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ウクライナ戦の行方。侵攻の開始地点クリミア半島の奪還を目指すウクライナの作戦実行能力を西側が評価。ロシアに取っての悪夢がこれから始まるのか。

 

BBC


クライナ戦争で焦点となったのは、クリミア半島でのエスカレーションの恐れであった。クレムリンは核カードを使う方針とし、プーチン大統領が追い詰められたら核兵器を使うかもしれない、特にウクライナがクリミアに攻め込んできたら、という不安を西側諸国の人々に与えている。

キーウが国土の相当部分を取り戻した今、南ウクライナ軍(ZSU)は半島を射程圏内に収めることができるだろう。モスクワは「追い詰められたと感じたらどうするか」というハッタリをかましたが、ウクライナがどのようにクリミアを取り戻すか、その対価は見合うのか、世界で議論が沸騰している。実はクレムリンは追い詰められてはいないが、ロシアに支配権があるとの神話がモスクワ自身に破滅を招きかねない。


ロシアにとってクリミアが意味するもの

クリミアは、プーチンの強権支配の究極の目的地だ。半島はロシア帝国ナショナリズムの焦点で、征服の世界にいまだに生きている国民の心を長く悩ませてきた。ロシア超国家主義者の帝国主義的な頭の中では、ロシアはクレムリンから独立した植民地後の国々にだまされてきた。アレクセイ・ナヴァルニーのような反プーチンの野党の人物でさえ、クリミアを当然自分たちのものと考えている。

ロシアの2014年のクリミア半島侵攻と併合は、このように帝国の再来を意味し、民族主義者にとっては、それを失うことは帝国の栄光の残滓を失うことを意味する。ウクライナのロシア軍は、いわゆる不沈空母を維持するため、他の占領地域を支配するために戦ってきた以上に、間違いなく厳しい戦いを強いられるだろう。


クリミアが侵略の始まりの地

戦前、ロシアはクリミアのセヴァストポリの海軍基地をウクライナから租借していた。2014年、クリミアに無印の緑の部隊が現れたことが、半島を奪ったロシアの侵略の始まりとなった。

この地域では、クリミア・タタール人などの少数民族が迫害され続けている。タタール人は、クリミアでスターリン主義の粛清と国外追放により、人口動態の崩壊に直面しており、プーチンも同様の政策を続けている。クリミア・タタール人の反対派は、クレムリンによって投獄され拷問を受けており、2014年に運よく逃亡できた人々は、ロシアの植民地主義者に家屋を差し押さえられている。

100万人近いロシア人が半島に移住する可能性があり、人口移動に関する国際法に違反する。モスクワは、新人口がクレムリンが「迫害されたロシア語話者」であると主張しているが、実際は多くは半島に住む軍人、FSB、およびその家族だ。

2022年の空爆が転機をもたらした

モスクワがクリミア支配を固めたとき、彼らは何年も前からロシア国民に「クリミアはロシアの支配下にあり、ウクライナには攻撃手段がない」と伝えていた。それが2022年の夏、ロシアの重要な空軍基地を攻撃したことで一変した。

この攻撃の衝撃をプーチンは隠せず、半島を離れたロシア人は大パニックに陥った。「ロシア領」クリミアへの攻撃をめぐるレッドラインが何度も破られ、昨年8月以降、ロシアの黒海艦隊の航空機の半分が損傷または破壊された。

また、ロシアの復帰の象徴とされ、違法に建設されたケルチ橋を叩くことで、キーウは戦略的にも士気的にも大きな打撃を与えた。2023年後半まで完全使用復帰の見込みの同橋を損傷することで、ウクライナはクリミア駐留ロシア軍への主要補給路を奪った。


南方攻勢で最大限の圧力をかける

この数週間、当初はウクライナのクリミア奪還に懐疑的だった米国が、キーウに半島を奪取する能力があるかもしれないと発言している。米国は、ウクライナのクリミア奪還を支援する考えを温めている。NATO加盟国がウクライナに戦車やジェット機など近代兵器を供給する計画を立てたので、ZSUは占領地の残りの地域でも複合武器作戦が実行できるかもしれない。

国防当局者はゼレンスキー政権に対し、バフムートの状況は依然として危機的であり、ロシアが主張するほど戦略的な都市でもないため、新たな部隊を送り込む代わりに、ドンバス地域の強固な防衛線へ後退するよう指示した。代わり、キーウに南方攻勢の計画を準備するよう伝えた。その最も可能性の高い目標は、重要な都市メリトポリだ。

メリトポリへのZSU攻勢は、クリミアの大部分をHIMARSやその他の長距離ロケットシステムの射程内に置くことになる。メリトポリが解放されれば、ロシア軍は南と東から半減し、プーチンはドンバス地域の支配を維持するか、クリミアを守るかのどちらかを優先せざるを得なくなる。

