ロシアの弱点②
ロシア財務相が歳出削減のため軍人員10%削減策を提案したがロシア国防省の反対にさらされているとの記事をピーター・スチウがNational Interestに投稿した。
Covid-19関連で予算削減は理解できるが、人口構成の問題が存在感をロシア軍で強めている。
1991年のソ連崩壊後に生まれたロシア連邦の人口構成は崖っぷち状態だった。出生率は1997年から2001年にかけ1.2まで低下し、死亡率が急上昇した。この人口構成でロシア軍が900千名体制の維持に苦慮しているのは当然といえよう。更にこの問題は今後にかけて存在感を増す。
国連人口動向統計で、2020年時点のロシアの20-34歳男性人口は14.25百万人で、2050年の予想中央値は12.91百万人とある。減少率9%で軍の募集活動が大きく影響をうけそうだ。だが真の惨状はもっと早期にあらわれ、同じ年齢層の男性人口は2025年は11.55百万人、2030年は11.26百万人の予測がある。つまり、募集対象人口が2020年代に約20%減る。この問題はコロナウィルスやその結果の予算制約と関係ない。
募集対象男性人口の2割縮小がロシア軍戦力にどんな影響が出るのか。20−34歳人口と軍の規模を比較した「軍事化率」を見れば、ロシアの人口問題の深刻さがわかる。2020年のロシア軍事化率は対20-34歳男性人口14.25百万人で6.31%で、正規軍は国際戦略研究所の推定で900千名規模だ。ただ約5%の軍人員は女性で対象外となる。また、18-19歳男性もここに入らない。とはいえ、この数字からロシアの人口構成上の課題が浮かび上がる。
2030年までの20−34歳男性人口の減少予測を加味すれば、90万名体制を維持するためロシアは軍事化率を2025年に7.79%、2030年には8.01%まで増やす必要がある。実際はロシアはすでに軍事化された社会になっている。各国の数字を見ると、2020年の軍事化率は米国が3.86%、フランス3.62%、トルコ3.58%、イタリア3.52%、日本2.54%、パキスタン2.24%、英国2.21%、中国1.24%、インド0.77%でロシアが突出しているのがわかる。またロシアは周辺国より軍事化率が高く、ウクライナの2020年統計では4.82%、ルーマニア3.80%、ポーランド3.16%をいずれも上回る。
で社会が耐えられる「最大軍事化率」を想定すると、ロシアの現実が一番その水準に近い。中長期的にロシアはこれ以上の人員募集に耐えられないはずだ。とはいえ、状況は絶望的とも言えない。給与水準の改善も選択肢のひとつで、軍勤務の魅力を引き上げる策もあるが、スチウ記事では財務省が反対の方向を目指しているのがわかる。
別の対策に現行の徴募期間一年を2年に延長することがある。近代戦は高度技術を駆使するので、徴募期間も大部分が訓練に費やされ、実戦対応が整うのは最後の数ヶ月しかない。徴兵制度を温存するのなら、期間延長により戦闘対応度を高めれば、国防省も人材育成への支出資を無駄にすることを防げる。ただし欠点もある。若年層をさらに一年軍に留まらせれば、民間労働市場に一年間加われず、経済成長に悪影響が出る。さらに、徴兵制度は今でも政治的に不人気で、延長すれば国民の抵抗にあうのはほぼ確実で、支持率を重視するプーチン政権に心配のたねとなる。
女性活用方針を国防省が変えれば部分的にせよ解決になるかもしれない。前述のとおり、45千名の女性がロシア軍に勤務しているが、身体条件から実戦任務に適さない。国防省は次の三通りで現行方針を変更できる。女性に戦闘任務志願の道を開く。女性の徴募期間を延長するが、戦闘任務は与えない。(これで戦闘任務に投入可能男性を増やす)あるいは、女性を全面的に活用することである。それぞれ可能性は少ないが、国防省は女性のパイロット登用など打開策を模索している。ロシア軍に働く女性の規模は米国より低い。米国では空軍の20%、海軍19%、陸軍15%、海兵隊9%が女性だ。ロシア軍で支援任務に限り登用し女性比率を10%にするだけで男性徴募率の低さを解決できる。
ただし上記は国防省があくまでも現在の軍の規模を維持する限りついてまわる問題である。財務省の10%削減提案に激しい抵抗が出たのは、現在の軍の規模を維持する願望が強いあらわれだ。ただし、現行の方向性を維持した場合の財政上の重荷を考える必要がある。さらにCovid-19が加わる。ロシア社会では若年層が今後さらに減る。90万名体制維持は今でさえ難題で、今後維持できるはずがない。解決策として、給与水準の改善、徴募期間延長、女性募集の増加、それぞれ何らかの効果があるが、いずれもロシアの人口構成を抜本的に改善せず、ロシア軍の課題解決にもつながらない。ロシア連邦が軍縮小するとしたら、コロナウィルス関連の歳出削減を理由にあげるはずだ。この説明でまちがいとはいえないが、軍の規模縮小はロシアの人口構成上で不可避だ。Covid-19流行は都合の良い理由付けに過ぎない。■
