歴史に残る機体13はMiG-21です。途上国には使い勝手がいい機材なのでしょう。今後3Dプリンターによる部品供給の流通市場が生まれれば、本当に100年飛行する機体になっていてもおかしくないでしょう。性能ではなく存在そのものが重要という需要もあるのですね。それにしてもロシアは中国に何回もコピーの苦汁を飲まされていますね。(ロシアもB-29で前科があるのですが)
Russia's MiG-21: The Fighter Jet That Could Fly for 100 Years?
MiG-21は100年間飛ぶのか
June 16, 2017
- 軍用機の稼働期間は概して短い。技術進歩のペースが早いと短命になりやすい。第一次大戦の精鋭戦闘機は数か月で旧式になった。第二次大戦でも大差なく、ジェット黎明期の技術進展が目まぐるしく機種全体が過去の遺物になる例も出現している。
- だが時の流れに負けない機体も数少ないがある。B-52ストラトフォートレスの初飛行は1952年だが今日も現役だ。C-130の生産も続いているが原型の運用開始は1954年だ。
- だがこれは爆撃機、輸送機で戦闘機ではない。戦闘機には耐用年数の問題がある中で新型機出現すれば対応が課題となる。このため供用期間が長い戦闘機はまれだ。
- 例外がMiG-21[フィッシュベッド」だ。
成り立ち
- MiG-21の初期検討は1953年にはじまった。MiG-15やMiG-17の成功でソ連の航空技術陣は西側機材に対抗できる自信がつき、MiG-19で初の超音速機を実用化した。ただし技術が急速に進化し、朝鮮戦争時の第一線機も1950年代半ばには旧式化していた。B-29ならMiG-15で蹴散らせても、米新型爆撃機では事情が違っていた。ソ連はMiG-21で航空優勢の確保を目指した。
- MiG-21(NATO名フィッシュベッド)はマッハ2.0超で飛び、機内に機関砲一門、ミサイルを2発から6発まで搭載し、ミサイル搭載の皮切りとなった。MiG-21も対地攻撃任務に投入され少量の爆弾ロケット弾を運用する。ソ連方式でMiG-21は地上管制により運用されたので大型レーダーは不要とされた。
- ソ連は合計10,645機を1959年から1985年にかけ生産し、インドがライセンス技術移転で657機を、チェコスロヴァキアも194機をライセンス生産している。状況が異なるのは中華人民共和国で、機材と技術文献を入手後、リバースエンジニアリングで成都J-7/F-7を2,400機、1966年から2013年にかけ生産している。全部見れば世界でもっとも大量生産された超音速機である。
供用期間の長さ
- MiG-21では現場で基本問題の多くを解決している。最新の戦闘機でもMiG-21より高速で、機体操縦性がすぐれるものは少ない。現在の戦闘機は兵装搭載量が増え、高性能電子機器を搭載するが、多数の空軍部隊にとっては高性能機材はぜいたくそのもので、安価で高速かつ維持が簡単で自国領空を守り時には爆弾数発を投下できる機材を求めている。フィッシュベッドはこうした要求に最適だ。
- 西側諸国ならフィッシュベッドは有益な機材とならないのは確かだ。航続距離が短く、搭載兵装量は低く、高性能電子装備の収容スペースもない。コックピット形状はパイロットの状況認識に逆効果だ。それでもソ連式の地上管制による戦闘機任務にぴったりの存在で西欧各国の上空を飛び限定的でも迎撃任務につくことができた。
- 冷戦時に米国はMiG-21各種を入手している。(さらに中国からJ-7一個飛行隊分を購入している)総じて米パイロットは同機を高評価しており、アグレッサー任務では訓練効果を高く実現している。訓練を積んだ米パイロットはソ連パイロットより同機の性能を引き出していたはずだ。
戦場のフィッシュベッド
- MiG-21はNATO-ワルシャワ同盟間の大規模戦は見なかったが戦闘投入の例はある。
- ベトナムでは鉛筆のように細いMiG-21が米側交戦規定を逆手に機体の大きさと速度で米護衛戦闘機が目視して向かってくる前に爆撃機を攻撃した。フィッシュベッドは初期の空対空ミサイルをその機体寸法と速度で回避できた。攻撃をかけるとMiGは基地に戻った。
