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今度は実現するか、米空軍の軽空母構想。垂直離着陸無人機を搭載する前提で、アメリカ級強襲揚陸艦の転用、フォード級の小型版を主に検討している模様。

 The amphibious assault ship USS America.

USN 

海軍が軽空母CVL構想を再び検討している。アメリカ級強襲揚陸艦を航空運用に特化する案と新鋭フォード級超大型空母の小型版の2つが検討対象とされる。

海軍海上システムズ本部(NAVSEA)の艦艇設計部次長ジェイソン・ロイド海軍少将が軽空母構想の現状を先週の海軍技術学会のオンライン会合で紹介した。海軍でCVL導入構想はこれまで何度となく現れては消えていた。

ロイド少将は「10年前の結論が今でも正しいとは限らない」とCVL構想が再び検討対象になっている現状について触れ、「沿海域での戦闘と大国間戦闘では全く違う相手の戦いとなり、必要になる装備も異なるのは当然だ」

さらにロイドはアメリカ級、フォード級以外も検討対象とし、「各種選択肢を比較し、コストと戦力を検討している」と述べた。

航空運用を想定した現行艦からCVLを実現しようというのは当然とも言える。軽空母実現が早まり、既存設計の利用で建造費も節約できるからだ。

USN

強襲揚陸艦USSアメリカとニミッツ級USSセオドア・ロウズヴェルト

 

アメリカ級のCVL転用構想は以前からあり、有望な結果が想定されている。USSアメリカ、姉妹艦USSトリポリは強襲揚陸艦だが、従来の同種艦にあったホーバークラフト等の発進回収に使うウェルデッキがない。ただし、三号艦のUSSブーゲンビルでウェルデッキが復活する。

海軍は海兵隊と共同で排水量46千トンのアメリカと合わせ旧型のワスプ級強襲揚陸艦を「ライトニング空母」としてF-35B共用打撃戦闘機の運用試験に使っている。

USN

USSアメリカにF-35Bを13機搭載し、「ライトニング空母」構想の実証を2019年に行った。

 

アメリカにはカタパルト、拘束装置がなく、斜め甲板もないので、固定翼機の発艦、着艦を同時に処理できず、出撃回数も増やせない。

NAVASEAの水上艦設計・システムズエンジニアリング局を率いるケイリー・フィリングも軽空母構想検討に加わっており、ロイド少将に同席し、USSアメリカを原型とした通常動力CVLでは原子力空母と同程度の航続距離は実現不可能と述べた。正規空母は強襲揚陸艦より高速航行可能だ。このため、排水量10万トンのフォード級の「軽量化」版の検討がされているという。

「フォードの出撃回数に対抗するのは無理とわかった。フォードは航空機発進を短時間で多数実現するよう最適化されているので、これに匹敵する性能は実現できないのです。原子力空母の航続距離と高速航行も対抗できない性能です」とフィリングは述べた。

ロイド少将も近年の航空機材特に無人機の分野で垂直離着陸性能の開発があり、将来のCVL運用を大きく変える可能性に触れた。空母は有人機の運用を主眼に発展してきた。

USN

米海軍が2030年の空母航空戦力を想定した図では有人機が依然として中心になっている。

では将来のCVLの航空団構成はどうなるか。小型無人機が多数を占めれば艦への影響は大きい。ロッキード・マーティンが提唱のステルス無人垂直離着陸機(VTOL)構想の高性能偵察侵入用無人装備システム(VARIOUS*)は艦上運用を想定し、各種任務を担わせる構想で発表から10年がたっている。

*Vertical Takeoff and Landing (VTOL) Advanced Reconnaissance Insertion Organic Unmanned System,

LOCKHEED MARTIN

VARIOUS無人機の想像図

 

その他にも垂直離着陸機の構想があり、国防高等研究プロジェクト庁(DARPA)は戦術利用偵察ノード(TERN)およびXV-24Aライトニングストライク構想を発表している。もっと最近でも海兵隊がベルV-247ヴィジラント・ティルトローター無人機の利用を模索している。

DARPA

DARPAの戦術利用偵察ノード(TERN)機の想像図。

DARPA

XV-24Aライトニングストライク無人機でMV-22オスプレイを護衛する想像図。 

BELL

V-247 ヴィジラント無人ティルトローター機がヘルファイヤーを発射する想像図。

将来のCVLも高性能無人戦闘航空機材 (UCAV) を通常の離着陸機として活用しそうだ。海軍で開発が進むMQ-25Aスティングレイ艦載無人機に空中級以外の任務を与える動きがあり、実際に情報収集監視偵察(ISR)機能が二次的任務に想定されている。

ただし、海軍が現行の空母設計に近く超大型空母より小型の艦を検討対象にする可能性もある。フォード級以外にニミッツ級も対象になりうる。小型空母が実現すれば作戦運用が柔軟になるとの主張がある。また運用コスト維持コストが下がりながら航空戦力を運用出来る利点も明白だ。現行の空母部隊にストレスがかかっている現状を考えると、こうした利点の意味は大きい。

「第二次大戦中の空母と今日のニミッツ級空母は全く違うと言えます。発艦、着艦を同時進行す能力などこれまでの実績と経験から導いた解決方法です」とロイド少将は述べ、「そこでCVLですが、大幅に価格が低下すると言ってきましたが、たしかに超高価にはなりませんが、反面で断念すべき内容もあります」

今回の新研究の結果からCVLが実現する保証はない。海軍がすすめるバトルフォース2045構想は正式承認を受けていないが、政権交代もあり内部作業が止まっている。バイデン大統領の国家安全保障チームに国防長官ロイド・オースティンも加わり、国防安全保障問題を新鮮な視点で検討しているところだ。

ここしばらくは海軍は軽空母含む新規艦種含む将来の艦隊構成の検討を続けるはずだ。■


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Navy Looking At America And Ford Class Derivatives In New Light Aircraft Carrier Studies


Greater emphasis on unmanned aircraft, including ones that take off and land vertically, could also impact light aircraft carrier proposals.

BY JOSEPH TREVITHICK FEBRUARY 2, 2021


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