著者はロシアが大規模な攻勢をウクライナでかける準備をしていることを書いたばかりだ。北と南からウクライナ軍を挟み撃ちにする動きだ。ロシアが数カ月のうちにそのような動きを見せるという議論が一般的だが、その構成はさまざまで、著者とは異なる。しかし、ウクライナがそのような攻撃に勝てるかどうかが重要だ。この1年、ウクライナは予想以上に、そしてロシアは予想以上に悪い結果になった。しかし、大国には早期の躓きという贅沢があり、その大きさゆえに初期の敗北から回復できる必要なリソースがある。弱小国の成功は、つるべ落としとなることがある。ロシアは理論上、体力でウクライナを巻き込むことも可能だが、それは最後の手段だ。戦争とはそういうものなのだ。
ベラルーシが参戦を考えているようで、その有用性は限られるが、ウクライナのパワーバランスはモスクワにとって有益になろう。モルドバではロシアの航空機(と諜報員)が活動中で、隣国ルーマニアも警戒している。不安は大きい。フランスはじめとするヨーロッパ諸国は自国民にベラルーシからの退去を命じ、アメリカは自国民にロシアから退去を警告している。
ウクライナが効果的に抵抗できなくなり、ベラルーシとモルドバに代表される側面がポーランドとルーマニアに道を開くと、米国はどうするだろうか。ヨーロッパは、良くも悪くもワシントンのリードに従うだろう。最悪のシナリオは、もちろん、冷戦時代に回避されてきた直接の戦争だろう。ロシアにはNATOとその恩人である米国を交戦させ、打ち負かす力がなかったからだ。ロシアは、失敗のリスクと、可能性は低いとはいえ、よりリスクの高い核の応酬の可能性を考え、攻撃の準備はできていなかった。
それでも、米国は介入のリスクを考慮しなければならない。ロシアがウクライナを占領すれば、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニアと事実上国境を接することになる。元KGBのプーチン大統領は、ソ連崩壊を地政学的な大惨事と考えていることは周知の事実であり、中欧におけるロシアの力の崩壊も同様に嘆かわしいと見ているはずだ。ウクライナに勝って冷戦時代の国境に戻せば、ロシアの地政学的地位の回復に大きく貢献する。そして、ロシアがいつ西方へ進出するかという問題を提起することになる。ヨーロッパは、国境に敵対する強大な敵と、その国境を保証する予測不可能なアメリカと暮らすという、思いもよらない立場に置かれることになる。
ロシアがヨーロッパを占領すれば、アメリカが2度の世界大戦を戦った大西洋の支配が脅かされる。そのような状況下では、ロシアはアメリカの直接介入をより容易に正当化することができる。何しろ、ウクライナでより簡単に作戦を練ることができ、近くて必要な同盟国のネットワークがあるのだから。
ウクライナ防衛体制が崩壊した場合、米国は迅速な決定を下す必要がある(あるいは、すでに下した決定を迅速に実行する)。ウクライナに軍を派遣してロシアを撤退させることもできるし、戦闘を拒否することもできる。限られた戦力でロシア軍と直接交戦することは、長く、痛みを伴い、不確実な交戦となる可能性がある。しかし、その結果を受け入れれば、ロシアによるヨーロッパ再編成に扉を開くことになる。第二次冷戦は必要だが、望ましくない結果だろう。したがって、ウクライナが崩壊しないように強化することが、リスクとコストの低い選択肢となる。
ウクライナが崩壊すれば、米国はロシアとの交戦を余儀なくされる。ウクライナで直接戦うことは選択肢の一つであり、そうすれば政治的な痛みを伴う。まだ顕在化していない脅威を避けるため、たとえ不可避であっても、大統領が報われることはほぼない。
もちろん、著者はウクライナ崩壊が間近に迫っていると予想しているわけではない。ウクライナの崩壊を予測しているわけではなく、崩壊した場合のあらゆる選択肢を考えているだけでだ。慎重さが、そして来るべきロシアの攻勢が、それを要求している。■
What Happens If Ukraine Falls?
Thoughts in and around geopolitics.
By George Friedman -February 17, 2023
https://geopoliticalfutures.com/what-happens-if-ukraine-falls/?tpa=NmY5N2ZiNGMyZTBhZTU3Yzk1NTQ1MzE2Nzc3NzE1MzBlZGY3YmI
https://geopoliticalfutures.com/author/gfriedman/
George Friedman is an internationally recognized geopolitical forecaster and strategist on international affairs and the founder and chairman of Geopolitical Futures.
Dr. Friedman is also a New York Times bestselling author. His most recent book, THE STORM BEFORE THE CALM: America’s Discord, the Coming Crisis of the 2020s, and the Triumph Beyond, published February 25, 2020 describes how “the United States periodically reaches a point of crisis in which it appears to be at war with itself, yet after an extended period it reinvents itself, in a form both faithful to its founding and radically different from what it had been.” The decade 2020-2030 is such a period which will bring dramatic upheaval and reshaping of American government, foreign policy, economics, and culture.
His most popular book, The Next 100 Years, is kept alive by the prescience of its predictions. Other best-selling books include Flashpoints: The Emerging Crisis in Europe, The Next Decade, America’s Secret War, The Future of War and The Intelligence Edge. His books have been translated into more than 20 languages.
Dr. Friedman has briefed numerous military and government organizations in the United States and overseas and appears regularly as an expert on international affairs, foreign policy and intelligence in major media. For almost 20 years before resigning in May 2015, Dr. Friedman was CEO and then chairman of Stratfor, a company he founded in 1996. Friedman received his bachelor’s degree from the City College of the City University of New York and holds a doctorate in government from Cornell University.
もし、ウクライナが敗戦すれば、ロシアは、次に東・中欧を影響下に置こうとするだろう。もちろん、侵攻もあり得る。
返信削除ウクライナの敗勢が、次のより大規模な欧州戦争の引き金となり、不可避になるのなら、米国は、ロシア正面からの非核対露戦争を開始し、ロシアを崩壊させるべきとの戦略が成り立つだろう。ロシア軍はウクライナ方面に集中し過ぎであり、米国とNATOのロシア懲罰戦争に耐えられないと推定する。
ただし、その機会はNATO各国の軍事力がそれだけのレベルに達している場合のみであり、増強過程にあるとはいえ、今のNATOの欧州各国にその力は無い。このように考えると、ドイツ軍などの冷戦後の軍事力の弱体化は、今日の事態を引き起こしたロシア軍の侵略を招く大きな理由であり、その原因となったメルケルの独善的軍縮政策の弊害は当分続くと思われる。
しかし、ウクライナ敗戦のみならず、米国とNATO有志国がロシアの侵略と虐殺に対する懲罰を名目にして、あるいは愚かにもロシアがNATO諸国に手を出して、開戦する可能性はある。そしてその可能性は、高まりつつあるように思える。
このような予測であれ、記事のような予測であれ、恐らく第3次世界大戦の入り口に世界は立っている。
NATO対露戦争の開始は、同時に、CCP中国による台湾侵略戦争の引き金になる。
しかし、台湾と米国は、台湾海峡と台湾周辺を逆封鎖すれば、台湾侵攻軍のみならず、PLA全体が迂闊に動けなくなることを知っており、これによる時間稼ぎができれば、米軍とNATOは、対ロシア戦争後に東アジアに加勢することができるだろう。
もちろん、この戦争に日本も参加することになるだろうが、台湾封鎖網を維持するだけでも十分と考えられる。要は、必ずしも戦闘に勝つ必要はなく、負けなければ良いと言うことである。