- このパターンを破る事例が1967年1月2日に発生した。伝説のパイロット、ロビン・オールズ指揮下のF-4ファントムII編隊が北ベトナム空軍を罠にかけ交戦に持ち込んだ。ファントムはフィッシュベッド計7機を撃墜し、うち一機はグエン・ヴァン・コックが操縦しグエンは墜落から帰還しその後合計9機を撃墜しフィッシュベッドで撃墜王になった。ただしベトナム、シリアではMiG-21でエースになったパイロットは数名生まれた。
- MiG-21は中東各地で戦闘投入された。六日間戦争ではエジプト、シリアのフィッシュベッドがイスラエル国防軍空爆で開戦直後に破壊された。その後フィッシュベッドはイスラエルとの対決に投入され、熟達したイスラエルパイロットの前に撃墜されることが多かった。イスラエルが相手にしたMiG-21をソ連パイロットが操縦する事例もあった。
- 中東以外にアンゴラでも西側機材がフィッシュベッドに勝つ例があり、ソ連戦闘機はしょせん西側機材の敵ではないとの見方が生まれた。ただしパイロット訓練が違い直接の比較が難しい。同等の訓練を受けたパイロットの手にかければMiG-21は高性能を発揮した。インドMiG-21がインドパキスタン戦争に投入され敵機撃墜を達成している。またイラン-イラク戦争でも活躍した。
改修策
- 1980年代末になると第一線のMiG-21は減衰しはじめ後継機種と交代している。ソ連崩壊後はロシア軍事力が大幅に縮小し、ソ連時代の運用国は機材運用が継続できなくなる危機を感じた。それでもMiG-21や中国製機体を運用している国は多い。
- 現時点でMiG-21を運用中の空軍は18カ国でうちルーマニアとクロアチアはNATO加盟国でもある。以前はその他40カ国がフィッシュベッドを飛ばしていた。(中には消滅した国家もある) J/F-7は13カ国が供用中で4カ国が運用終了している。既存機の整備は中国、ロシア、ウクライナで可能で性能改修も行っている。3Dプリンターの出現でフィッシュベッドの継続運用は楽になりそうだし、予備部品も入手可能となるはずだ。
- 現在飛行中のフィッシュベッドの外観は1959年当時の機体から別機のようだ。搭載兵装も進歩し、R-60空対空ミサイル、マジック2やパイソンIIIが見られ威力は増えている。さらに電子装備の改修でレーダーや通信の性能が上がり、精密誘導弾の運用も可能だ。
MiG-21(派生型含む)は2059年でも飛んでいるか
- 中国もJ-7生産を終了し、派生型含めMiG-21の生産はすべて終了した。クロアチア、ルーマニアはあと5年でフィッシュベッドを処分する。インドも退役させはじめた。中国のJ-7各機は地方の防空や訓練用に格下げされた。
- とはいえこれでフィッシュベッドの終焉ではない。J-7、F-7の多くは旧式機になったが今後も供用される。バングラデシュは2013年に最終生産のF-7を調達し、当面別機材に交代させる必要はない。また多数の空軍部隊ではフィッシュベッド以上に複雑かつ高性能だが高価な機体は必要としない。そうなると100年にわたり供用される機材になる可能性もある。(B-52はこの例になりそうだ) MiG-21はまもなく誕生以来60年の節目となり、70周年も無理なく迎えそうだ。超音速時代の戦闘機の象徴として残りそうだ。■
Robert Farley, a frequent contributor to the National Interest, is author of The Battleship Book. He serves as a senior lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce at the University of Kentucky. His work includes military doctrine, national security and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money, Information Dissemination and the Diplomat.
This appeared last year and is being reposted due to reader interest.
Image Credit: Creative Commons.
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