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存在自体が悪、民間軍事企業ワグナー(ワグネル)はここまで非道な事業を展開している。ウクライナ、アフリカ、リトアニア等。さらにロシア国防省とも対立し、国家乗っ取りまで画策するのか。

 


米国の外交文書と内部文書は、プーチンの盟友が率いる準軍事組織と世界的なネットワークの拡大を詳細に記している



メリカとヨーロッパ同盟国は、プーチン系オリガルヒが運営する「ワグナー」として知られるロシア準軍事組織が、ウクライナで重要都市を占領し、アフリカや世界の他の地域にもその影響力を拡大する中、その急速な拡大を阻止に動いている。

戦闘員数万人をかかえたワグナーグループが軍事的脅威として出現したことが、今後数年で深刻な世界的課題になる可能性があると、米国とヨーロッパの当局者は見ている。

 ワグナーがアフリカで強化中の活動では、訓練ずみ戦闘員がスーダンや中央アフリカ共和国などの政権で重要な安全保障機能を果たしているが、一連の米国政府公電や、同グループのリーダー、エフゲニー・プリゴジンYevgeny Prigozhinの内部ネットワークからの文書に詳細が書かれており、POLITICOが入手し外部専門家によって検証してもらった。

 プーチン大統領の側近としてプリゴジンの力が増していることは、電報や文書にも詳述されている。西側諸国政府は、今後数年間で国家安全保障や外交政策に広範な影響を与える可能性があると考え、その脅威を食い止める措置を取るよう促している。

 米国、ヨーロッパ、アフリカの外交官たちは、バンギ、キガリ、ブリュッセル、ワシントン、キーウ、ロンドン、リスボンなど世界各地の首都で非公開会合を開き、ワグナーの足跡を制限する方法を議論している。公文書によれば、中央アフリカ共和国からワグナーを追い出す戦略的ロードマップも作成され、配布された。ワグナーは金鉱を支配し、広大な複合施設にするため戦闘員を送り込んでいる。米国当局は、ワグナーを国際テロ組織に指定するかも議論している。

 一方、ロシアがウクライナを標的にし始めてから、ワグナーは戦場で新兵数千人を隊列に加え、ソレダル市を含むドンバス地方で軍事的勝利を収めるまでになった。

 プリゴジンは、これまで同グループとの関係を否定していたが、昨年、公に関係を認めた。ウクライナの最前線からプロパガンダ風のビデオやソーシャルメディア投稿にしばしば登場し、自軍を戦争の英雄や指導者として売り込むと同時に、欧米の制裁をあざ笑っている。

 ワグナーはプリゴジンの勢力圏の一片に過ぎない。プリゴジンの関連企業ネットワークは、以前から報告されている。プリゴジンは、外国の選挙に干渉していると公に認めてもいる。彼は、アメリカの選挙に干渉しようとしているとして、アメリカから特別視されているロシアのトロールファームと関係がある。そして最近、彼はインターネット・リサーチ・エージェンシーとして知られるトロールファームを指導し、資金を提供していると認めた。このグループのアフリカでの存在と活動も国際人権団体が追跡してきた。

 しかし、POLITICOによる数カ月にわたる調査で、ワグナーを含むプリゴジンのネットワークが、どこまで広範囲な国際的軍事・政治的影響力作戦に成長したかについて、新情報が明らかになった。また、米国と同盟国が、特にアフリカでのワグナーの拡大と影響力を鈍らせようとしていることについて従来報告されていなかった詳細が明らかになってきた。

 「プリゴジンは長い間、犯罪者であった。その活動の性質は変わっていない」。ある米政府関係者は、「ただ、活動が大きくなっただけだ。そして、何よりもウクライナで大きくなった」とある米政府関係者は語った。

 米国とヨーロッパは、中央アフリカ共和国を含むアフリカで、民間人を標的にしたり強制移住させるなど、膨大な人権侵害を生んだ出来事をワグナーが指揮してきたと考えている。

 「ワグナーはクレムリンで比較的ユニークな腕の持ち主だ。プーチンはアフリカや世界中で彼を道具の一つとして使っている」と、2人目の米政府高官は語る。「だから、われわれのアフリカ政策には懸念がある。しかし、我々にとって、ロシアが秘密行動と軍事行動と政治的影響力の間の境界線をどのように曖昧にしているかが問題でもある」。


Yevgeny Prigozhin attends the funeral of Dmitry Menshikov.

ロシア・サンクトペテルブルク郊外のベロストロフスコエ墓地で、ウクライナで死亡したワグナーグループの戦闘員ドミトリー・メンシコフの葬儀に出席するワグナーグループのエフゲニー・プリゴージン代表(2022年12月24日撮影)。 | AP Photo


POLITICOの調査で以下が判明した。




  • ワグナー含むプリゴジンのグローバルネットワークは、ロシア国家と直接的な関係を持ち、世界中で事業を拡大している。従業員や戦闘員は、連邦保安庁や国防省含むロシア高官と頻繁に連絡を取り合っている

  • プリゴジンのネットワークは、長年にわたり他国の政治体制に干渉してきた。しかし、ここ数年、反NATOや反西欧の感情をあおるため、偽情報や政治的影響力の行使をエストニアを含む欧州連合内に拡大しようと試みている。メキシコにも拠点を広げようとしたがパンデミックにより、計画は頓挫したようだ

  • ワグナーは過去数年間、アフリカでの軍事、政治、ビジネスの存在感を強めており、歴史的に米国や欧州の財政・軍事的支援に大きく依存してきた国々で、ロシアの影響力が増すのを西側が懸念している


 この記事は、POLITICOが入手したワグナーに直接焦点を当てた米国政府公電を一部ベースにしている。また、欧米の報道機関との国際的なジャーナリズムの共同作業を通じて入手したプリゴジン・ネットワークのロシア語内部文書やメモも基になっている。ドイツの報道機関WELTが最初に文書を入手し、POLITICOを所有するAxel Springerを含む他の報道機関とも共有した。

