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中国海軍の増勢ぶりを横目に心配な米造船セクターの建造能力。

 

Navy photo



米軍首脳が将来の艦隊のあり方をめぐり火花を散らす裏で、米造船業の産業基盤は薄氷の上を歩く状態だ


 

2016年以降、海軍は長期戦力構造計画が示した355隻の艦隊整備の目標に向けて取り組んできた。

 しかし、海軍の野望は海兵隊の近代化戦略により複雑化し、将来の艦隊規模や構成に関して海軍指導部と議員の間で一進一退を繰り返している。

 さらに、インド太平洋地域における中国の積極的な動き(特に台湾を意識した動き)が、需要に見合った造船とメンテナンス能力の必要性を高めていると、海軍力の専門家は指摘している。

 元インド太平洋軍司令官のフィル・デビッドソン退役大将は2021年、あと6年間で中国海軍力の脅威が頂点に達すると予測した。

 保守系シンクタンク、ヘリテージ財団が10月に発表した「急増する中国の脅威に対応する近代海軍法」と題する報告書は、造船能力を高める法整備とあわせ、政策立案者が 「デビッドソンの窓 」と呼び始めている環境での行動を求めている。

 ヘリテージ財団の国防センター上級研究員ブレント・サドラーBrent Sadlerは報告書で次のように述べている。「対中戦は海上で決着がつくだろう。アメリカの勝利は、適切な海軍力を持てるかにかかっている」。

 海軍は300隻以上の艦艇を維持する計画だが、2017年以降、調達計画を平均10隻下回り、2003年以降は300隻以下になっているとサドラーは指摘した。同時期に、中国は艦隊を約150隻増加させているという。

 サドラーは、業者選定プロセスの関係で、造船能力の拡大には2~3年かかると見積もっている。だからこそ、海軍が2027年を睨んだ準備を整えたいなら、議会は次回会期で法案を可決すべきなのだ。

 海兵隊司令官デイビッド・バーガー大将David Bergerは、中国の戦力ははるかに遅れているものの、急速に拡大していると述べた。「中国が揚陸作戦能力を整備しているのは、力の誇示が狙いで、その軌道が止まるとは思えない」と、12月に開催された国防ライターズ・グループのイベントで述べていた。「能力面ではわれわれよりはるかに遅れているが、こちらは絶対的な注意を払うべきだ」と述べた。

 地域経済の活性化で利益を得る立場の議員の中には、海上輸送能力の向上を支持する者もいる。

 7月、下院軍事委員会のエレイン・ルリア議員Rep. Elaine Luria(民、バージニア)とジャレッド・ゴールデン議員Rep. Jared Golden(民、メイン)は、370億ドルの国防権限法修正案を提出し、40億ドル以上を船舶調達とメンテナンスに充当するよう求めた。バージニア州とメイン州には、米国4つの公営造船所のうち2つがある。

 うちルリア議員は当時のプレスリリースで、艦隊規模を縮小すれば「中国の脅威が最も大きい時間枠において」能力が低下すると警告した。修正案は、艦隊の維持に不可欠な官民造船所への投資、今年度中のアーレイ・バーク級駆逐艦1隻の追加建造、その他の研究開発投資と5隻の沿海域戦闘艦の復元に必要な資金を要求した。

 修正案を含む承認法案は12月に署名され、議会が駆逐艦の追加建造に資金を拠出する道筋が示された。これにより、来年度には合計3隻の艦船が誕生する。

 議員はまた、海兵隊の水陸両用艦の増産を後押しする文言を法案に盛り込み、可決した。

 同法案では、水陸両用船1隻を含む海軍造船への支出326億ドルを承認した。ただし、海軍が海兵隊と協議せずに契約を結ぶことはできないと明確にしている。

 既存艦の整備について、米艦隊司令部のダリル・コードル大将Adm. Daryl Caudleは、能力不足が「我々の(最適化艦隊対応計画)、作戦の可用性、前方プレゼンスの選択肢に対し大きく、かつ維持不能な負担をかけている」と述べている。

 海軍は現在、艦艇の補修整備に公営造船所4箇所を指定している。5番目の公営造船所の開設の論拠を問われ、コードル大将は「もちろん、......6つ必要だ」と答えた。

 海軍は、維持費と作業遅れのため、海兵隊の近代化計画「フォースデザイン2030」に対し、今後数年で水陸両用ドック揚陸艦4隻を含む水陸両用艦の退役に動く可能性があると表明している。

 海軍は、水陸両用艦を最終的に何隻にするかという分析を外部委託したが、結果はまだ発表していない。海軍は31隻を要求しているが、バーガー大将によれば、NDAAで海軍は更に拡大できるという。

 海兵隊と海軍は、艦船の配分に関係なく、造船所が置かれた不安定な立場を以前以上に認識していると、バーガー大将は付け加えた。

 「国防総省指導部は、文民も制服組も、産業基盤について、十分な知恵がないにしても、かなり意識していると思う」。

 同大将は、造船所の合併で施設数が大幅に減り、生産能力や競争が低下していると指摘した。

「産業能力、多様性が毎週のように議論されているが、以前はなかったことだ」と述べた。

  バーガー大将は、COVID-19大流行で労働力確保が業界全体に打撃を与え、造船所の能力で労働力が「主な制限要因」になっていると指摘した。同時に造船業界のビジネスの不確実性が、労働者の確保を困難にしていると述べた。

 「活発な建造体制を常に維持しなければならない」とし、生産が冷え込めば、「生産現場を復旧させるのも、労働者を呼び戻すのも、ますます難しくなる」。

 さらに、競争は長期的にはコストダウンに役立つと付け加えた。「もし、海軍作戦部長CNOに権限があれば、明日にでも造船所の数を倍増させるだろう。良い値段で艦艇を調達するためには、両方が必要だ...」。

 コードル大将は「造船所には、整備作業残をゼロにできるだけの十分な能力が必要だ。艦艇を戦場に戻すことができないのです。だから....能力を高めるため何をすべきかを考える必要がある」。■


ANALYSIS: Shipyard Capacity, China’s Naval Buildup Worries U.S. Military Leaders

1/26/2023

By Meredith Roaten


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