ロシアの弱点①
ロシアにはSu-57のような優秀装備があるのに、大量調達の資金がない。現在の財政状態では、大量調達の可能性は当面ないだろう。
だが、Su-57の技術成熟度は低く、生産ラインは小規模かつ効率が低い。短時間低予算で好転するようなものではない。
ウラジミール・プーチン大統領は2019年5月にアストラハンにある第929チカロフ国営飛行テストセンターを訪問した。
プーチンのIl-96VIP機をモスクワからアストラハンまで随行したのはスホイSu-57の6機編隊で、生産済み機体の半分に相当した。
2019年5月15日にプーチンはクレムリンが今後8年間でSu-57を多数調達すると述べた。プーチンが真剣ならロシア国防省が同機を一定数導入したはずだ。
だが、Su-57は未完成の機材だ。戦闘システムが欠如している。スホイは同機の本格生産ラインをまだ構築していない。だがなんといっても、同機を大量調達する資金がロシアにない。
開発が遅れている同機ではエンジン火災もあったが、非戦闘任務でシリアに「配備」されたのに、2018年にSu-57生産は停止し、非ステルスだが実証ずみのSu-27生産を優先させる方針がクレムリンから発表された。2027年までにSu-57はわずか16機が調達されるのみで、全体でも28機にしかならない。
方針変換に経済事情があるのは明らかだ。2016年のロシアは国防予算に700億ドルを投入した。だが、経済は不振でGDPは2015年に4%近く減ったため、ロシアも予算の優先順位の再検討を迫られた。これについて国際戦略研究所は「2016年度の予算編成ではこの支出水準は維持できないことが明白に認識されていた」と評している。
ロシア政府はSu-57の生産削減を目指した。「Su-57は現時点で世界最高性能の機材。そのためこの時点で同機を大量製造する必要はない」とユーリ・ボリソフ国防副大臣が当時報道陣に語っていた。2018年の決定でロシア空軍は当面はステルス戦闘機を実用化できないことになった。だが米国、中国旗法でステルス戦闘機を大量生産しており、新型ステルス爆撃機も開発中だ。
プーチンは2019年5月にこの不均衡を打破すると公約した。スホイにSu-57コストの20%削減を命じたとし、2027年までにSu-57を76機調達すると発表したのだ。
スホイはSu-57のコストについて発表はないが、ロッキード・マーティンのF-35が最新の組立ラインで年間数十機の生産数で単価100百万ドルというのが参考になろう。
米軍は7000億ドルの国防予算でF-35を年間60-70機導入しており、米国防予算でF-35は1%の支出規模となっている。ロシアが国防予算の1%をSu-57にあてれば、年間6機の調達が可能で、2027年までに54機がそろう。
だがそれは楽観的すぎる。Su-57の量産、実戦投入の前に、スホイは同機の戦闘システムを完成させる必要があり、兵装を搭載し、生産ラインを拡張し、作業員訓練も必要だ。
これはすべて言うは易しだ。また資金だけ投入しても先に進まない。F-35には20年間も潤沢な資金が投入されたが、技術面産業面で何度も苦境に直面している。
もちろん、プーチンを護衛したSu-57の六機編隊やその後の大規模発注の話とロシア空軍への同機導入は関係がない。全ては海外顧客の関心を買おうという販売活動だ。
ロシアでSu-57を押す動きとインドが同機の共同開発中止へ決定したのは偶然の一致ではない。
ソリアはトルコにSu-57開発に加わるよう秋波を送っており、インドに代わる資金提供者の役割を期待している。トルコはF-35を発注していたが、米政府が阻止しているのはトルコがロシア製防空装備を導入しており、搭載センサーがF-35のステルス性能の機微情報を捉えてしまうためだ。
プーチンがSu-57になみなみならぬ自信を示しているのもトルコ関係者をロシア製ステルス戦闘機採用という博打に向かわせる狙いがあるのだろう。
だがSu-57に買い手がついてもそれで解決とはいかない。Su-57の設計が未完成で生産規模が限られ、効率が悪いままだ。これを変えようとすれば時間も負担も相当必要だ。■
この記事は以下を再構成し、人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください。
No Rubles, No Su-57: Russia's Lack of Money Hurts Its Defenses
February 8, 2021 Topic: Economics Region: Europe Blog Brand: The Reboot Tags: RussiaMilitaryTechnologyWorldStealthSu-57
by David Axe
David Axe served as a defense editor for the National Interest. He is the author of the graphic novels War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This article was first published in May 2019.
Image: Reuters
ロシアは、GDPで日本の1/3、軍事費で1.5倍であり、軍事費の対GDP比率は低下しつつあるが、2019年で3.8%である。これはロシアが軍事国家であることを示しているが、油断のならない中国が隣国である間は避けられない事なのかもしれない。
返信削除Su-57の負担は大き過ぎたようだ。また、多くのロシアの新兵器の開発や生産は、遅れがちになるだろう。
プーチン政権は黄昏を迎え、彼の国家運営は行き詰まりを明確にしている。プーチンの旧ソ連流の国家観とかつてのロシア帝国流の国家運営は、ロシアにとって大きな災厄である。ロシアは、次の時代の国家運営を計画すべき時に来ている。それは西側との関係改善であり、中国との関係強化ではない。
プーチンとバイデンがそれぞれ政権を担う間は、関係改善は望むべくもないが、彼らの次の政権では可能性が出てくるかもしれない。そのためにロシアは、ウクライナとの関係を改善し、シリアから撤兵する必要があるだろう。