 文書と電報は、偽情報活動に従事する企業を含む、プリゴジンのネットワークに関連する企業に関する既報や調査を裏づけている。また、世界有数の準軍事組織であるワグナーが日常的にどう機能しているかについても、前例のない洞察を与えている。例えば、戦闘員の訓練方法、プロジェクトの優先順位付け、資金投入の決定、世界各国の政府高官とのつながりの程度などが挙げられる。

 文書は2014年から2021年までの8年間にわたり、ワグナーを含むプリゴジンにつながる広大な世界的ネットワークに触れている。

「エフゲニー・プリゴジンを理解する上で重要なのは、本人の影響力の帝国は大きいものの、彼自身だけで作ったものではないということだ」と、ワシントンに拠点を置くシンクタンク、ニューアメリカの未来フロントライン担当のキャンディス・ロンドーは言う。「トロールファーム、ワグナーグループ、ペーパーカンパニー、映画制作など多方面に及んでいる。通常の軍の将軍とはちがう」。


Visitors wearing military camouflage stand at the entrance of the PMC Wagner Centre.

2022年11月4日、ロシアのサンクトペテルブルクで、国家統一記念日に行われたオフィス街の公式オープニングで、PMCワグナーセンターの入り口に立つ訪問者たち。 | Olga Maltseva/AFP, via Getty Images


 POLITICOは協力者とプリゴジンネットワークの文書に含まれるデータの裏付けを試みようと、Recorded FutureとC4ADSという2つの研究機関を含む外部の専門家に協力を依頼した。POLITICOはまた、他の研究者や学識経験者にも文書を確認するよう依頼した。

 Recorded Futureの上級脅威情報アナリストBrian Listonは、「我々が検討したところでは、もしこれらの文書が本物でないのなら、ここまでのデータベースやデータセットを構築するため相当な労力が必要になるだろう」と述べている。「私がこれまで見た中で、最も精巧な偽物のセットだろう。だが、今回見たものは本物だと信じています」。

 リストンによると、文書は「完全なデータセット」に見えないという。「欠落しているデータがある。文書は、ワグナーとプリゴジンの内部を見事に描き出している......しかし、期待していたような、まだ見ていない、あるいは別のセットかどこかに含まれているものがある」とし、「その意図や理由もわからない」。

 C4ADSのアナリストで、文書の一部を見たアレン・マガードは、プリゴジンのネットワークに関するオープンソースの財務情報が限られているため、文書内のデータの裏取りは困難であると述べた。

 それでもマガードは、C4ADSが保有するオープンソースデータの中から一致するものを特定し、文書内の情報の一部を裏付けることができたと述べている。

 「この組織は......この文書の中で、予想以上にロシア国防省に兵站を依存しているのが明らかになったようだ」とマガードは述べている。「また、同文書は、メディアでの引用に敏感に反応する組織であることを描いているようだ。これは、研究者多数の結論と一致する。つまり、ワグナーは実際、準軍事部門を有する広報組織というより、むしろその逆になっているのだ」。

 マガードなど専門家は、プリゴジンのネットワークがどのように運営されているか不透明なため、一連の文書に含まれるすべてのデータの正当性を証明するのは困難と指摘している。例えば、関連会社の企業構造は透明ではない。

 本レポートで引用した文書は、POLITICOが独自に検証し、専門家や関係者へのインタビューを通じてさらなる裏付けを得ることができたものだけである。

POLITICOは、ワーグナーの活動について、米国と欧州の現職・元職員数十人に話を聞いた。ほぼ全員が、国家安全保障上の機密事項を話すために匿名を許可された。

 米国と欧州の情報機関は、文書に関するコメントを拒否した。米国家安全保障会議はコメントを控えた。欧州委員会のピーター・シュタノ報道官は、ワグナーは欧州連合と同グループが活動するすべての国にとって「脅威を構成している」と述べた。「ワグナー・グループは、国際法に反し暴力を煽り、天然資源を略奪し、民間人を威嚇するため、民間軍事工作員を募集し、訓練し、世界中の紛争地帯に派遣している」。

 プリゴジンの代理人は、POLITICOの詳細な質問に答えなかった。「同じ質問に何度も答えている」とその人物は言った。「毎回同じことを言わされるのには困惑するばかりだ」。



ネットワークの拡大

 レニングラード生まれで61歳のプリゴジンは、強盗や詐欺などの罪でソ連の刑務所に9年間投獄された後、独立したばかりのロシアでケータリング業で財を成し、プーチンにも仕えた。

プリゴジンは当初、ワグナー・グループの設立に関与したことを否定していた。特に、ロシアが悪名高い人権侵害の記録を持つ政権を支援する過程で、国際情報機関の目に留まるようになったからだ。しかし昨年、プリゴジンは、ウクライナのドンバス地方におけるロシアの利益を守るために、2014年に同グループを結成したと公に認めた。

 昨年初めのロシアのウクライナ侵攻により、同グループの勧誘活動、活動範囲、プーチン側近内での影響力が一気に加速したと、公電は述べている。

 過去9カ月間、米欧当局者は、ロシアがロシア軍部隊と一緒に活動するグループを現場で活用している範囲に驚き、同じシナリオが世界の他の国々で展開されるのを防ごうと動いてきたと述べている。米国と欧州は厳しい制裁を新たに課し、同団体の武器アクセスを制限し、ウクライナでの進展を鈍らせようとしている。

 POLITICOが入手した米国政府公電では、ワグナーとプリゴジンに対する米国の懸念を強調し、本人は 「新たな卓越性」を獲得したとある。


A closeup of Yevgeny Prigozhin.

