スキップしてメイン コンテンツに移動

米GMDがミサイル迎撃に成功した意味、MDAの中長期ミサイル防衛構想


技術はどんどん進んでいきます。北朝鮮が飛翔制御変更なミサイルを開発したと自称していますが、米側と同等のセンサー網を運用していないため、制御の有効性は疑問です。しかし米側も今後真剣な対応を迫られるのは間違いありませんが、技術が必ず解決策を出してくるはずです。今は北朝鮮ですが中国やロシアのミサイルへの対応もそのうち道が開けるでしょう。

Army photo

アラスカのミサイルサイロに搬入される地上配備迎撃ミサイル。

 

GMD Missile Defense Hits ICBM Target, Finally

GMDミサイル防衛が迎撃実験についに成功

 By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on May 30, 2017 at 5:45 PM

WASHINGTON: 北朝鮮の最新のミサイル発射から二日目に米国が本土ミサイル防衛の効果を初めて確認することに成功した。コードネームFTG-15とされた本日のテストではこれも初めて「ICBM級」の標的が投入されたとミサイル防衛庁(MDA)が発表した。地上配備中間段階防衛構想(GMD)には会計検査院(GAO)調べで2002年以来1,230億ドルの巨費が投じられており、今回で1999年以来の迎撃テストは18回中9回成功とちょうど50パーセントとなった。
  1. 「本日の成功で命中=撃破方式の本土ミサイル迎撃に懐疑的な向きも反論が難しくなりました」と戦略国際研究所のミサイル防衛部門長トーマス・カレイコが指摘する「本土ミサイル防衛体制に重要な日となり金正恩には悪い日になりました」
  2. どこまで悪い意味があったのだろうか。命中率50パーセントを現実の作戦で考えると、批判派の憂慮する科学者連盟がテストが非現実的で簡単なものだったと指摘するが、現在36基運用中の地上配備迎撃ミサイル(GBI)のうち18発が敵ICBMを迎撃することになる。少なくとも近未来で北朝鮮やイランには十分だと言える。ただし米政府はこの「限定的」ミサイル防衛体制ではミサイル多数を発射してくる中国やロシア相手には不十分だと認めている。
  3. MDAは今年末までにGBIを44基に増設するが、「二発発射して一発命中」では割りが悪い。このためMDAは複数目標撃破迎撃体Multi-Object Kill Vehicle (MOKV)の開発を急いでおり、迎撃ミサイルをいわば精密発射弾に変え、一発のGBIから複数弾頭を発射し目標多数に対応させる。供用開始を2030年目標だったが、MOKVは2025年に運用開始できそうだ。予算要求は2018年度に259百万ドルで、MDA総予算79億ドルの一部となっている。
MDA Photo
空中発射レーザー母機は2012年にモスボール保存となった。
  1. 長期展望ではMDAはレーザーに注目しており、2018年度予算要求で54百万ドルでR&Dを進める。半導体レーザーは電気だけを使い電源があれば何回も発射できる。軍の一部ではレーザーを実地試験しているが射程は短距離で想定は無人機やロケット弾の撃破だ。MDAはもっと難しい標的をはるかに遠距離から狙う構想で、開発中止となった空中発射レーザー構想を復活させようとしている。前回は改装747機に毒性の強い化学レーザーを満載していたが、今回は半導体レーザーを無人機に搭載する。敵発射地点近くに無人機を周回飛行させミサイルが発射されれば即座に撃破する。このいわゆる「発射直後迎撃」構想では敵ミサイルを一番脆弱な段階で攻撃し、弾頭を発射直後の上昇段階のミサイルものとも迎撃する。
  2. これに対して本日テストされたGMDは大気圏外攻撃弾Exoatmospheric Kill Vehicle (EKV) を飛んでくる弾頭部に宇宙で衝突させる方式だ。精密に衝突させ爆発物は使用しない。衝突すれば相手は粉砕される。だが目標に命中させるため地球規模の高性能センサー群の海上配備Xバンドレーダー(SBX)などからデータを指揮統制戦闘管理通信Command, Control, Battle Management and Communication (C2BMC)システムに投入し迎撃体へ指示を出す。
  3. この「命中=破壊」方式の迎撃は技術上は大きな課題でアイゼンハワー大統領が「弾丸を弾丸で撃ち落とす」と評したのは有名だが、現在では低高度はペイトリオットで、中高度はTHAADがあり、さらに高高度にGBIと当たり前に装備されている。本日のテストは満点ではなかったが、この技術の有効性を支持する向きには有利な結果を生んだ。■

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...