日本で言えば九州の一都市が非国家勢力に占拠されたままといったところなのでフィリピンも大変です。シリアやイラクが落ち着いても周辺国や遠隔地に過激思想集団が拡散するのでは手に負えません。そうなると軽攻撃機やヘリコプターの低価格機の活躍の余地が増えますね。しかしOV-10はもともとベトナム戦用に採用された機体ですが、50年たってもほぼ原形のまま使えるとはよほど頑丈に作ってあるのでしょうね。
PAF
The OV-10 Bronco Is Wailing On ISIS Yet Again, This Time In The Philippines
OV-10ブロンコはフィリピンでISIS攻撃に健在
Over 50 years since its first flight, the OV-10 is proving to the world once again just how relevant light air support aircraft can be.
初飛行から50年のOV-10が軽支援機の意義を証明中
- 南部フィリピンのマラウィMarawi市がマウテMaute、アブサヤフAbu Sayyafの戦闘部隊に5月23日以来占拠されたままだ。両勢力はイスラム国と直接つながっている。フィリピン国軍は過激派排除をめざし、反抗作戦を実施している。フィリピン空軍の主力機はなんとOV-10ブロンコだ。
- 過激派戦闘集団は同地域の占拠を狙い、念入りに作戦をねっただけに排除作戦は極めて困難だ。市内各所に弾薬物資が蓄えられ、トンネルが掘られ戦闘員が魔法のように出現しては消えている。人間の盾も広く使われ、フィリピン海兵隊、特殊部隊の隊員は住宅一戸ずつから市街地の奪回を迫られ重大な損害も受けている。
PAFのOV-10Mブロンコ
- これまで少なくとも戦闘員138名とフィリピン国軍兵士58名が戦死している。一般市民21名が加わるが実態はもっと多い可能性がある。戒厳令で住処を追われた市民は数十万名におよぶ。
- 戦闘員集団が人口集中地区を占拠していること、フィリピン空軍(PAF)に精密誘導弾の在庫が少ないことから同国に残る8機のOV-10Mブロンコ(ほとんど改修を受けていない)が全力を発揮し近接攻撃と通常爆弾を可能な限り正確に市内に投下している。ウェブ上ではブロンコが同市で攻撃を加えるビデオが見られ、事態は緊迫しており、旧式近接航空支援機の出撃回数が明らかに増えている。
NOEL CELIS/AFP/GETTY IMAGES
マラウィ上空で汎用爆弾を投下するブロンコ
- 実はブロンコがISIS勢力攻撃に投入されるのは今回が初めてではない。相当の改修を受けたOV-10が二機イラクに派遣され、特殊部隊を助けながらイスラム国戦闘員を掃討した。ブロンコを操縦したのは米海軍の訓練経験豊かなパイロットで同機を「人狩り」機に変え、レーザー誘導ロケット弾を狙撃手よろしく発射していた。同機は驚くほど信頼性が高く、運用も簡単で前線近くから発進し、厳しい状況でも敵を執拗に追い詰めた。
- PAF所属のOV-10にはイラクで活躍した機体同様のセンサーや通信機器は見当たらないが、射撃は正確でGBU-12レーザー誘導爆弾も地上にレーザー照射があれば運用できる。
- OV-10以外にフィリピン空軍は持てる装備を全部動員して作戦に投入している。AW109Eヘリコプターは機銃とロケット弾を装着し攻撃監視活動にあたる。新規取得したFA-50PH軽攻撃機も攻撃任務に早速投入された。
- 自国民が暮らす場所に非誘導式兵器を投下するのは高性能機でも相当に高いリスクだ。友軍を攻撃することもある。5月31日には自国部隊10名が死亡し7名が負傷している。それでもフィリピン空軍には同市解放のため攻勢を続ける必要がある。
AP
航空作戦にAW109E、米海軍P-3CやSF260も投入されているが、攻撃の主役はブロンコだ。
- ここに米軍も加わっており、P-3Cが同市上空を低空飛行する姿が目撃されている。オライオンはおそらく電子光学装備を搭載し、赤外線やカラービデオ装備も使い上空から監視しながら目標情報を配信しているのだろう。フィリピン軍のレステイトゥト・パディラ将軍は「当方には有効な監視偵察装備がないので米軍に援助を求めた。これは非戦闘支援である」と述べている。
- フィリピン空軍の機材は大部分が支援機や旧式対ゲリラ戦機材で今日の基準から見れば時代遅れで初歩的に見える。市街地での軍事行動military operations in urban terrain (MOUT)では電子光学センサーが有効に使えるのが同国機材にはほとんど見当たらない装備だ。そのためP-3Cが一機でも戦場上空を飛べばフィリピン軍の状況把握が相当程度に進む。
- それでも三週間にわたり米軍が関与していることは物議をかもす発言で知られる大統領ロドリゴ・デュテルテでさえ驚いたようで支援を「アメリカに一度も接触していない」と述べている。また「到着するまで知らなかった」と述べ、現地に米軍の「地上部隊」はいないと述べているが、各種報道から米特殊部隊がマラウィに展開中なのは事実だ。任務の一部でRQ-20ピューマ無人機を運用しているようで同市上空を盛んに飛んでいる。
AP
マラウィ上空で500ポンドMk82汎用爆弾二発を投下するPAF所属のブロンコ
- マラウィでのIS戦闘員との戦闘の進展は今後もお伝えする。その中でOV-10が空から戦闘員を攻撃し続けるのは確実で旧式ながらまだ現役の同機を見ると軽攻撃機が従来よりも重要な存在になっているのがわかる。
- 追記 やはり米特殊部隊が掃討作戦でRQ-20により空中偵察を提供して支援していた。
RQ-20ピューマを操作しフィリピン国軍を支援する米特殊部隊隊員の姿が
ソーシャルメディアで見られた。
- また噂ではフィリピンがA-29スーパートゥカーノ6機を受領し、ブロンコと交代するという。同機調達案はここ数年現れては消える状態だったが、今やトゥカーノがAT-6カヨーテを抑えて確実のようだ。選定結果の発表はまだないが、ブロンコ後継機の導入は再度先送りになりそうだ。A-29は米空軍が今夏進める軽航空支援機競合でも有力候補だ。■
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