ロシア・モスクワのクレムリンで行われたプーチン大統領と中国の習近平国家主席の会談に先立ち、ロシアの実業家エフゲニー・プリゴージン氏が映し出された。 | Pool photo by Sergei Ilnitsky



 「プリゴジンはウクライナ戦争のエスカレーションを求める主な声だ」と公電は伝え、ワーグナーのリーダーは「プーチンへのアクセスと影響力を高め、戦争から金銭的な利益を得るため戦争屋としての役割を活用」していると付け加えた。

 欧州高官も同様の指摘をしている。「ワグナーをロシア軍と一緒に戦わせるだけでなく、プリゴジンはロシア国防省に(グループを)承認するよう強要している。これは全く新しい展開だ」と、マリでこのグループに対処した経験のあるこの高官は語った。「軍事的な強さだけでなく、政治的な地位も獲得している。彼らがこれほど巨大なプレーヤーになるとは思ってもみなかっただろう。彼(プーチン)が基本的にクレイジーな犯罪者を認めていることが変化だ」。

 ウクライナでは、ワグナーグループがロシアから囚人何万人を呼び寄せ、最前線で戦わせ、東部、特にバクムート市での攻勢を後押ししている。「連中はどんどんやってくる。失うものが何もないようなものだ」とウクライナ国防省の顧問は1月のインタビューで語っている。


A poster displaying a Russian soldier with a slogan reading Glory to the Heroes of Russia decorates a street near the PMC Wagner Centre.

サンクトペテルブルクのPMCワグナーセンター近くの通りを飾る、「ロシアの英雄に栄光あれ」というスローガンを掲げたロシア兵を描いたポスター(2022年11月4日撮影) | Olga Maltseva/AFP, via Getty Images


 POLITICOが調査した文書では、ワグナーグループがロシアの貧困地域から大量採用した隊員に規律を浸透させようとする方法について、新鮮な視点を提供している。例えば、ワグナーでは、ソーシャルメディアの使用、機密任務の写真の携帯電話への保存、金銭の盗み見、薬物やアルコールの乱用などを行った戦闘員を処罰している。また、同社リーダーは従業員の電話を監視し、潜在的な不正行為を調査するためポリグラフテストも実施している。

 2017年に広く報道された事件では、ワグナー戦闘員がシリアで囚人の首をはねる様子を撮影し、投稿していたことが発覚した。被害者の家族は、この動画の公開後、ワグナーを訴えた。

 POLITICOが確認し、専門家が裏付けをとった文書やメモでは、この事件にはホムス第4突撃大隊の少なくとも5人のワグナーの戦闘員が含まれていたことが確認された。また、誰がこの事件を撮影したのか、どのようにしてビデオが公に漏れたのかを特定するために、ポリグラフテストを用いた大規模な内部調査が行われたと、文書とメモが詳述している。

 内部で混乱しているにもかかわらず、プリゴジンは世界帝国を拡大し続けた。ここ5年間、アフリカや中東に新人を送り込み、ワーグナー活動を強化した。文書によると、そのネットワークはまた、歴史的に西側と強い結びつきがある国々に新しいオフィスや事業を設立しようとしてきた。

 2020年、プリゴジンのネットワークにつながる人々はメキシコに事務所を開設しようとしたが、COVID大流行が計画を遅らせたり、挫折させたようだ。また、文書によると、同グループはエストニアで、ユーロ懐疑論とNATOへの不信感をあおる影響力行使を行おうとした。そしてこの2年間、ワグナー戦闘員は中央アフリカ共和国、ガーナ、ブルキナファソといったアフリカ諸国に出現している。

 POLITICOが入手した米公電では、米当局がコソボなどでのワグナーの潜在的影響力を懸念し、コンゴ民主共和国にワグナーの部隊がいるという報告も受けたが、現地当局者は存在を否定しているという。

 グループの拡大支援のため、ワグナーは車両、弾薬、武器を購入し、部隊に支給している。西側の制裁にもかかわらず、武器を確保し、海外に出荷する方法を見出している。

 文書数点では、西側政府が取り締まりをしているにもかかわらず、プリゴジン企業が軍需物資を公開市場で調達している実態を示している。

 文書には、広範な財務および在庫情報、すなわちプリゴジンのネットワークが世界中で活動を支援するためにどのように物品を購入し出荷したかについての詳細が含まれている。調達した車両多数を示す文書を研究した専門家は、オープンソースの貿易・関税データに記載がある車両数台を特定し、1台はオランダの三菱ディーラーに突き止めた。

 米国と欧州はここ数週間、ワグナーとプリゴジンの関連企業へ新たな制裁を課し、同グループがウクライナでの活動のために武器や装備を購入する能力を鈍らせようとしている。米国は、アフリカでのプリゴジンとワーグナーの活動に関連する企業にも同様の制裁を課している。過去数年の制裁は、プリゴジンを直接の標的とし、配下の企業や関係者も対象としている。財務省はプリゴジンをブラックリストに載せた。米国は、プリゴジン企業が新規ビジネスを獲得するのを阻止し、世界中で活動をより困難にする動きも見せている。

 今回の金融制裁は、新たに制裁に加えられたものだ。バイデン政権はまた、2017年に米国が過去にブラックリストに載せていたワグナーを、国際犯罪組織へ分類する動きも見せている。同団体がウクライナの戦場で地歩を固めるための資源獲得をより困難にするため、分派一部を制裁したのだ。

 アントニー・ブリンケン国務長官は1月、ワシントンで開催された米アフリカ首脳会議で、ワグナーグループについて「彼らは安定を脅かし、良い統治を損ない、国から鉱物資源を奪い、人権を侵害する」と述べた。


モスクワとのつながり

 プリゴジンはウクライナ戦争で勢いづいたと専門家は言う。

 彼の姿勢が変わったのは、戦闘員が戦場で前進し始めたときだ。2022年9月、プリゴジンは自身のケータリング会社を通じて声明を出し、2014年にグループを設立したと認めた。

しかし、グループがどのように資金を調達しているのか、そして組織内部で誰が采配を振るっているのか、詳細は乏しい。それは、同グループが欧米の制裁に反抗してビジネスを行うために、ペーパーカンパニーやカットアウトを利用しているためでもある。POLITICOが入手した米国公電によれば、CARでの採掘事業を行うために、Midas Resourcesというマダガスカルで登記された会社に依存していることがわかる。

 専門家は何年も前から、同グループはロシア国家から多額の資金を受け取っており、さらに制裁を守らない政府からの警備や採掘契約の利益で補っているとの仮説を立てている。

 ワグナー本部はロシアのモルキノにあり、対外軍事情報機関GRUの第10分離特殊目的旅団と基地を共有している。

 ワグナーとロシア国家とのつながりは明白であるにもかかわらず、クレムリンはワグナーとの関係を認めておらず、モスクワからの資金がどのようにワグナーの金庫に流れ込んでいるのか、信頼できる報告は皆無に近い。

