何回読んでもよく意味がわからない説明ですが、国民の素朴な疑問を想定し、理由になっていない回答とはいえ必死に展開している姿勢は評価しておきます。原文をつくった関係者もさぞや苦しかったと思いますが。
2021年2月4日、韓国海軍はLPX-II軽空母構想を国民に知ってもらおうとセミナーを開催した。セミナーはYouTubeでも中継し、「国の安全保障の中核装備としての軽空母の必要性」をテーマとした。LPX-IIを様々な角度で描いたイラストも新たに公開し、「韓国版空母打撃群」整備のめざす機能等を示す解説画像も同時発表した。
韓国海軍のめざす空母打撃群の姿
韓国が実現をめざすCSG予想図(上)で興味を引くのは構成だ。
LPX-II 軽空母
KSS III 潜水艦二隻
KDX III バッチII駆逐艦
KDDX 駆逐艦
KDX II 駆逐艦
ROKS Soyang 高速戦闘支援艦
航空兵力で以下機種の姿が描かれている:
P-8Aポセイドン哨戒機
F-35B STOVL機
AW159ワイルドキャットヘリコプター
VTOL UAV
- LPX-II建造費をめぐる紛糾
韓国の国防省および国防装備調達局が同日に国防事業協議会を開催していた。議題はLPX-II建造のコンセンサスづくりだったが、建造費の天文学的規模をめぐり、意見の対立がまだ続いている。また、軽空母では中国の海軍力整備に対抗できないとの意見もある。
これに対し、韓国海軍は情報公開年と質疑応対により理解を求めようとしている。(下参照)
LPX-IIの大きさ
海軍計画局主任のJeong Seung-gyunによればLPX-IIは全長265メートル、全幅43メートルで基準排水量30千トン(満排水量は45千トン程度)で、フランス海軍のシャルル・ド・ゴールにせまる艦容となり、米海軍のアメリカ級に近い。
Kim Jae Yeop博士との一問一答
Kim Jae Yeop博士はパシフィックリム戦略研究所(PRINSS)の研究員で、Naval NewsはLPX-IIの最新動向について意見を求めた。
今回のセミナー開催の理由は何か。韓国世論は反対しているのか。
必ずしもそうではない。ただ状況が厳しいのは事実だ。まず、当初予算として10百万ドル近くが財務省により年末に拒否された。今年の予算案で韓国海軍が確保できたのは10万ドルにすぎない。今回のセミナー等に使っている。政界では、野党に加え与党にも国民の了解が得られていないとの声が国防委員会に強い。
LPX-IIは韓国海軍の運用方針に合致するのか。北朝鮮への抑止力は海軍の存在意義ではないと思うが。
建造計画の正当化として北朝鮮の脅威は説得力が弱い。韓国海軍は軽空母は陸上航空基地が北朝鮮弾道ミサイル攻撃を受けた際に代替運用手段となると説明している。だが、F-35Bがわずか十数機で、しかも空対地兵器は機内に搭載できない状態では抑止効果が限られる。
そうではなく、周辺国の中国、日本の海軍力整備がLPX-II建造の理由として説得力がある。韓国が自力で海上通行路を守るべきという理由もある。この場合は近隣海域を超えた地点を想定する。朝鮮半島周辺で海上戦闘が発生すれば、空母より費用対効果の高い対応手段がすでにある。対艦ミサイルは陸上基地運用の機材や潜水艦から発射できる。
海軍装備の調達プロジェクト多数(KSS III、 KDX III Batch 2, KDDX, F-35B など)がある中で、LPX-IIの予算が捻出できるのか。
国防省はLPX-IIは導入可能と言っている。費用は20億ドル程度で今後10年かけ建造するのであり、いきなり実現するわけではない。だが、ご指摘の通り、韓国海軍には大規模調達事業がある。このため、財政面で国防省が言う安易な事態ではない。
とはいえ、海軍は先に実現すべき事業をLPX-IIより優先すべきだ。軽空母の建造前に整備しないと戦略的価値を産めなくなるからだ。こうした装備がないままLPX-IIを建造しても意味がなく、予算ばかり食うことになり、脆弱な艦をさらすことになる。事業に批判的な向きがこれを懸念している。
二重艦橋構造
LPX-IIの最新版予想図では艦橋を2つとしており、国際協力を反映しているようだ。
海外提携先として英米政府、両国企業が建造に関与するといわれる。米国は強化飛行甲板技術をF-35B購入の見返りとして提供し、英国も技術支援をする。英政府とバブコックインターナショナル(英海軍空母クイーン・エリザベス級建造に参画)が積極的に関与しているといわれる。このため、最新のLPX-II予想図で艦橋がふたつの英海軍空母と類似している説明がつく。バブコックは韓国とKSS-III大型潜水艦事業ですでに関わっている。
LPX-II 事業とは
現代重工業(HHI)が2020年中に構想設計を完成する予定で、海軍編入を2030年代初頭と想定していた。艦設計は既存の独島級強襲揚陸艦(LPX-I事業)を原型としながら、ウェルデッキは採用せず、航空運用を中心に置くことで米海軍LHAと類似する。F-35Bを20機程度搭載できる。設計案は2020年12月30日に完了し、予算は2020年度から2024年度の中期防衛計画で計上することとした。
弾道ミサイル防衛(BMD)対応の多機能レーダー(MFR)が次期駆逐艦用に開発されており、LPX-IIにも搭載されるといわれる。韓国海軍が公表した解説画像ではLPX-IIに新型CIWS(開発中)、K-SAAM対空ミサイル、LIG Nex1製のSLQ-261K対魚雷音響対以降装置(TACM)も搭載するとある。
軽空母にはF-35Bに加え、韓国海兵隊の次期海上運用攻撃ヘリコプターを搭載するとあり、KAIがスリオンMAHを、ベルヘリコプターズがAH-1Z、ボーイングがAH−64アパッチをそれぞれ提案中。
LPX-II解説画像と Q&A
セミナーで韓国海軍は以下の解説画像を公開した。
The Republic of Korea’s
韓国海軍の空母の歴史が始まる!
