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ミッドウェイ海戦75周年、中国軍事戦略家は戦史から何を得ているか


今年はミッドウェイ海戦から75周年の節目です。戦史から何を学ぶのか。日本では失敗の代名詞として細かい点にこだわる傾向があるようですが、中国は本質の戦略論で同じ事例を分析しているようです。米海軍大学校准教授が中国記事を読んで分析していますのでご紹介しましょう。

 

What Do China's Military Strategists Think of the Battle of Midway? 中国軍事戦略思考家はミッドウェイ海戦をどう理解しているか


China likely recognizes that once wars are started with America, even when militarily successful, they may be extremely difficult to end.
中国もいったんアメリカと交戦すれば、軍事的に成功しても戦争終結が極めて困難だとわかっているのだろうか

The National InterestLyle J. Goldstein June 4, 2017

  1. 1942年の6月に米海軍航空部隊は日本帝国海軍の主力空母4隻を海底に沈めて歴史の流れを変えた。勝因には戦略、暗号解読、急降下爆撃機の技量、訓練の蓄積、運のよさに加え少なからぬ勇気と犠牲が加わった。
  2. エドワード・「レム」・マッシー少佐の例を挙げよう。1930年の海軍兵学校卒でニューヨーク州出身の少佐は米海軍初の魚雷投下で命中を上げている。本人が率いる飛行隊が1942年2月にクウェジェリン礁付近で日本海軍に打撃を与えている。運命の6月4日朝に少佐は飛行隊を率いてミッドウェイ海戦の大きな局面となった空母飛龍攻撃に向かった。「僚機は隊長機が大きな火の玉になるのを見た」
  3. マッシー少佐はむき出しのコックピットに乗り乗機TBD(アヴェンジャー)から250フィート下に魚雷を投下したが、命中で発生した炎から逃げることができなかった。海戦の結果を知るものからすればアヴェンジャー隊の犠牲は無駄死にではないと言える。デヴァステーター艦爆隊に道を開き半年前の真珠湾攻撃の仇を返すしたからだ。
  4. 今日の世界では太平洋の対岸で中国がミッドウェイ海戦を真剣に研究している。北京が空母二号艦を進水させ三号艦建造に向かっていることからすれば驚くべきことでもないが中国の海軍専門誌「現代艦船」に長文記事が掲載されたのは興味深い。記事は「ミッドウェイ島への道」の表題で戦術、技術、勇敢さのいずれも取り上げず、かわりに極めて厳密に1942年春時点での日本海軍上層部にあった作戦立案の選択肢を分析している。ミッドウェイの奇跡を生んだ要因の中で中国の分析記事は「戦略洞察力」あるいは日本が軍事的に有利な位置を無駄使いした事実に着目している。
  5. 分析では日本が東南アジア各地を瞬く間に占領し、しかも驚くほど代償を払わずに達成したことから始まっている。簡単に勝利が手に入ったため「次をどうする」が真剣に問われた。1942年3月の日本海軍は二方面作戦を検討していたといわれる。南方からオーストラリアを攻略するか、北に向かいアリューシャン列島を陥落させるかだった。日本海軍の作戦を立案し真珠湾攻撃を考えた山本五十六大将はハワイ攻略の是非も検討させたといわれる。興味深いのは日本海軍はインド洋まで遠征してセイロン(スリランカ)を攻略していた点だ。分析が示しているのは東京のインド洋作戦は突飛な発想でないことだ。日本海軍がインドまで勢力を展開したことで英国は脅威を感じ、インド植民地で英国支配に抵抗する勢力を勇気づけるとともにドイツに好印象を与え、枢軸勢力が手をつなぎ石油豊富なペルシア湾をおさえる可能性が現実にあったからだ。
  6. オーストラリア侵攻は一度も真剣に日本は検討していないと記事分析は結論づけている。実施しすれば最低20万の兵員とともに限りある日本の船舶力の三分の一をつぎこむことになるからだ。日本陸軍には海軍を支援し各種作戦をアジア太平洋で展開することに全く関心がないことを中国側は指摘している。日本の地上部隊はシベリア制圧を想定していたためである。他方で海軍はハワイ占拠で米国最大の太平洋の軍事拠点を無効にし、米軍による日本本土攻撃の可能性も大きく減ると見ていたと記事では強調しており、陸軍の「主体性のなさ、非協力的態度」はあからさまで海軍を支援する作戦には及び腰だったとまとめている。
