スキップしてメイン コンテンツに移動

シリア空爆作戦の第一報。空爆効果は限定的でイランへのメッセージとしての意義のほうが大きい。イランは米政権交代で淡い期待を早くも裏切られた格好だ。

 

  •  

340th EARS refuels F-16C's and F-15E's  over Iraq

USAF


爆はバイデン政権による初の軍事作戦で、イラン対応で新しいパラダイムを整備したと言える。


米軍によるとイランが支援するシリア国内の戦闘員に空爆を実施したのは先週発生した北イラク、アルビル空港へのロケット攻撃への報復とのことである。空港攻撃で米主導の連合軍によるイラク、シリアのISIS攻撃作戦を支える民間企業社員一名が死亡したほか、米軍隊員数名が負傷していた。今回の空爆はジョー・バイデン大統領による親イラン集団へ向けた初の攻撃となった。


ペンタゴン報道官ジョン・カービーは2021年2月25日に声明文を発表し、バイデン大統領が非公表の施設数カ所の空爆を直接命令したとある。その他報道から今回の標的はシリア国境地帯のアル・ブカマル周辺に展開するイラン支援を受ける各種集団とわかる。報道資料ではイラン支援を受ける集団としてカイティブ・ヒズボラおよびカイティブ・サイイド・アル−シュハダを例示している。カイティブ・ヒズボラはイラクに本拠地を置く特に強力な親イラン武装組織で、これまでも米軍の標的となっていた。


GOOGLE EARTH

A map of the region, with an inset focused on Al Bukamal in Syria.


今回発表の声明文を紹介する。

バイデン大統領の命令により、米軍部隊が今夕早くイラン支援を受ける戦闘員集団が東シリアで利用中のインフラストラクチャを空爆した。今回の空爆は最近発生したイラク国内の米国・連合国の人員を狙った一連の襲撃への対応として許可が出ており、現時点も脅威は続いている。具体的には今回の空爆作戦で国境地帯の複数地点の破壊に成功し、標的にはカイティブ・ヒズボラ(KH)およびカイティブ・サイイド・アルシュハダ(KSS)を含む。

今回の軍事対応は外交措置と並行して実施されたもので、連合軍派遣国と協議を行った。今回の作戦で明白なメッセージを送った。バイデン大統領は米国ならびに連合軍派遣国の人員の防御に注力する。同時にシリア東部、イラク双方の全体状況の緊張緩和をめざし熟慮あるかたちで実行した。

ロイド・オースティン国防長官は空爆の発表を受けワシントンに移動中の機内で報道陣に「選択した標的は撃破できたと確信する」「攻撃対象の各施設は以前の襲撃を実行したのと同じシーア派戦闘員が利用していたのは間違いない」「以前から繰り返し、我が国はこのまま黙っているわけではないと述べてきた」と述べ、空爆作戦をバイデン大統領に進言したという。


フォックスニュースのジェニファー・グリフィンは米空軍の「F-15」が空爆に投入されたと報道した。状況からF-15Eストライクイーグルであることは確実で、興味ぶかいのはアル・ブカマル上空の空域はシリア国内に進駐しているロシア軍が統制している点だ。ロシアはシリアのバシャ・アル−アサド独裁政権を支援している。ただし、今回の空爆がロシアと調整して実施された兆候はない。


フライト追跡ウェブサイトを見るとE-11A戦場空中統制ノード (BACN) 機が空爆時に同じ空域に一機展開していた。同機は高性能通信機材を搭載し各種部隊間で情報共有を実現する。空中給油機のKC-10A エクステンダーも一機同じ空域に飛んでいた。


空爆数日前には米特殊作戦部隊の偵察機材が空爆地点周辺を飛行していたことがわかる。


フォックス・ニュースのグリフィンは空爆は念入りに計画され、指揮命令所や補給処を物資ともに破壊し、人員殺傷は二の次だったとも伝えている。政府関係者は「強い警告射撃」でイランならびに代理勢力に「警告」を送ったと述べているとも報じた。


今回の空爆地点はヒズボラやイランの支援を受けたシーア派戦闘員が利用するイラクへの移動地点で、実施時間では大量の負傷者を発生させないよう勘案されていた。軍関係者によれば指揮命令施設、補給施設が標的となり、建物2棟が吹き飛び出火した。


昨年のことだが、イランの支援を受けた勢力がアル・ブカマルの本拠地を拡張している兆候が見つかり、地下施設も新規構築された。この基地は2019年に米軍の空爆を受け、2020年にもイスラエルが独自に展開する親イラン代理勢力への攻撃の一貫で空爆している。


今回の空爆の標的が何だったのか正確に判明していないが、わかっているのは空爆の計画と実施に意味があることだ。バイデン政権はエルビル襲撃の首謀者への報復によりイランへ明白なメッセージを送りながら、直後のエスカレーションのリスクを可能な限り低く抑えた。

 

これはドナルド・トランプ前大統領時代に同様の事態にイラクで対応した事案と対照的である。ペンタゴンが同盟国協力国と事前調整したと公言していることから、前政権の方針や外交姿勢との違いを強調するねらいもあったのだろう。

 

すべてはバイデン政権が物議を醸したイラン核開発をめぐる多国間取り決めへの完全復帰を画策する中で、一方でバイデンは合意内容を完全履行するまで制裁解除はありえないとも述べている。トランプ大統領により米国はイラン合意から2018年脱退した。

 

今回の空爆がイラン支援を受けるシリア国内戦闘員を狙い、意図したメッセージがイランにどう受け止められるかはまだわからない。ただし、一定条件がそろえば、バイデン政権が軍事力の行使もためらわないことが明らかになった。■

 

この記事は以下を再構成し、人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください

 

Biden Strikes Back: What We Know About The Bombing Raid On Iran's Militias

BY JOSEPH TREVITHICK FEBRUARY 25, 2021

THE WAR ZONE


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