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新旧の安全保障担当補佐官参加のイベントで、安全保障の方向性は決定的に違わないとわかり、ひとまず安心。クァド重視は共通、イランをめぐり相違が明白。

 


オーストラリア、インド、日本、米国の艦艇がマラバール2020演習に集結した。2020年11月17日 US Navy Photo

 

 

平洋での米国と同盟国のゆるいつながりを、非公式な安全保障以上の枠組みとしてインド太平洋の四カ国で進展することがバイデン政権の目標、と新しい安全保障担当大統領補佐官が1月29日に語った。

 

ジェイク・サリヴァンは米国平和研究所のオンラインフォーラムで新政権はドナルド・トランプ大統領が始めた動きを「前に進めたいと真剣に考えている」と明らかにした。四カ国とは米国、日本、インド、オーストラリアで、各国はすでに合同演習を展開しており、更に今後頻度を増やす合意ができている。米国はすでに日本、オーストラリアと条約を締結している。

 

いわゆる「クァド」の四カ国外相が顔を合わせ共通課題とあわせ経済、外交、軍事面で中国対抗策を検討している。だが現時点では安全保障面の同盟関係とは程遠い。だが障害になるのが日本の戦後憲法で、軍事活動を本国外では制約している点だ。

 

トランプ政権の安全保障担当補佐官ロバート・オブライエンはクァドが第二次大戦後で「最重要関係になるのは間違いない」と評していた。

 

オブライエンは「米国にとって地政学上の課題トップは中国」と断言していた。また、中国が「国家主義傾向を強める」証左に、香港の民主運動や回教を信仰するウイグル族の弾圧をあげた。また南シナ海から北極海まで「世界支配の野望を隠そうともしていない」と述べた。

 

サリヴァンは、米国モデルは機能しないと中国は公言し、中国政府は「間接民主制度に代わる選択肢を明確に主張している」、自らの経済成長を米大統領選挙をめぐる政治混乱と対比させているという。

 

更にサリヴァンは米国は各同盟国・協力国と歩調をあわせる必要を訴えた。民主主義各国が共通原則で人権侵害や他国主権への侵害をやめない中国に代償を払わせる。

 

米海軍誘導ミサイル駆逐艦USSウィリアム・P・ローレンス (DDG 110)がインド海軍駆逐艦INSコルカタ(D 63)、給油艦 INSシャクティ (A 57)の間に入り航行した。背後に海上自衛隊ヘリコプター空母JSいずも*DDH 183)、フィリピン共和国海軍警備艇BPAアンドレス・ボニファシオが見える。南シナ海で海上自衛隊撮影。

 

 

中国に対抗する米国には人工知能、量子コンピューターで「技術優位性を維持する必要」があるとし、国力とあわせモデルを示すべきとした。.

 

新旧補佐官がともに、今回の政権交代は円滑だったと評するが、両政権の安全保障での姿勢はイランの核ミサイル問題で違いを示した。

 

「イランの核開発は大幅に進展した」とトランプ政権が国際合意枠組みを撤退したあとの状況についてサリヴァンは評している。イランの弾道ミサイル、巡航ミサイルの整備でも同様でバラク・オバマ元大統領の時代から加速している。

 

バイデン政権は核合意復帰をほのめかしているが、同時に交渉再開の場合はイランのミサイル開発ならびにレバノンからイエメンまでテロ集団への支援を止めないイランに強硬な姿勢を示すとする。

 

オブライエンはトランプ政権の「最大限の圧力」によりイスラエルには米国がいかなる場合も同国の側につくと示せたと総括する。大使館のエルサレム移転と、イスラエルの主張どおりゴラン高原でシリアとの国境線を認めたことが大きいとした。

 

米国はアフガニスタン含む中東駐留部隊を縮小中で、東欧などに再展開させる。またイスラエル技術を利用し「中国閉じ込め効果」を追求し、イスラエル承認に動くアラブ各国にもイスラエル技術を提供する。

 

オブライエンは「パレスチナ問題は未解決」とし、パレスチナ住民に選択対象は提示ずみとした。

 

またオブライエンはヨーロッパについてNATO同盟国・協力国との関係は「政権と関係なく多くは継続される」と触れた。サリヴァンも米国はヨーロッパ各国との経済、外交、安全保障上の取り決めで状況変化に対応し条約関係を共有することで分断を解消したいとする。

 

「ドイツはいつもその他ヨーロッパ各国と微妙に異なる」傾向があるとサリヴァンは指摘した。オブライエンはドイツがロシア、中国と「こちらの希望以上に」近い関係を保っているとも指摘。ドイツが「大きな影響力をヨーロッパに」及ぼしているとし、バイデン政権で大問題になると指摘した。

 

ロシアについて、サリヴァンは新戦略兵器合意の拡大が対ロ安全保障問題のトップと発言。

 

オブライエンと同じくサリヴァンもヨーロッパ内同盟国には米国が同じ側に立ち、ロシアとの戦略兵器交渉に臨むと理解してもらいたいと発言。サリヴァンは米ロ間には、政府民間のネットワークを狙ったマルウェアのソーラーウィンド事例、野党指導者アレクセイ・ナワルニを化学兵器で襲撃した事案、アフガニスタンのタリバンに米軍兵士殺害の賞金を提供したこと、米選挙への介入といった問題が山積していると述べた。

 

冒頭発言で就任8日目のサリヴァンは、「最も根深い課題は我が国の民主体制を機能させること」と述べた。課題リストの最上位はコロナウィルスの大流行を抑えることで、つぎが経済の立て直しだとした。また1月はじめの議事堂襲撃事件で浮かび上がった「憲政への深刻な脅威」の解決が必要とした。■

   

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Biden Administration Wants to Expand Pacific 'Quad' Relationship, National Security Advisor Sullivan Says - USNI News

By: John Grady

January 29, 2021 5:45 PM


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