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ホームズ教授は今回の気球事件をこう見ている。平時有事問わず敵対的な中共への警戒のためには敵を知る、己を知ることが肝要だ。

 

F-22 Raptor.


象観測気球?スパイ気球?いや、いずれもちがう。今週モンタナとミズーリ上空で目撃され、サウスカロライナ沖でF-22ラプターに撃墜された中国の気球は、試験だったのではないか。



 確かに、下界での軍事活動について情報を集めたかもしれないが、それはおまけだ。

 筆者の推測が正しければ、北京が北米上空に気球を飛ばした最大の理由は、米政府や軍、そして米国民の反応を見るためであった。

 そして、その後の報道機関やソーシャルメディアでの騒ぎを見る限り、その通りになった。習近平に有利になった。

 中国は今後、アメリカの心理を学んだことを活かして、「3つの戦場」戦略を研ぎ澄ますだろう。三戦とは、法的手段、メディア手段、心理的手段を駆使し、政治的・戦略的環境を自国に有利になるように形成する中国の徹底的な努力のことを指す。これは24時間365日の努力であり、崇高な戦略的伝統に則ったものだ。

 中国共産党の初代主席で軍部の北斗毛沢東は、弟子たちに「戦争は流血のある政治であり、政治は流血のない戦争である」と訓示していた。

 毛沢東の世界観では、平時は存在しない。共産主義の中国には、常に戦争がある。

 そして、敵を知ることが勝利への不可欠な土台となる。毛沢東や孫子をはじめ、戦略論や歴史学の大家は、現場指揮官やその政治的主人に、敵対しそうな相手をよく知るよう繰り返し呼びかけている。しかし、重要なことはすべて数えることができるわけではない。

 敵を正確に把握するためには、艦船や飛行機、戦車の数を数えたり、工業能力を推定したりするだけでは不十分だ。敵の文化や社会といった無形的なものを理解する必要がある。

 今回の気球観測は、中国の三戦攻勢にどう合致するのだろうか。例えば、あなたが北京で、主要な敵である米国を抑止または威圧するための戦略や戦術を設計したいとする。そのためには、相手が外部から来た刺激にどのように反応するかを知る必要がある。

 そこで、相手の反射神経をテストするのだ。地上から丸見えの米国領空に超軽量機材を送り込むなど、奇妙に思えるようなことをする。そして、彼らの反応を測定するのだ。

 直接の脅威とならない侵入に過剰反応するようなら、何かを学んだことになる。つまり、アメリカ人の顔色をうかがうことで、文化的な神経を逆なですることができることがわかる。人民解放軍がアメリカの兵士や水兵、飛行士を大量に殺害するため、特にアクセス防止センサーや兵器を建設しているような憂慮すべき事態に、一般人はほとんど無関心なようだ。見えないから、気にならないということだ。

 しかし、北米大陸上空に非武装の外国機が現れると...気球の目撃には、戦略的な意味がある。抑止や強制には、敵対国が大切にしている価値を脅し、指導者が逆らえば脅しを実行に移すぞ、と敵対国に納得させることが必要だ。

 北京は、西太平洋の米軍遠征軍を威嚇しワシントンの戦略的行動に影響を与えられるか探っているのか。

 しかし、西半球で悪さをすることで、抑止や威圧、あるいは注意をそらすことはできる。それが、2023年の中国によるバルーンブリッツの教訓だ。

 今週の出来事は、共産中国が戦時下でも平時でも常に攻撃的であることを教えてくれた、いや、思い出させてくれた。また、私たち自身のこと、そして自国への脅威に対するこちらの鋭い感性についても教えてくれた。ホワイトハウス、フォギーボトム、国防総省などの頭脳集団が、大国間競争の時代における大衆感情を管理する努力に、この知識を反映させることを望むばかりだ。中国の3つの戦法に対しアメリカ社会を硬化させることができるかが問われる。

 敵を知り、自分を知れば、有利な立場に立てる。■



Dr. James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the U.S. Naval War College in Newport, R.I., and a Nonresident Fellow at the Brute Krulak Center for Innovation & Future Warfare, Marine Corps University. The views voiced here are his alone.


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