  7. 山本大将は真珠湾攻撃の立役者として後光がさすほどの存在であったが日本海軍上層部には12月7日の奇襲攻撃でハワイ燃料集積地攻撃を逸した大失敗、さらに艦船修理施設も攻撃しなかった点も見逃していなかったと記事は紹介。ただし一番の失策は米空母部隊をせん滅する機会を逃したことだった。ドゥーリットル空襲で日本本土が直接攻撃されたため、これらの失敗は日本海軍上層部で喫緊の課題と認識された。さらに日本の軍上層部は決戦は先送りできず今仕掛ける必要を感じていた。米国で空母11隻が建造中なのに日本では1隻しかなかったからだ。
  8. それでもミッドウェイ作戦に反対の意見の軍上層部もかなり多かった。中国の分析では反対派は上空援護が不十分、かつ米国が空中で主導権を握る可能性があることを根拠にしている。ミッドウェイ島自体は何ら資源のない土地だが同島を抑えることで太平洋中部の日本の海上活動を抑える効果がある。反対意見ではミッドウェイ島は小さく、防御も難しいが大部隊の駐屯も困難と指摘していた。だが中国分析では山本が例えミッドウェイ島占領に成功してもハワイ攻略作戦の実施は不可能と断念したとある。つまるところもし日本がハワイを占領すれば4千キロという大海原があれば米国と言えども日本が新たに獲得した拠点の奪回に部隊を集結させるのは困難になると見ていた。
  9. ただしここまで大胆な作戦の実施前に日本海軍は米空母部隊をせん滅する必要があり、このためにハワイを攻撃するおとり作戦で米空母を決戦に引きずり出そうとした。アメリカへの欺瞞として日本海軍は「米軍の注意を分散させる」作戦を打撃部隊四つを別行動させた。だが中国記事の分析では「作戦案が過剰なまで複雑」で各独立行動部隊にそれぞれを支援する能力がなかったとまとめている。記事は戦略方針の検討を重視し個別の戦いの進展では説明を省いている。ただ日本側の情報部門がUSSヨークタウンが珊瑚海海戦で損傷したものの迅速に修理され戦場に復帰するとは見ていなかったことを失策としている。中国記事では日本側戦力(空母4艦載機227)は米戦力(空母3艦載機234)に対して圧倒的に多いとはいえず、ミッドウェイは「過剰なリスク」になっていたと分析する。
  10. おそらく中国による評価で一番興味をひかれるのは文末の数行で日本の観点による戦争終結の話題だ。1942年春に日本が戦争で目指していたのはアメリカを「戦争終結の交渉の席につかせる」ことだった。皮肉なのは日本が勝利を収めればそれだけ米国が日本との和平交渉に応じる余地が減ることだ。この観点からいったん開戦すればどれだけ軍事勝利をおさめても戦争終結が極めて困難になるとわかる。
  11. この点をさらに深めて、一度アメリカを怒らせたり、恐喝すれば、米国は必要な犠牲を厭わず勝利のため負担も苦と思わない国であることを中国戦略思考家にも理解してもらいたい。中国側作戦立案部門には軍内部の競合関係がどれだけ危険かを本事例から学んでいるかもしれない。また民間商船が戦略予備部隊として必要だと認識し、戦略的な集中をさらすことの危険性(例スリランカ)と資源を中心的課題に収集する必要性も教訓となるはずだ。中国がミッドウェイ海戦分析から得る可能性のある教訓は日本の失敗はハワイ攻略に必要な軍事力を整備せず努力を集中しなかったことだ。地理条件は今も昔も変わらないので結論として核の時代である今日の中国戦略思考家が十分なまで高度に思考し同様の作戦を今日実施すれば即座に大惨事になるとわかっているとよい。■
Lyle J. Goldstein is an associate professor in the China Maritime Studies Institute (CMSI) at the U.S. Naval War College in Newport, Rhode Island. The opinions expressed in this analysis are his own and do not represent the official assessments of the U.S. Navy or any other agency of the U.S. government.



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