 他のジャーナリストや研究者は、ワグナー工作員がロシア情報機関と連携した事例を明らかにしている。そして、POLITICOが調査した文書数点は、その関係を裏付けている。

 文書によると、グループはロシア国家と直接つながっており、機密度が最高の作戦数点で、ロシア高官と連絡を取り、戦略を練っていることがわかる。例えばFSBとして知られる連邦保安庁と、シリアなどの国内にあるワグナーとの間で緊密な連携を指摘する文書がある。

 ワグナー社員は、ロシア高官とも直接取引している。

 CIAの元ロシア・アナリスト、マイケル・ヴァン・ランディンガム氏は、「ワグナーがロシア政府の準機関として機能していることは、明らかだ。ロシア政府がリソースを持っていないか、直接的な利益を見出せないくてもワーグナーを通してそれを行える場所に配置されている」と述べた。

 英国下院外交委員会の関係者は、2022年10月の調査で、ワグナーとプリゴジンのロシア国家とのつながりを強調した。

 「ワグナー・グループは、クレムリンの完全な代理人であることと、利益を追求する商業的な組織であることの間を切れ目なく移行している」と公式調査結果は述べている。「このことは、動機の把握をしばしば困難にするだけでなく、私的なものと公的なものとの境界があいまいで流動的な体制として対処が難しい実態を浮き彫りにしている」。

 米国当局も、プリゴジンの仕事とクレムリンを結びつけている。POLITICOが入手した公電によれば、ウクライナ戦争でのプリゴジンの囚人募集は、違法なのに、モスクワ当局に支持されていると考えている節がある。

 こうした明確なつながりがあるにもかかわらず、ワグナーを研究する研究者や学者、さらには情報機関関係者にとっての疑問は、ワグナーがどの程度ロシア国家から資金を受け取っているかということだった。POLITICOが調べた文書は金銭的なつながりを示しているようだ。

 ロシア国防相セルゲイ・ショイグに宛てた手紙で、プリゴジンは、2015年にクレムリンが同省のため貨物船8隻を購入するよう指示を出したとある。プリゴジンは手紙の中で、企業4社(彼の帝国の関連企業で有限責任会社として登録されている)が船舶を購入し、ノヴォロシースク港を通じ出荷したと述べている。プリゴジンは通関手数料の援助をショイグに求めていた。

 専門家は、過去にプリゴジンが税関や貿易事務所から会社登記を隠すように動いていたこともあり、船舶譲渡を確認できなかった。しかし、専門家が手紙にある企業をオープンソースの貿易・関税データベースで調べたところ、少なくとも1社はプリゴジンと関係があり、過去に彼の資産の移転に使われたことがあるのを確認できた。

 「C4ADS貿易データによると、記載された企業は、セイシェルに拠点を置く会社から出荷されたプライベートジェットの受領者でもある」とC4ADSは声明で述べている。「注目すべきは、そのプライベートジェット機に記載されている識別情報が、米国当局がプリゴジンのものと考えているものと一致することだ 」。

 ロシア政府はコメント要請に応じていない。

 ワグナー、プリゴジンのネットワーク、ロシア政府内のユニットにはつながりがあるものの、プリゴジンにはクレムリン、特に国防省と公然と争った過去がある。政府関係者や専門家によると、プリゴジンがウクライナ前線から頻繁にメディアに登場し、彼の部隊がバクムートなどの戦場での重要な作戦を引き継いでいることで、緊張がここ数ヶ月で高まっているようだという。

 ロシアが戦略的な町ソレダールを占領した後、プリゴジンはワーグナーの成功を自慢する一方で、勝利に果たした国防省の役割を軽視した。

 プリゴジンはプレスサービスを通じ、「ソレダールへの攻撃にワグナー以外の部隊は参加していないことを強調したい」と声明を発表した。

 ワグナーと国防省の間に現在進行中のいさかいをさらに証明するものとして、12月にソーシャルメディアに流出したビデオには、ワグナー戦闘員がロシア国防省を批判し、参謀長を「クソ野郎」と呼び、弾薬の追加輸送を要求している様子が映し出されている。

 ワグナーに関するメディアの注目は、プリゴジンがロシア政府内の政治的地位、つまり公的資金に直接アクセスでき、グループの役割を強固にするような地位を狙っているという憶測をさらに煽った、と専門家は指摘する。

 「プリゴジンには政治的野心がある。彼はオリガルヒや富豪として留まるだけを望んでいるのではない。政治的野心は高まっている」と、ワシントンに本部を置く保守系シンクタンク、ジェームズタウン財団の主任研究員セルゲイ・スカンキンは言う。「ロシア当局と政治エリートは、ワグナーの存在とプリゴジンの政治的野心に気づいている」。


Yevgeny Prigozhin, top, serves food to Vladimir Putin.

2011年11月11日、ロシア・モスクワ郊外のプリゴジンのレストランで、ウラジーミル・プーチン首相(当時)に料理を振る舞うエフゲニー・プリゴジン(上)。 | AP Photo


プーチンへの応援

 文書によれば、プリゴジンのネットワークとロシア国家とのつながりは、メディアや偽情報キャンペーンなどを通じて、プーチンや他のロシア高官を支援する国内活動を通じさらに強固なものとなっている。

 彼は長年、米国の選挙を含む外国の選挙に干渉し、世界中で偽情報キャンペーンを展開したことで非難されてきた。プリゴジンネットワークは、国内でも同じ戦術をとっている。

 文書や専門家によると、プリゴジンは、ペイトリオット・メディア・グループと呼ばれる複合体オンラインニュース配信会社と提携し、反欧米感情を促進し、特定の候補者を支持する記事を書くようジャーナリストに金を支払っている。

