U.S. AIR FORCE / AIRMAN 1ST CLASS NILSA GARCIA
米空軍はトラブル続きで正規空中給油任務に投入できない状態が続くKC-46Aペガサス給油機を「レモン」と呼ぶ。42機が納入済みで基地4箇所に配備済みの同機に別の活用方法を模索する。
今後も毎月2機のペースで納入が続くが、一部機材を「限定運用」へ投入する検討が進んでおり、中核任務の空中給油は当面想定していない。にもかかわらず、これでペガサスも支援任務を実施出来るようになる。一方で同機の完全作戦任務実施宣言は一番早くても2023年または2024年まで待つ必要がある。
「10年単位で見れば、現時点はレモンからレモネードを絞っているところ」と航空機動軍団司令ジャクリン・ヴァン・オヴォスト大将が報道陣に語った。昨日も米輸送軍団が同機のため「日常活動や戦闘実施が危険にさらされている」とまでコメントしている。
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被給油機から見たKC-46Aに問題を抱えた遠隔画像システムが機体中央部の給油装置前についているのがわかる。
KC-46では問題が色々あるが、肝心の空中給油能力はまだ完全ではない。ボーイングが179機製造契約を空軍から交付され10年経過したが、発注までこぎついたのは94機というのが現状である。当初日程から遅れ、1号機を空軍が受領したのは2019年1月だった。
一方で空軍の試験部門は給油システムの問題を解決しようとしており、給油対象機材も現在は10機種になった。ヴァン・オヴォスト大将は数ヶ月以内で5機種が増えるとしている。
対象機材のひとつがF/A-18スーパーホーネットで海軍のブルーエンジェルズが昨年末の恒例の陸軍対海軍フットボール試合でウェストポイント上空を飛んだ際に空中給油を受けた。その他海軍機材にもペガサスが搭載するホーズ・アンド・ドローグ装備が効果を発揮している。
「限定運用能力」の検討が進んでいるとヴァン・オヴォスト大将が認めたが、想定任務の種類については発言がない。空軍はこれまでも遠隔画像システム(RVS)の改良が終わるまでKC-46Aを通常の給油任務に投入しないと表明している。RVSは機内のブーム操作員が給油対象機との接続作業に使うもので、改良作業はまだ完了していない。
RVSはKC-46Aの給油任務の中核といえる。これまでの給油機ではブーム操作員が機体後部から視認しつつ作業していたが、ペガサスでは操作員はコックピットにすわる。
ヴァン・オヴォスト大将はRVS改良作業が完了するのは2023年末と見ており、全機で作業を行い、取り扱い訓練を完了刷るまで時間がかかる。このためKC-46の真価が発揮されるまで日程がさらに遅れる。
こうして問題がある中で、KC-46を限定付きだが給油任務以外に活用する。
KC-46Aは空中給油以外に人員貨物の輸送も想定し、医療搬送任務も可能だ。ペガサスは高性能戦闘管理システム(ABMS)を搭載し指揮統制機材としてテストされている。今の所こうした任務はあくまでも評価用だが、通常任務となる可能性が出てきた。
U.S. AIR FORCE/STAFF SGT. DANIEL SNIDER
題22空中給油航空団のKC-46AがC-17グローブマスターにペルシア湾上空で初の給油任務を実行した。2019年11月。
こうしてKC-46を別任務に投入しても、既存の給油機材の負担は軽減されない。空軍はKC-135RとKC-10Aエクステンダーの退役を想定しており、KC-10の第一陣はすでに機体廃棄施設に移動している。
ヴァン・オヴォスト大将はRVS改良を急ぐというが、その他にも問題もある。最近発覚したのが補助動力の問題でこれは早く解決できそうだ。
またペガサスでは給油時にブームに従来機より強い力をかけないと接続がうまく行かない。その他深刻なカテゴリー1となっている問題もあり、空中給油任務の通常実施ができない。カテゴリー1問題には貨物の固定があり、これは解決済みだが、燃料系統のもれが大量に発生している。
主翼に搭載した給油ポッドを加え、KC-46は同時に三機に給油可能となるが、これも実現が遅れており、ボーイングは予定より三年遅れて最初の9基を納入しようとしている。
U.S. AIR FORCE/AIRMAN 1ST CLASS NILSA GARCIA
KC-46Aを救命搬送任務に投入するテストがアンドリュース共用基地で2020年7月に行われた。
KC-46では品質問題が残ったままだ。昨年3月に上院の軍事委員会が聴聞会を開き、ニューハンプシャー州軍航空隊への機体納入が電気系統の問題で止まっていることが明らかになった。ボーイングはこれまでも完成済み機体に異物混入がみつかったため、納品を停止したことがあった。
未解決問題へ取り組みが続く中で、空軍とボーイングは機体納入を続けることで合意し、同社は欠陥の解決をめざし、空軍は初期納入合計52機で問題解決まで15億ドル相当の支払いを停止する。遅延や問題解決のためボーイングの損失は50億ドルを超えており、当初契約規模を超えている。
限定つきの作戦能力獲得宣言が出ればKC-46で朗報となるが、本来の主任務たる空中給油ができないままでは民間企業に空中給油任務を委託する案が重みを増す。
KC-46初の輸出先の日本にも懸念が広がっており、同国は有償海外軍事援助(FMS)をつかって昨年10月に3号機4号機の購入オプションを行使したばかりだ。日本向け1号機は2021年中の納入が予定されている。イスラエルも米上院の販売承認を受けており、8機導入が期待される。イスラエルは使用中のボーイング707改装給油機部隊の老朽化で後継機種を模索している。
BOEING
日本向けKC-46A1号機がワシントン州エヴァレットでロールアウトした。
こうした中で空軍の既存給油機が奮闘している。古参兵KC-135RやKC-10Aを退役させれば空中給油能力に不足が発生し危険、と空軍が主張することから、KC-46が主任務を果たせなる状態にでないのがあらためて浮き彫りとなっている。■
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Air Force Says KC-46 Is A “Lemon” That It's Trying To Make Lemonade Out Of
The Air Force is evaluating using the Pegasus for limited operational missions, but it’s still years away from providing its intended mission set.
BY THOMAS NEWDICK FEBRUARY 2, 2021
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