有事になれば空母戦闘集団が必要だ
空母の役割とは
海軍、空軍、地上軍が統合部隊となる。
北朝鮮の挑発に呼応し、統合部隊は有事に攻勢をかけ、強力な軍事力を誇示する!
1-北朝鮮の挑発を打破史、有事には統合部隊として攻勢をかけ初期段階で勝利をおさめる
2-潜在的脅威国の軍事活動を予防し、海上主権と国益を有事の際に防御する。
3- 非軍事脅威から国民を守る。
4-外交を支援し国際平和の実現に貢献する。
軽空母でこれが大事
Q: 軽空母構想はいつはじまったの?
A: 1996年の大統領報告で軽空母の必要を訴えてから、一貫して推進してきました。国会が戦闘機搭載可能な艦により潜在脅威への対応を2012年の検討で求めています。統合参謀総長は空母建造の必要性を認め、事業の推進を2020年12月に決定しました。
Q: 韓国の国防予算で軽空母一隻とあわせ護衛部隊を整備、運営できるの?
A: 護衛部隊は大部分が完成しており、運用中あるいは中期防衛計画に盛り込まれていますので、予算は大して必要ではありません。軽空母の設計作業は次年度開始となり、2033年までに完成します。建造費は10年以上に渡り各年の防衛予算に計上します。
Q:韓国の防衛力は北朝鮮を上回るのに、軽空母がなぜ必要なの?
A: 戦闘が長期化すると人命の損失、国土の破壊、経済損失は多大になります。可能な限り短期間で戦勝を実現することが重要で損失を最小限にすることが肝要です。軽空母を発信する航空機は敵国の後方から重要標的を精密攻撃することで敵攻撃を分散させわが方の軍が短期で勝利する条件を実現します。
Q: 周辺国と海上戦闘となればどんな結果になるの?周辺国との海上戦闘の可能性はあるの?軽空母一隻で対応できるの?
A: 損害規模と脅威対象を抑え込む最小限の国防力の維持が必須です。軽空母は効果的かつ効率的に脅威可能性のある国の海軍力整備に対抗できます。
Q: 遠隔地で発生する問題には外交力や同盟関係を使う解決のほうが軍事力の行使より望ましいのでは?
A: 外交や同盟関係だけに頼る国家安全保障はありえません。外交関係はすぐ変化しますし、同盟国といえども国益がぶつかる場面があるからです。外交、同盟関係には力の裏付けが必要です。原油、原材料、食料を輸入に依存する韓国には海上交通路を守る能力が国内経済や国民の生活に不可欠です。
Q: 朝鮮半島自体が不沈空母との見方があるけど、それでも軽空母は必要なの?
A: 陸上の航空基地は大規模ミサイル攻撃を北朝鮮が実施すれば損傷は免れません。また開戦当初は陸上基地の航空運用には制限がついてまわります。戦闘機材を軽空母に搭載すれば、移動航空基地として敵ミサイル攻撃を生き残り、航空運用できます。
Q: 軽空母で運用する垂直離着陸機では後続距離、兵装搭載量が限定されるのでは?
A: たしかに空母搭載機の航続距離や兵装搭載量は陸上配備機より制約されますが、海上で再搭載、給油を受けられるので、各出撃の準備時間が短くなり、短い間隔で遠距離地点へ進出が可能となります。また遠隔地点でわが国益を守る任務が実施できるのは軽空母部隊です。
Q: 独島防衛に軽空母がなぜ必要なの?F-15KやF-35Aで対応できるでは。
A: 陸上基地から発進したF-15KやF-35Aでは独島上空に短時間しか留まれません。空中給油を受けても現地には長く留まれません。空母発進の戦闘機なら艦上で給油再装備を受けて迅速かつ高頻度でミッションを実施できます。
Q: 必要なのは70千トン級やもっと大型の空母じゃないの?30千トン空母では搭載機数が少ないでしょ。
A: 英、仏、伊の各国が中規模空母をそれぞれの国力を反映して運営しています。米国も軽空母6隻を整備する構想の実現に向かいます。
Q: 潜水艦やミサイルといった非対称戦力を整備するほうが高額な空母の建造より効率が高いのでは?
A: 非対称軍事力で脅威対象に対応するのは重要ですが、全方位安全保障能力を各種脅威をにらんで整備するのが望ましいのです。軽空母は統合部隊となり、北朝鮮を抑え込む以外に周辺国を対象の各種ミッションを実施したり、海上権益や国民を守り、同時に力の示威で強い抑止力効果を実現できます。
軽空母の実現を:
誰も軽視できない堅固な安全保障体制のため、
国、国民の新しい時代のミッションを
強力な国防と将来の平和のために。
この記事は以下を再構成し、人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください。
Xavier Vavasseur 11 Feb 2021
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