 POLITICOは、プリゴジンの偽情報活動につながる工作員が、2018年のロシア大統領選の報道で揺さぶりをかける作戦を計画し、資金調達し実行した方法について、資金計画やメモを確認できた。プリゴジンネットワークの影響力活動はよく知られているが、今回の文書では、国内キャンペーンを正確にどのように計画し、誰に支払い、ジャーナリスト報道をどこまで誘導したかについて、新たな詳細が明らかになった。論文に含まれるメッセージングと手法は、プリゴジンのトロールが海外で活動する方法とほぼ一致していると専門家は述べている。

 2018年3月17日から19日にかけ、プリゴジン工作員はペイトリオット・メディア・グループ傘下の7つの報道機関を利用し、プーチンのイメージを高め、反欧米感情を促進する記事を仕込んだと、文書には書かれている。

 ある文書には、不正選挙や投票用紙の詰め込みといった信頼できる公的な主張があるにもかかわらず、ロシアの2018年選挙の正当性について書くよう記者に求める指示が含まれていた。また、投票所での問題を書くことを控え、有名人やスポーツ選手、その他の公人から話を聞いて主張を裏付けるようジャーナリストに求めていた。

 当時、ロシア当局は野党政治家アレクセイ・ナヴァルニーの勢いを懸念していた。ナヴァルニーは立候補を拒否されたものの、ロシアを遊説し、市民に選挙をボイコットするよう呼びかけていた。

 選挙3日目にプーチンの勝利宣言を報道し、ナヴァルニーを不正投票と非難する報道が出た。プリゴジン工作員は、ある文書によると、プーチンが「国と市民のために多くのことをした」という主張を裏付けるため「専門家」を使うように報道機関に指示していた。

 専門家はこの文書を研究し、その内容をオープンソースのネットワークと照合した。この指示は、プリゴジンのメディア帝国傘下の少なくとも1つの出版社が実行したようだと、専門家は述べている。

 ペイトリオット・メディア・グループの出版社ポリテクパートは、「専門家が強制投票に関する神話の出現を説明」など、ワグナーの要求に沿った記事を掲載した。また、ナヴァルニーのチームが 「意識を操作する方法を用いた」ことに焦点を当てた記事もあった。現在、URLは404エラーを返しており、記事が削除されたか、インターネットの片隅に移動されたことを示唆している。また同誌は、選挙の最初の結果を受けて、当時のロシア下院議長を引用し、選挙の正当性について「何の疑いも持っていない」とする記事も掲載した。


Worldwide propaganda webs

A four-story building known as the troll farm in St. Petersburg, Russia.

「トロール農場」として知られるインターネット調査機関の建物を示す(2018年2月17日、ロシア・サンクトペテルブルクで)。 | Naira Davlashyan/AP Photo



世界規模でプロパガンダの網をかける

 プリゴジンのネットワークは、ロシアの地政学的利益を促進し、反欧米感情を広めるため、世界中で偽情報キャンペーンも行っている。

 元ケータリング業者は、米選挙に繰り返し干渉しようとしたことで知られるトロールファーム(Internet Research Agency)と長い間つながっていた。同機関は司法省の調査対象で、2016年大統領選に関するロバート・ミューラーの特別調査でも焦点となっていた。米国は、プリゴジン企業であるコンコード・マネジメント・アンド・コンサルティングを選挙妨害の容疑で8件の起訴したが、最終的には不起訴となった。

 POLITICOが調査した文書や欧米当局者へのインタビューによると、プリゴジンは、ガーナやナイジェリアにトロールファームを設置するなどして、米国の選挙を含む欧米の政治体制に干渉しようとする努力を強めてきた。ロシアのオリガルヒ自身が最近、2022年の米中間選挙への介入を自慢している。

 「我々は干渉し、干渉しており、干渉するつもりです」とプリゴジンは自身のテレグラム・チャンネルに書き込んだ。「慎重かつ正確に、外科的に、我々自身の方法で」。

 POLITICOが調べた文書によると、プリゴジンの影響力行使の一部は、「マガダン」と呼ばれるプロジェクトに該当するようだ。

 うちいくつかの文書には、マガダン計画のために広範な影響力行使を行うプリゴジン従業員の給与情報が含まれている。文書を確認した専門家は、「Foundation for the Fight Against Repression」として知られる団体の代表であるMira Teradaを含む、給与名簿に記載がある数人の身元を確認した。同団体はプリゴジンと関係があり、ロシアのプロパガンダを広めていることで知られる。カナダは最近、同団体に制裁を発動した。

 同団体はPOLITICOへの声明でテラダが組織の長として働いているが、マガダン計画については何も知らいと認めた。声明はまた、財団の使命は西側とロシアの世論に影響を与えることだとも述べている。

 「アメリカ、フランス、イギリスの警察の無法ぶり、西側諸国の囚人へのとんでもない暴力と労働搾取、NATOによる戦争犯罪について、できるだけ多くの人に知ってもらいたい」と、当初ロシア語で送られたこの声明は述べている。

 マガダン計画の範囲は明確でないと、POLITICOと文書を検討した専門家は述べている。しかし、このグループは、ヨーロッパ、メキシコ、アフリカの一部で、新たに考案された影響力キャンペーンも行おうとしているようだ。

 例えば、POLITICOがレビューし、専門家がオープンソース情報で裏付けた戦略メモによると、プリゴジン・ネットワークはエストニアの政治体制に干渉しようとしたという。

 バルト海の小国エストニアは、東の隣国ロシアが国内政治に干渉するのを特に警戒している。エストニアはロシアと国境を接し、全人口の約4分の1がロシア系少数民族だ。

 プリゴジン工作員は、同国での2019年欧州議会選挙を前に、極右のユーロ懐疑派政党EKREを支援しようと画策していたと、文書の1つに記されている。

 バルト防衛大学の研究者Viljar Veebelは、「EKREがリベラル政党に過激に対抗したので協力が始まり、彼らは非常に専門的に準備されたパッケージを喜んで受け取りました」と述べた。

 そのため、工作員は、当時の大統領Kersti Kaljulaidとリベラル改革党の当時のリーダーKaja Kallas(現首相)に対するキャンペーンとともに、「EUのためエストニアに問題が生まれている」といったクレムリンお気に入りの反西欧シナリオや反NATOメッセージを売り込む計画を立てていた。

