スキップしてメイン コンテンツに移動

AH-1ZにAMRAAMミサイルを搭載し空対空能力まで実現しようという米海兵隊は同型機を統合作戦に投入し、今後数十年供用を続ける考え。投資効率は高いが効果は?

 



第3海兵航空団(MAW)海上航空機群(MAG)39の海上軽攻撃ヘリコプター隊369所属のAH-1Zバイパーが、2022年12月7日、太平洋上で行われたスチールナイト23演習で、移動海上目標にAGM-179統合空対地ミサイルを発射した。MAG-39は、沿岸作戦を可能にするために、海上阻止作戦を実施する。 (U.S. Marine Corps photo by Sgt. Samuel Fletcher).



米海兵隊は、H-1ヘリコプターを将来の戦いに対応させようと、野心的なアップグレードプログラムに着手している



兵隊とベルは、UH-1Yヴェノム Venom と AH-1Zヴァイパー Viper ヘリコプターの電気システムのアップグレードプログラムに着手し、搭載電力を高め、将来の武器運用と能力の拡大を可能にする野心的な取り組みを行っている。

 海兵隊は最近、AH-1Zバイパー攻撃ヘリコプターの最終引き渡しを完了し、UH-1Yでは2018年以降新造機を購入していないが、今後数十年間飛行させる予定だ。海兵隊航空機群39の指揮官で、11月にテキサス州アマリロのベル社工場からカリフォーニア州キャンプ・ペンドルトンに最後の「ズールー」を飛ばしたパイロット、ネイサン・マーベル大佐は、息子が海兵隊に入隊してもH-1を飛ばす可能性が高いと語っている。


アメリカ海兵隊 UH-1Y ヴェノムとAH-1Z ヴァイパー。U.S. Marine Corps photo by Cpl. Austin Gillam


「息子は今6歳ですが、海兵隊でのキャリアを選択した場合、私が約1ヶ月前にアマリロから移動したのと同じヘリに乗ることになっても全く驚きません」と、マーベルはThe War Zoneのインタビューに答えている。「このマシンには20年の寿命があると思うし、とても素晴らしい機体だ」。

 今後20年間、両ヘリコプターを適切な状態に保つため、海兵隊は『ヤンキー』と『ズールー』にさらに多くの技術と武器を統合すると、マーベルは語った。アップグレードの3本柱は、順不同で生存性、殺傷力、相互運用性の強化だ。

 生存性の強化には、飛来するミサイルを防ぐ分散型開口赤外線対策システムとAN/APR-39デジタルレーダー警報受信機の搭載が計画されている、とマーベルは解説してくれた。


12月に太平洋で行われたスチールナイト23の演習で、USSジャクソン(LCS6)の上空をホバリングするAH-1Zバイパー。 U.S. Marine Corps photo by Sgt. Samuel Fletcher


 「直面している戦いや、これまでの戦いでは、生存能力がなければ、相互運用性や殺傷能力を発揮することはできません」とマーベルは述べる。

 AH-1Zはすでに多くの武器を持っており、各種弾薬を搭載できるが、さらに、米国で最先端の空対空ミサイルを搭載することも計画されている。

 AH-1Zは非常に柔軟性の高いAGM-179 Joint Air-to-Ground Missile(JAGM)によるレーダー誘導とレーザー誘導のモードを実証している。H-1は、GAU-17ミニガン、50口径、20mm機関銃など機関銃で、水上艦との交戦や敵の無人航空機(UAS)に対する攻撃的・防御的対空任務の能力も実証している。


ジョイント空対地ミサイル(JAGM)を発射するAH-1Zバイパー。U.S. Marine Corps photo by Sgt. Samuel Fletcher



 海兵隊はAH-1ZにAIM-9サイドワインダーミサイルも搭載している。現在AIM-9Mを大幅にアップグレードした、より高度なAIM-9Xが次に控えているとマーべル大佐は言う。AIM-9Xでは、推力偏向コントロール、ヘルメット型ディスプレイに対応した改良型イメージング赤外線シーカー、遠く離れた標的を見るだけでロックオンできる機能などが導入される。AIM-9X Block IIとして知られるデータリンク機能を備えた最新版は、軍の統合戦場ネットワークシステムを通じ、航空機、水上艦船、海兵隊の標的データを活用できる。また、中国との戦争で海軍と海兵隊が必ず遭遇するはずの巡航ミサイルとの交戦能力も強化されている。

 「前方配備中のAH-1には、ネット対応AIM-9X対巡航ミサイル兵器が8発搭載されます」(マーベル)。


2023年1月、スリランカ海軍艦艇ガジャバフの横を飛行する海兵隊のUH-1YベノムとAH-1Zバイパーヘリコプター。U.S. Marine Corps photo by Sgt. Kevin G. Rivas



アップグレードは、H-1で搭載する電力システムの大幅なアップグレードなしでは実現しない。ベルと海兵隊は、SIEPU(Structural Improvement and Electrical Power Upgrade)プログラムで、ヘリコプターの搭載電力を約200%増加させると計画している。ベルのH-1プログラム担当副社長マイケル・デスラットによると、性能向上以外に、頭文字の発音が「シープー」になるのも海兵隊にありがたいことなのだそうだ。