消耗戦

キーウがザポリージャ解放に成功すれば、作戦区域の縮小を有利に利用できる。作戦地域が狭まれば、ロシア軍は凝縮され、クリミア攻撃が成功する可能性が高まる。これは、ZSUがケルソン攻撃でロシア軍守備隊を凝縮させたときと同じだ。

クリミア攻撃以来、ロシアが誇る黒海艦隊のウクライナ沿岸への出動回数は減少している。これは、攻撃によってロシア艦隊が緊張状態にあることを示しており、南部ロシア軍に対する航空支援は、特にクリミアで固定翼機多数を失った後では、期待薄だ。

キーウのこれまでの戦略は、補給線、燃料・弾薬庫、指揮統制拠点に対する消耗作戦である。南方攻勢でZSUをクリミアに接近させれば、半島でこうした作戦をさらに展開できる。

クリミアに圧力をかければ、ウクライナ軍を投入することなく、駐留ロシア軍を不安定な状況に追い込める。十分な補給もなく、ほぼ毎日砲撃を受けながら半島を保持しようとするか、自らの意思で撤退するかだ。

米国防総省はロシア国防省とバックチャンネルを維持していることを確認し、クレムリンの核兵器による妨害行為は、レッドラインを何度も越えているため沈静化しているとワシントンは述べている。NATO首脳は、ウクライナに長距離ロケットシステムや戦車、場合によってはジェット機を提供することを表明し、核戦争のリスクは消えた、ロシアの脅威はもはや意味がいと考えていることを示している。このことは中国も認めており、プーチンがすでに人気のない戦争で自暴自棄になって核攻撃を命令する可能性に軽蔑の念を表明している。

ウクライナ戦争はクリミア侵攻と併合で始まり、半島の解放で終わらざるを得なくなってきた。モスクワは不沈空母をキーウに対する作戦の中継点として使っているので、ロシア軍をクリミア半島から追放しない限り、この国が安全になることはない。■


Putin’s Greatest Fear: How Ukraine Can Take Back Crimea

ByJulian McBride

https://www.19fortyfive.com/2023/02/putins-greatest-fear-how-ukraine-can-take-back-crimea/


Julian McBride is a forensic anthropologist and independent journalist born in New York. He reports and documents the plight of people around the world who are affected by conflicts, rogue geopolitics, and war, and also tells the stories of war victims whose voices are never heard. Julian is the founder and director of the Reflections of War Initiative (ROW), an anthropological NGO which aims to tell the stories of the victims of war through art therapy. As a former Marine, he uses this technique not only to help heal PTSD but also to share people’s stories through art, which conveys “the message of the brutality of war better than most news organizations.”

In this article:Crimea, Europe, featured, Putin, Russia, Russian Military, Ukraine, War in Ukraine



コメント

  1. ぼたんのちから2023年2月14日 17:51

    ロシアのウクライナに対する侵略や虐殺等の戦争犯罪行為は、今始まったことでなく、旧ロシア帝国の領土拡張と国土統治の行動原理であった。この命と人権を蔑ろにする行為は、恐怖を生み、その影響は今もロシア及びその周辺に及んでいる。
    西欧が同様の行為を植民地等で行い、その後、西欧主義の美名の下に改心したかのように見えるが、ロシアは今もってこの行動原理を捨ててはいない。このことはロシアの後進性を強く示すものと考える。
    ウクライナはロシア帝国に占領されてから久しく、ロシアの行動原理の下に繋がれていたため、今度のウクライナ戦争は、真の意味での独立戦争になるのかもしれない。そして首尾よく戦争に勝利し、独立を勝ち取ったなら、ロシアの行動原理は崩壊し、求心力を失い、国家そのものが崩壊するかもしれない。
    しかし、気を付けねばならない。それは、ロシアが崩壊に直面すると、「ロシアの存在しない世界は必要でない」との考えがプーチンをはじめとする指導層にあり、核兵器の使用に躊躇しないかもしれない。このため記事の核戦争のリスクは消えたとの意見に同意できない。
    また、ロシアのように過去から引きずった領土拡張と国土統治の行動原理を持つ国家が他にもある。それがCCP中国であり、建国以来、他民族や国内の反対勢力に対し、攻撃や虐殺等の犯罪行為を今もって行い、挙句の果てに「中華(帝国)の復興」と叫ぶ始末。
    世界が真の意味で平和になるためには、これらの行為や原理を排除するため、これらを信奉し、実行している国家を一度崩壊させる必要があるようにも思える。この考えもまた危険な考えだが。

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