 工作員が2019年の欧州議会選挙前にこの具体的な計画を実行したかどうかは不明で、メタの広報担当者によると、文書で示唆されたFacebookグループ名はソーシャルネットワーク上で作成されたものではなかったという。しかし、この戦略は、国内議会選挙を控えた2018年後半の作戦と、トーンやテーマが驚くほど似ていると、文書を検討した専門家は述べている。専門家はオープンソースのネットワークやソーシャルメディアサイトを調べ、ワグナーがFacebookやロシア語に相当するVKontakteにグループを立ち上げ、社会の不和をあおり、極右を推し進めようとしたことを発見した。

 エストニアのプロパガンダ研究者プロパストップによると、ハッシュタグ#ESTexitEUがソーシャルメディアで急増した。また、エストニアのニュースメディア「Postimees」は、淫らなミームやカルジュリドの風刺画もFacebookに登場し始めたと報じている。

 最終的に、この作戦の影響測定は難しいが、専門家は、この取り組みは小規模で、すぐに反証されたと述べている。FacebookとTwitterは、このネットワークに関連するアカウントを禁止した。

 EKRE党は、このキャンペーンについてコメントしていない。Metaの広報担当者は、Facebookが2018年末に「Estoners」グループを削除したと認め、この作戦がプリゴジンネットワークによって行われたのではないかと疑っている。

 エストニア内部保安局長ハリス・プウセップは、エストニアに対するワグナー戦略は、以前立案されたロシアのプロパガンダプロジェクトと似ていると述べた。

 本当の脅威は「1つのプロジェクトではなく、長期的な取り組みであり、それは特定のプロジェクトよりもはるかに危険だ」とプウセップは述べた。そして、「もしヨーロッパでポピュリズムが台頭してきたら、(ロシアのプロパガンダ担当者は)自分たちにとってチャンスだと理解すると思います」。

 ロシアの情報工作は「エストニアの国家安全保障に対する持続的な脅威」であり、クレムリンとその後ろ盾によるエストニアへの影響の試みは「定期的行事」と表現している。


Three Russian mercenaries walk in northern Mali.

マリ北部で歩く3人のロシア人傭兵。 | French Army via AP Photo


アフリカ問題

 過去5年間、ワグナーは政治的に不安定なアフリカで事業を拡大し、政府と契約を結び抵抗勢力の鎮圧や高の警備に当たってきた。リビア、スーダン、マダガスカル、中央アフリカ共和国など、同グループは、会議やイベントを開催する複合施設を建設し、軍事基地も設立して進出を図っている。

 欧米の政府関係者や専門家は、アフリカ活動を強化しようとするワーグナーの試みを追跡してきた。POLITICOが調査した文書でも、その拡大を強調している。プリゴジンのネットワークは、機密性の高い天然資源採掘場の保護など、ワグナーが政府向けに行っているセキュリティ業務以外にも、抗議活動に参加させたり、地元の報道機関に事前に承認された記事を書かせたりして、偽情報キャンペーンに参加しているようだ。

 文書によれば、プリゴジンネットワークは、仲間が運営する形で、あるいは金銭的支援と引き換えに好意的な報道を提供するメディアグループを作り出している。キャンペーンは通常、親ロシア、反西欧だ。

 「ロシアの偽情報キャンペーンの特徴は、非常に日和見主義的であることだ」と大西洋評議会のデジタル・フォレンジック研究所研究員で、過去にアフリカ諸国でのプリゴジンのプロパガンダキャンペーンを分析したジャン・ルルーは、「何らかの形で自分たちの利益になるようなことが起きれば、彼らはそれを行うだろう」と述べた。「まさに連中の脚本通りだ」と。

 ガーナでは、プリゴジンはアクラにあるロシアのトロールファームと関係があり、従業員は人種問題に焦点を当て、有権者を分断することで、米国の選挙に関連した偽情報キャンペーンに取り組んできた。CNNは2020年発表の調査で、トロールファームをプロファイリングした。「アフリカ解放のための障壁をなくす会」という組織が運営しており、セス・ワイアドゥという人物が監督していた。これまでの報道では、ワイアドゥが作戦のリーダーであるとされてきた。

 POLITICOが確認した文書の1つでは、ワイアドゥがプリゴジンのネットワークと金銭的に結びついているように見える。文書には、セスの妻ユリア・ワイアドゥからガーナへのマネーグラム送金が記載されており、文書を確認した専門家は次のように述べた。ユリアが送金したのは2020年3月20日で、夫がガーナでマネーロンダリング容疑で逮捕・喚問されたわずか3日後だった。

 ワイアドゥ夫妻と連絡は取れていない。

 マダガスカルでは、プリゴジンとつながる工作員グループが、ヘリー・ラジャオナリマンピアニナ大統領の再選運動を支援して2018年の選挙に干渉しようとしたと、ニューヨークタイムズが伝えており、2018年にマダガスカルで同グループと活動した選挙社会学者のペトル・コロヨフが裏付けている。結局、プリゴジンのネットワークはラジャオナリマンピアニナが勝つ見込みがないことに気づき、代わりに対立候補で現大統領のアンドリー・ラジョエリナを支援した。

 マダガスカルでの作戦は一見失敗に見えるが、POLITICOが調べた文書によると、同国での影響力作戦に参加した同じ人物の一部が、コンゴ、南アフリカ、スーダンなどので別の作戦に移っていたことがわかる。

 POLITICOが閲覧したメモには、プリゴジンネットワークが、ジャーナリスト含むスーダン活動家のために、ツイッターやフェイスブックなどの偽のソーシャルメディアアカウントを作成する計画について、詳細に記述されています。

 プリゴジンの宣伝活動で、大陸におけるワグナーの存在への西側の不安が増えている。

 公電や欧米当局者のインタビューによると、米国当局はアフリカの同盟国と、同グループの影響力の制限を積極的に話し合っている。

  ワグナーがアフリカ諸国との結びつきを強めていることは、欧州軍が撤退する中、ロシアにとって新たなパートナーシップを築く前例のない機会となっている。この空白は、モスクワがアフリカ大陸の外交関係を形成し、反西洋感情を押し上げる隙を残す可能性がある。

 3年4年前から、国防総省から「うまくいっていない」という報告が出始めてきた。特にサヘル地域で、しかしアフリカ大陸全体で、テロ組織の数が本当に増えたのです」と、シカゴ世界問題評議会のシニアフェローで、ソマリアで外交官を務めたエリザベス・シャケルフォードは言う。「今、突然ワグナーやロシアがそこにいるような感じです。その空白を深く、深く恐れている。そして、空白地帯にロシアが入り込むことを恐れています」。


Russian mercenaries from the Wagner Group stand in Bangui.

