからむ。IDF司令官は1967年の6日間戦争でイスラエル軍の功績を覚えている。その際に数百名が戦死したが、現在では死傷者発生率が同様に高くなるのは甘受できない。本国では視聴者が戦場の様子を見ているはずだ。敵もこのことを理解している。

 

テロ活動を展開し脆弱地点を狙う敵に対抗するため、イスラエルは敵勢力にうまく対峙する必要がある。このため無人装備や人工知能を広域で常時監視・自動標的認識に投入すべく、イスラエル国防専門家が投入されている。兵員もこうした技術を駆使する訓練を受けるだろう。地上部隊隊員は空中装備へのアクセスを携帯し、指一本で正面の敵の状態を把握できるようになる。

 

戦闘の中の戦闘War Within a War

 

戦闘の中の戦闘とは時間の制約の中で知識を集結し、精密かつ決定的な戦闘効果を実現しつつ死傷者を減らすことを意味し、敵をいち早く探知し照準をあわせることにつながる。ヴィエトナム戦での米軍隊員には強力な火力の後ろ盾があったが、イスラエルではこれは利用できず、精密弾を使い、非対称的な手段で戦闘結果を実現する。

 

各種技術を戦場に投入したいとIDF関係者が述べている。つまり、無人機をもっと多く、人工知能も動員する。各兵員にもっと多くの技術を利用可能とする。敵も高水準技術を保有しており、無人機やスマートフォンを使うはずなので、イスラエルはこれに対応する必要がある。

 

イスラエルが使う用語は一般的かつ構想段階だが、これからの兵士に新技術を駆使させることにつながる。各国の軍で無人機やタブレットコンピューターやレーザーといった新装備の導入が遅れがちなのは調達が遅いためだ。さらに軍の通信は妨害に強く、暗号化の必要がある。つまり軍用無線は民生技術より遅れがちだ。イスラエルは軍事理論をこの数年で進展させたようだ。オープンアーキテクチャをイスラエル防衛産業は実現し、新技術を地上部隊に導入したいとする。イスラエルはこれで各隊員が展開する戦闘のありかたが根本的に変わると見ている。■

 

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Explained: Inside Israel’s Plans to Fight the Next Major War

January 31, 2021  Topic: Israel  Blog Brand: The Buzz  Tags: IsraelMilitaryF-35IranU.S. MilitaryMissiles

by Seth J. Frantzman

 

 

Seth J. Frantzman is a Jerusalem-based journalist who holds a Ph.D. from the Hebrew University of Jerusalem. He is the executive director of the Middle East Center for Reporting and Analysis and a writing fellow at the Middle East Forum. He is the author of After ISIS: America, Iran and the Struggle for the Middle East (Gefen Publishing) and Drone Wars: Pioneers, Killing Machines, Artificial Intelligence and the Battle for the Future (Forthcoming Bombardier Books). Follow him on Twitter at @sfrantzman.


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