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The Russian Military is Facing a Looming Demography Crisis
February 1, 2021 Topic: Russia Region: Europe Blog Brand: The Buzz Tags: Russian MilitaryDraftDemographic DeclineSoviet UnionMilitary
Ethan Woolley is a student at the European University at St. Petersburg, where he is pursuing an MA in Energy Politics in Eurasia. He graduated from the University of Pennsylvania with a BA in International Relations and Russian and East European Studies.
Image: Reuters.
自衛隊が人材確保に難渋している事はよく聞くが、
返信削除ロシア軍は90万人ですから、徴兵制(12か月)があっても同程度以上に厳しいのでしょう
しかしこの問題でもっと厳しい状況なのは韓国だと思います
韓国は北朝鮮軍と対峙する為に、陸軍人員は今後も大幅に減らすのは無理です
(現行の50万人を38万人に削減する計画らしいですが)
それに対し、韓国の出生数は2000年が63.5万人、2020年は27.8万人と、
20年間で約56%減という恐ろしい減り方をしています
韓国軍の兵役期間は陸軍で18ヶ月、上の記事にもある様に、一度短縮した期間を、
延長するのは無理に近いでしょう。時の政権が人気取りの為に更に短縮化する可能性もある
韓国軍の職業軍人は約25万人らしい。こちらの募集も対象人口が減れば、当然厳しくなるでしょう
人口動態を見てると、韓国軍の近未来ってかなりの無理が生じるとしか思えないのですよね
この記事は、ロシア軍の人員維持が人口減少で困難に直面していると言いながら、女性を増やせば維持でき、ならば深刻な問題でないように思える。そうは言っても軍事費の削減は避けられず、人員維持もままならず、軍事国家ロシアの軍事力は低下するだろう。
返信削除プーチンは国家の窮状をどのように打開しようとしているのか、その萌芽も見えない。
ここで、あえて陰謀論との非難を恐れず、一つの予測を提示したい。
トランプは、当選後、対ロシア政策を見直し、親露的政策を行おうとしており、最終的にはロシアと協調し、対中包囲戦略に変えようとしていた。この動きは、中国にとって死活問題になるかもしれず、また、中国とのビジネスで甘い利益をあげてきたディープステート(以下、DS)にとっても大きな痛手となる。この動きを阻止するためにでっち上げたのがロシアゲートである。これは十分効果が出て、トランプは親露的行動に出られなかった。
トランプは、ロシアとの協調で、信奉するニクソンが米中国交回復で世界を変えたように、対中政策で名を残したかったと思われる。
ロシアゲートがフェィクであることが明らかになると、トランプは、反撃に出る。対中貿易戦争を開始し、また、様々な対中制裁を実行し、中国とDSに大きな打撃を与えた。それに対する反撃が、あらゆる手段を駆使した不正選挙によりトランプを落選させることである。それは実を結び、バイデン政権となった。
このように考えるとバイデン政権の今後の展開は、表面が対中強硬に見えても、実質的に中国宥和、対露強硬政策になると思われる。
米国は、国内が様々な問題で分断されて混乱しており、この状態は、新たな政治・経済体制が固まるまで続くだろう。そしてこの新たな体制は、DSを継続するものではない。
そしてロシアもプーチン後の政治・経済体制を模索することになる。今以上の軍事国家になる可能性も僅かにあるが、自ら西側との協調に針路を変更すると予測する。