 SIEPUには、H-1の両機種に共通するドライブトレインとダイナミックコンポーネントの強化、ローターブレーキの改良が含まれる。2022年の海兵隊航空計画に記載があるその他技術は以下の通り。

  • イントレピッドタイガーII

  • AH-1Z ジョイント・エア・トゥ・グラウンド・ミサイル

  • (JAGM)

  • AIM-9X

  • 組み込み型GPS/慣性航法システム(EGI)のアップグレード

  • システム(EGI)アップグレード

  • BRITEスターレーザースポットトラッカー(UH)

  • ターゲットサイトシステム レーザースポットトラッカー (AH)

  • 配備型ミッションリハーサルトレーナー

  • MCAS普天間シミュレータ

  • ヘルメットの改良

  • PRU-70/AEベストの交換

  • ワイヤレスインターカムシステム

 

 デスラットは、The War Zoneも参加したテキサス州フォートワースのベル本社でのメディアツアーで、「新しいシステムには十分な電力が必要です」と述べた。「SIEPUアップグレードには、AIM-9X統合を可能にする経路があります」。SEIPUはH-1の将来の能力の基礎となるもので、AIM-9Xは将来の能力の1つであるという。



AIM-9X サイドワインダーミサイル。 Raytheon Photo



 SIEPUは、ベルがV-22のナセル改善プログラムとして行ってきたものと類似している。オスプレイはアマリロに戻され、ナセル(主翼端にある傾斜部分でエンジンが搭載されている)を分解し、信頼性が高くメンテナンスが容易な新しい部品に交換される。

 SIEPUプログラムを開始するため、AH-1ZとUH-1Y各1機が2023年にベルのアマリロ組立センターに運ばれ、アップグレードが行われると述べています。

 マーベルは、SIEPUは、AH-1コブラとUH-1ヒューイの進化した子孫という意味で、「巨大なエンジニアリングのアップグレード」であると述べている。その他アップグレードとしては、配備された武器、データリンク、搭載されたセンサー、新しいイーサネットバックボーンなどから航空機に供給される情報を処理できる、より強力なデータプロセッサの導入が含まれるとマーベルは言う。

「H-1には、オンボードとオフボード機能がありペイロードにとらわれず、対応できる。「AIM-120をZに搭載することも不可能ではないし、従来H-1に搭載されていなかった妨害ポッドを搭載することだって可能です。H-1の電磁波能力を高めるために、電子攻撃や電子支援のもと電子防御を行えるようになっています」。

AIM-120ミサイル。 Raytheon Photo



 AIM-120高度中距離空対空ミサイル(AMRAAM)は、通常戦闘機が搭載するが、回転翼機に搭載すれば前例のない空対空能力となる。AIM-120は、目視範囲外を想定したミサイルで、「撃ってから忘れる」ことができ、近距離の目標に照準を合わせることもできる。

 海兵隊は、太平洋における中国との対決を想定し、広大な太平洋の基地や艦船などにコブラやヒューイを前方展開することを想定していると、マーベルは言う。新機能により、H-1は海上航空支援、攻撃航空支援、偵察、対偵察、偵察対策、攻撃など、海兵隊空地任務部隊でより多くの任務を担うことになると、マーベルは見ている。

 最新のAIM-120のような兵器はネットに対応している。つまり、ヘリコプターが発射し、F-35統合戦闘機、船舶、地上レーダーシステムなど第三者の情報源から標的情報を受信できる。H-1プラットフォームにリンク16を追加すれば、各装備と照準データやその他の情報をほぼリアルタイムで交換できる。

 ヤンキーとズールーの共通性は85%で、巡航ミサイルへの対抗能力が特に役立つ、条件が厳しい前線基地への配備に最適な候補だ。また、飛行時間あたりのコストが最も低く、海兵隊航空部隊の中で最も高い即応性を持つ機体でもある。

 「海兵隊が1年間に発射する弾薬の大半を発射し、海兵隊が1年間に飛行する時間の大半を飛行している」とマーベルは述べた。「海兵隊の年間飛行時間の大半を占めています。もし、共食いする必要があれば、できる。コブラからエンジンを取り出してヒューイに搭載し、翌日にヒューイとして完成する。コブラからテールローターブレードを取り外し、ヒューイに搭載することもできます。ヒューイのドライブシャフトをコブラに取り付けることもできるんです」。

 海兵隊が保有するH-1ヘリコプターは284機に減少しているが、アップグレードしながら何十年も運用することは賢明な投資といえるだろう。海兵隊は姉妹軍より少ない資金でより多くのことを行わなければならないので、なおさらだ。■


An AIM-120 On A AH-1 Cobra? Not Impossible, Say Marines

BYDAN PARSONS|PUBLISHED FEB 17, 2023 5:23 PM

THE WAR ZONE

https://www.thedrive.com/the-war-zone/an-aim-120-on-a-ah-1-cobra-not-impossible-say-marines


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...