2019年5月1日、中央アフリカ共和国のバンギに立つワグナー・グループのロシア人傭兵たち。| Ashley Gilbertson/The New York Times/Redux Pictures


CARでワーグナーが得をする

 米公電によると、米当局者は中央アフリカ共和国(CAR)におけるワグナーの存在に特に懸念を抱いている。

 「彼らはアフリカの政府を西側から、そして広範な民主的な価値観から遠ざけようとしている」と、米政府高官は述べた。「アフリカの政府との西側の関係を弱体化させることが狙いです」。"

 ワグナーは2017年にCARで事業を立ち上げ、首都バンギに文化センターを作り、中央政府と協力関係を築いた。以来、準軍事集団は反政府勢力との戦いや政府高官の保護、重要な金鉱山の確保を支援してきた。また、欧米に対抗し、モスクワに有利な政治的支持を得るため、影響力行使を大規模に行ってきた。

 プリゴジンネットワークは、内部事業構造を詳述した文書や専門家によると、2018年から2021年にかけ影響力キャンペーンを各種実施した。同グループが集会や抗議活動を組織し、報道を指示することでメディアキャンペーンを行った方法を詳細に打ち出している。

 2つの文書(メモ)は、グループがどのようにブレインストーミングを行い、反フランス、反国連のコンテンツを作成することに焦点を当てた地元のメディアキャンペーンを組織したか詳述している。予算文書には、抗議集団を組織した人々、抗議者の交通手段、さらには抗議集会の出席者に対する支払いも記されている。

 専門家によれば、こうした努力は国内で長く記録されてきたという。

 「彼らにとっての賭けは高く、軍事作戦を実行する必要があるだけでなく、天然資源を開発する必要もあるのです。こうした理由から、プロパガンダや影響力戦略は、ワーグナーのやり口の一部になっている」と、国連の傭兵使用に関するワーキンググループの独立専門家、ジェレナ・アパラックは述べている。

 ワグナーのCARでの活動は、主に安全保障に重点を置いている。ワグナーはバンギ政府と提携し、政府軍を訓練し、高官や重要採掘場を保護している。

 CAR代表者は、コメント要請に応じなかった。

 2021年、同国におけるワグナーに詳しい専門家によると、ワグナーグループはブアールからウアダまで、同国内に少なくとも13拠点を有していた。文書によると、基地の規模や目的はさまざまで、現地部隊の訓練センターとして設立された基地もある。国連報告書は、少なくとも1つがCAR軍訓練に使用されたことを含め、文書にある基地に関する情報の一部を裏付けている。

 プリゴジンは、セワ・セキュリティ・サービスなど、複数企業を使いCARで治安維持活動を行っている。米国と欧州は1月に同社を制裁した。文書には、ワグナーと同社をさらに結びつけ、CARでセワ役員が着用しているバッジのスクリーンショットが含まれている。

 フランスが2021年に同国から軍撤退の意向を表明して以来、ワグナーのCAR政府とのつながりはさらに強くなった。フランスは2013年のクーデター後、CARに1,000人以上の部隊を配備し、同国の安定化を支援してきた。

 しかし、CARに駐留していた最後のフランス軍130人は、2022年12月に帰国した。POLITICOが入手した米政府公電によると、バンギ政府は現在、治安維持のためワグナー部隊に依存しており、ワシントンとCAR政府間の争点がますます大きくなっている。公電は、米国がCARにおけるワグナーの足跡と、同グループを国外に追放する試みでどの程度心配しているかを強調している。

 ヨーロッパ、アフリカ、ワシントンに拠点を置く米国の外交官は、過去数ヶ月間、バンバリの北約40マイルに位置するンダシマ金鉱山の保護を含むCARでのワグナーの役割について相手側と会議を行ったと、公電は伝えている。

 ワグナーは2020年、つまりCAR政府がカナダ企業のアクスミン鉱山ライセンスを取り消したのと同じ年に、同鉱山に姿を現した。同グループはこれまでにも、バンバリ地域に住む反政府勢力などを、同地域開発のために家から追い出すために即座に処刑したと非難されている。

 別の米公電では、ワグナーが過去9カ月間に鉱山の生産区域を拡大したと詳述している。これは、同グループが勢力を支えるために利用できる、利益をもたらす事業を模索しているとみる当局者にとって心配な兆候である。

 公電によると、ワグナーはマダガスカルに登記された会社、ミダス・リソーシズを隠れ蓑に鉱山を監督し、事業を運営している。

 POLITICOはMidas代表者に電話したが、プリゴジンとの提携についての質問には答えず、記者に連絡を取るのを止めるよう求めてきた。

 米国は、新たに撮影した衛星画像やその他の情報から、同グループが長期開発のため鉱山の整備を支援し、川に橋を架け、要所にトラック搭載対空砲を設置し、鉱山を要塞化していると評価している。米国情報では、同施設は表面の柔らかい鉱石とその下の岩盤の両方に沈着した金を分離する能力があるという。ワグナーによる現地生産が「異常なスピードで進んだ」と米国当局が表現している。

 現在、鉱山は8つの生産ゾーンにまたがっており、ある公電でじゃ、最大200フィート以上の深さを推定している。

 同鉱山は、最終的に10億ドル以上の報酬を生み出す可能性があると、米国当局は見ている。しかし専門家によると、それは長期的な目標で、グループが鉱物を輸送する方法を見つけ、それを販売する市場を見つけた場合にのみ可能となる可能性が高い。それでも、米国とアフリカの当局者は、ワグナーが鉱山を支配する限り、グループは国内に留まると確信している。

