これはすごい。宇宙打ち上げビジネスが一変しそうな構想が現実になりつつあります。今回はロールアウトですが、初飛行の姿を見たいものです。コンセプトをどんどん発展させていったのですね。これだけの偉容を実現させたのが民間というのもアメリカの強みですね。おそらく途中で挫折しかねない事態が何度もあったはずですが、乗り切ったのは強い意志とリーダーシップの産物ですね。完成したら使おうとする軍やほかの民間企業はその意味で起業家精神は希薄ですね。(この記事はターミナル1-2共通です)
Stratolaunch's Massive Mothership Rolls Out Of Its Nest For The First Time
ストラトローンチの巨大母機がロールアウトし初公開
This is the largest aircraft ever built in terms of wingspan, even larger than the "Spruce Goose."
翼端幅で世界最大の機体に
- 10年の開発を経て、ストラトローンチStratolaunchの巨大な母機がモハーベ航空宇宙港の格納庫で公開された。予想通り、同機の大きさと形状は圧倒的だ。翼幅385フィートは世界最大で、これまで最大だったヒューズH-4飛行艇別名「スプルース・グース」をしのぐ。最大搭載時に機体重量はなんと1.3百万ポンドになる。動力はプラット&ホイットニーPW4056六基で747-400のエンジンと同じだが推力合計340千ポンドに及ぶ。
- ストラトローンチが驚異の技術を誕生させたのは疑う余地がない。
- 同社は同機の性能を以下説明している。
ストラトローンチの再利用可能で空中発射を可能とする解決策により空港から離陸して宇宙打ち上げが可能となります。ストラトローンチ機は通常の滑走路から離陸し、悪天候を避け、航空機で混雑する空域や海上交通路を回避できます。ストラトローンチの空中発射方式で高費用になる打ち上げ順延や中止はなくなります。
- X-プライズ受賞をきっかけにマイクロソフト共同創設者で宇宙事業の構想を持つポール・アレン、航空宇宙設計で名高いバート・ルータンがコンソーシアムを組み低地球周回軌道の利用方法が革命的に変わろうとしている。そこにスケイルド・コンポジット社が加わり、かつてルータンが所有していた同社は航空宇宙の設計製造で革新的な企業だ。(現在はノースロップグラマン傘下)さらにイーロン・マスクのスペースX、および元NASA長官マイク・グリフェンも加わり夢の構想が実際に飛行することになった。スペースXのように一度加わったもののその後離反するものもあらわれたが、ポール・アレンがしっかりと方針を貫き、各社を率いてきた。
- ストラトローンチ母機の右側胴体にコックピットがあり、左胴体にはフライトデータシステム各種とペイロード制御を収める。同機は大型第二段目ロケット一基あるいは小型二段目複数を運用可能で後者は一回に複数の宇宙機を異なる軌道に送ることができる。世界各地の滑走路が利用でき、輸送コストを大幅に下げることでロケット費用も下がり、打ち上げ手順が大幅に早まる。
- ストラトローンチの強みは母機と子機の組み合わせコンセプトで航空機自体を従来の第一段目ロケットの役割とし、二段目とペイロードを運んで軌道に送る点だ。概念自体は以前からあり軍民双方でこの考え方を検討していた。オービタル・サイエンシズはL1011機にスターゲイザーの名称を付けペガサスロケット打ち上げを実施している。ストラトローンチとの違いは母機とペイロードの規模で、オービタルサイエンシズは豊富な知見を持ちコンソーシアムに2012年加入している。
ヴァージン・ギャラクティックのホワイトナイトIIもスケイルド・コンポジットの母機設計の一環だ。
- ストラトローンチの外観からホワイトナイトを思い起こす向きもあろう。同機はX-プライズ受賞につながり後継のホワイトナイトIIがヴァージンギャラクティックのスペースシップ・トゥーを抱えて離陸している。実は両方ともスケイルド・コンポジットが設計しており、ルーツはルータンの設計案にある。両機とも宇宙飛行の実施方法のコンセプトを共有しており、母機で重い打ち上げ対象を抱えて離陸してからロケット点火で宇宙機を発進させる。
ペガサスロケットを搭載して離陸するスターゲイザー
- この構想は軍事利用にも道を開きそうだ。ペンタゴンは二段式ロケット機で小型ペイロードを軌道運用する案やその他機密のシステム複数を検討しており、航空機を第一段ロケットの代わりに運用する構想を開発中だ。中国がAN-225ムリヤを取得したのも同様の構想を進めているためとみられる。
- ストラトローンチが成功すればまずペンタゴンが顧客になりそうだ。費用が下がり、打ち上げリスクが減れば偵察通信衛星運用に朗報となる。さらに衛星多数を異なる軌道に迅速に打ち上げできれば敵の対衛星攻撃に対する抗じん性が増す。また母機から米国の対衛星兵器を運用することも可能で、敵衛星を軌道上でジャミング、目くらまし、乗っ取り、あるいは破壊も可能となる。
- 米空軍がストラトローンチを調達して専用に使うのも可能だ。空軍は迅速かつ安価に低地球周回軌道に打ち上げする能力を求めている。今日では攻撃に時間が大きな要素になっている。世界各地を分単位で攻撃する能力だ。ストラトローンチに準軌道ミサイルを搭載し世界を飛行させ、迅速な敵攻撃の構想もある。ストラトローンチのような既成装備を調達すればペンタゴンも開発費用数十億ドル、開発期間を節約できる。
- ストラトローンチの初飛行は今年後半でアレンたちは2010年代末までにストラトローンチは運用可能になるとみている。■
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