USAF
米空軍が実現を急ぐのがSAOCすなわち残存可能空中作戦センター機で、老朽化してきた現行E-4Bナイトウォッチの後継機をめざす。
NAOC国家空中作戦センターとも呼ばれるSAOCの仕様は極秘扱いだが、空軍は後継機もE-4Bとほぼ同サイズの四発機を想定する。
空軍ライフ・サイクル管理センター (AFLCMC)の大統領専用機局がSAOC事業も担当し、契約公告を2021年2月17日に発表した。「政府は引き続き、超大型機を利用してのウェポンシステムの調達戦略を完全かつ開かれた形で希求する」とある。
USAF
E-4Bナイトウォッチは国家空中作戦センターとも呼ばれる。
これに先立ち、企業から民間機改装によるSAOC提案を募集する告示が2020年12月にあった。空軍から具体的情報の開示はないままで、関連のシステム要求内容文書(SRD) は極秘扱いとなっている。
Aviation Weekの防衛記事編集者スティーブ・トリンブルが中古民間機の利用の可能性に昨年触れていた。現時点でトリンブルは「超大型機体」との規定を見てジャンボジェット原型案の実現可能性が非常に高いと見ている。
SAOCの要求内容に物理的な内容があり、必要なエンジン数も定めており、極めて厳格に管理されているのは驚くにあたらない。よく「審判の日の機材」と呼ばれるE-4Bは四機あり、堅固かつ残存性が高い機体として大統領に国家統帥権(NCA)の実現として核攻撃命令を下す手段となる。その他の軍事作戦でも指揮統制を行い、必要に応じ大規模自然災害でも機能するのが役割だ。
大統領がVC-25Aエアフォースワンで海外移動する際にはE-4Bの一機が随行することが多い。E-4Bは国防長官の外国出張にもよく利用されている。
4機あるE-4Bのうち3機はE-4A高性能空中指揮所(AACP)として1970年代中頃に供用開始し、1980年代にNAOC仕様に改造された。4機目はNAOCとして取得した。全機が747-200B型を原型とする。なお、2機あるVC-25Aも同様に747-200Bを改修した。
空軍が747原型とするSAOCの実現に傾いている兆候は別にある。2017年に米海軍とともにE-4B、E-6Bマーキュリー、C-32Aを共通機材で更新する構想が浮上していた。
E-6Bも戦略指令機で、核爆撃機部隊、弾道ミサイル潜水艦やICBM部隊への通信を維持するための代替手段となる。この任務を空軍はABNCP、海軍はTACAMOと呼称している。
USAF
An E-6B Mercury.
C-32Aはエアフォースツゥーと呼ばれ、大統領も条件により使用することがあるが、通常は副大統領が使用する。
TYLER ROGOWAY
A C-32A Air Force Two.
2019年に空軍はNAOC、高官専用機、ABNCP、TACAMOを合わせたNEATの実現を棚上げし、SAOCとしてE-4B後継機の実現に集中するとした。2020年に海軍は次期TACAMOにC-130Jを検討中と発表した。
C-32Aは双発のボーイング757が原型で、E-6Bはボーイング707を元にしている。各機材で要求性能が異なり、機材統合案は実現しなかった。
次期エアフォースワンVC-25Bの例にも通じるものがある。破綻したロシア航空会社向け747-8i旅客機を改装する決定もこうして下されたのだろう。
MATT HARTMAN/SHOREALONE FILMS
この747-8i がVC-25B へ改装される。
2016年に当選を決めたドナルド・トランプに空軍はVC-25Bが四発機である意義を説明していた。エンジン一基が作動しなくなった場合、双発機では「ただちに着陸」を迫られる、と説明資料にある。トランプへのエアフォースワン後継機調達構想について空軍の説明資料を情報の自由法に基づく情報公開で入手した。
USAF VIA FOIA
エアフォースワンについて空軍が2016年当選したばかりのドナルド・トランプに説明した資料の一部。大統領専用機にしかない要求内容として双発機ではなく四発機が必要とのくだりがある。
E-4Bでも空軍が同じ結論にたどり着いたのは想像に難くない。NEAT構想は続いていており、KC−46ペガサス給油機改装案もあったが、同機は双発のボーイング767が原型だ。
次期大統領専用機VC-25Bで747-8i を改装することになったのもE-4B後継機構想に影響している。ナイトウォッチでは充実した通信装備に加え、核爆発で発生する電磁パルス対策等が施されており、新エアフォースワンの改装内容を応用すれば747-8i原型のSAOCで費用節減につながるはずだ。
さらに空軍が中古民間機もSAOCに転用可能と発表したのはボーイングから747生産は現時点で受注済みの機体を持って終了するとの発表があったことが大きい。そうなると、今後登場する747原型の空中指揮所機材は中古ジャンボを改装する可能性が高くなる。ボーイングが政府向け機材生産のため生産ライン閉鎖を先送りする選択肢もあるが、その可能性はどんどん小さくなっている。
空軍の求める「超大型機」では747以外の選択肢がない。トリンブルは「中古のエアバスA380は対象外」と断言している。エアバスは同機生産を今年をもって終了する予定で、製造機数は17年で300機未満だが、747なら各型合わせ1,500機をボーイングは製造している。A380のサポート基盤は遥かに小さい。また空軍がSAOCを外国製機材にして安全保障や政治面で問題を起こしたくないはずだ。
ロッキードから巨大輸送機C-5ギャラクシーの改装提案が出ているのに注目したい。同機も生産は終了しているが、E-6Bの後継機になる可能性がある。
無論、空軍がどの機材をSAOCに選択するかは未定だが、747原型案に傾く兆候があちこちに現れているのは事実だ。■
この記事は以下を再構成し、人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください。
Requirements For New Air Force Doomsday Planes Seem To Preclude Anything But 747s
BY JOSEPH TREVITHICK FEBRUARY 17, 2021
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。