 CAR政府は現在、国連オペレーターが採掘現場上空の飛行許可を与えておらず、ワグナーはドローン数機を撃墜している。

 「おそらく中央アフリカ共和国で最も機密性の高い場所でのUAV上空飛行許可の拒否は、実際にWGが中央アフリカ共和国で主導権を握り、同国で急速に拡大する有利な収益活動を守るため積極的に行動する最新の指標にすぎないことを我々は懸念している」と公電は述べている。

 ワグナーの中央アフリカでの存在に対するワシントンの懸念の高まりは、ここ数カ月、世界中の会議で、同グループを同国から追い出そうという米戦略の回覧を当局者に促したと、公電は述べている。

 「ワグナーは癌だ。一カ国にとどまらない」と、米政府高官は語った。「隣接する国々に広がり、突然、心配するほど大きな問題になる」。

 公電にこの戦略の詳細は書かれていないが、米当局者がアフリカの指導者たちを巻き込んで、戦略に乗るように働きかけていることがわかる。特に、CARでのトップリーダーの一人が暗殺未遂で攻撃されたとワグナーが公言したことで、対話はここ数カ月で増えているようだ。

 プリゴジンは、ドミトリー・シチーが手にした小包が爆発したと主張し、それを 「テロ攻撃」と呼んだ。公開声明の中で、小包にはフランス人の仕業を示すメモが添えられていたと主張している。

 シチーに連絡はとれなかった。だが、POLITICOが確認した2018年文書では、シチーがCARの「翻訳者」として記載されている。

 しかし、事件後の数日間、米当局者は、攻撃が発生したのか、それともプリゴジンネットワークが政治的な理由で偽情報を流したのかを判断しようと奔走した。米国当局は、ワグナーがフランスが攻撃したかのように見せかけようとしたのかどうか、すぐに判断できなかった。フランス政府関係者は、いかなる関与も否定している。

 POLITICOが入手した文書2点によると、米国当局は12月と1月にMINUSCAとして知られるCARの国連平和維持ミッション代表と会い、同国でのワグナー活動や国連平和維持軍がグループの動きをどの程度追跡できるのかについて議論した。

 MINUSCA代表は、フランスが同国からの部隊撤退を決めたことで、国連平和維持軍の現場での問題が複雑になっただけだと米政府高官に伝えた。

 トゥアデラ大統領がワグナーと提携を解消し、他の国々が安全保障を提供するようになったとしても、MINUSCA代表は疑問を呈した。ポルトガルは即応部隊を駐留させているが、MINUSCAはフランスが残した治安の空白を埋める能力を持つ唯一の存在であると、国連代表は米当局に語った。

 MINUSCAはコメントの要請に応じていない。

 ワグナーが国際社会にもたらすリスクは認識しているものの、同国の欧州と国連当局者は、同グループがCAR政府の安全保障問題に対する合法的かつ長期的な解決策だとは確信していない。

 ワグナーのCARでの活動は、米国政府関係者にワグナーとの関係を断ち切ることを検討するようバンギ政府に懇願させるきっかけとなった。トゥアデラ大統領へのメッセージは伝統的な欧米のパートナーこそ、依然として最も効果的で信頼できる存在だというものだ。


Faustin-Archange Touadera gives a speech in a campaign rally.

2020年12月12日、中央アフリカ共和国のバンギで行われた選挙集会で演説するファウスティン=アランチェ・トゥアデラ大統領 | André Bâ/Xinhua, via AP



 米国は、アフリカとヨーロッパのパートナーに戦略とロードマップを提示するまでに至り、CAR政府にワグナーを孤立させるよう説得する計画だ。

 「これはクレムリンのツールでロシアの影響力を高めるために使われている。そして、それは不安定なときにやりやすい」と、米国当局者の一人は言った。「ロシアとワグナーの利益のため、我々の利益に反して、ロシアが入り込み、安全保障関係を維持し、政治的支援を維持できるように、あるレベルの混乱をそ維持している」と、あるアメリカ当局者は言った。

 先月、キガリでの会議で、米国当局者は、ルワンダ高官とこの計画について議論した。ルワンダ高官は、CAR大統領にワグナーに逆らうように説得しようとするのは、同国だけではありえないと述べ、ワシントンがバンギへの軍隊派遣を検討するのかどうかと尋ねた。公電によれば、米政府高官は、ワシントンにそのような動きの「意欲がない」と述べたとある。

 CARでのワグナーの足跡に関する同様の会話は、1月にリスボンで米国とポルトガル当局者の間で行われた。ポルトガル政府関係者は、バンギ政府がワグナーのロードマップと戦略に協力する意思を示せば、4月にCARでの欧州訓練任務から離れるという同国決定を再考する可能性があると述べた。リスボンの当局者はまた、その他欧州諸国の支援なしにポルトガル軍をCARに駐留させ続けることに懸念を示した。公電によると、フランスの撤退で、残る部隊は無防備となった。

 ポルトガル政府はコメント要請に応じていない。

 POLITICOが入手した公電によると、ワグナーをCARから追い出すというワシントンの動きは、バンギで受け入れられなかったという。

 1月の米政府高官との会談で、CARのフェリックス・モルア首相は、CAR政府はワグナーを孤立させ、切り離すべきだという米国のメッセージに反発した。

 POLITICOが入手した公電によると、モスクワから帰国したばかりのモルア首相は、「すべてのパートナーと協力したい」「CARはパートナーと協力できる、できないの指示を受けつけない」と米当局者に話したという。公電によると、首相は「必要な援助」を受け入れたCARをなぜ非難するのかと米当局者に質問し、「少なくともワグナーは何かしてくれている」と付け加えたという。■


Inside the stunning growth of Russia’s Wagner Group - POLITICO

By ERIN BANCO, SARAH ANNE AARUP and ANASTASIIA CARRIER

02/18/2023 07:00 AM EST


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